英雄の流派
―――その暴れようは、まさしく機械のようだった。
無慈悲に、しつこく、徹底的に、目の前に存在する全てを破壊する事しか出来ないその力を前に、乗っ取られた篝は、ただ振り回されることしか出来なかった。けれど、その暴走の最中で暗い意識の中で微かに聞こえたのは。
一人の少女の、泣き声だった。
黒い拳が襲い掛かる。
篝はそれを後ろに飛んで躱す。続けて、その振り下ろされた腕の影からラーズが何かを投げる。
「うお!?」
投げてきたのは鋭利な小型の投げナイフ。しかも両目を狙って二本きっちり投げてくる。
「どこで見てきたそんなもん!?」
辛うじて躱した篝だが、今度は土木用ハンマーが出現。篝の側頭部を狙って振り抜かれる。それはその場にかがんで躱したが、続けて地面から杭が鳩尾めがけて飛んでくる。
「ぐっ!?」
直撃する直前に掴んで防ぐが、ラーズからの猛攻は止まらない。
(デストロイモードはとにかく目に付くもの全てを破壊する為の形態、だから出てくる攻撃は全て急所狙い・・・だが!)
杭を防いで宙を浮く篝に、ゴライアスの鉄拳が迫る。
(破壊する為なら―――力押しでも構わないんだよな!)
迫る剛腕を下から蹴り、自ら下へ落として躱す。
ただ一度、その経験を味わったから辛うじて躱す事が出来るが、デストロイモード状態のラーズとゴライアスはとにかく圧がある。無機質な殺意なのか、それともシステムに組み込まれた衝動なのかは知らないが、とにかく『止まらない』という絶対がそこにある。
止めるには、とにかくゴライアスか篝自身を再起不能にしなければ止まらない。
だが、今回に限って言えば、リブラによる洗脳で止まるかどうかも怪しい。即ち、篝は絶対に躱し続けなければならない。
「ラーズ!おい、ラーズ、聞こえるか!?」
篝の呼びかけに答えない。とにかくラーズは篝を破壊するべく襲い掛かってくる。
それだけに留まらず、他に操られているクローラルの面々が、ラーズに続いて襲い掛かってくる。
「大人しく、してて!」
だが、それはステラのコードスキルによって阻止される。
真上から叩きつけるダウンバースト。凄まじい風力によって抑えつける風の拘束具によって、ラーズとゲニウス以外のクローラルの面々がその動きを抑え込まれる。
「篝くん、早くラーズちゃんを・・・」
「先輩後ろォ!」
篝が突然、ステラに向かってそう叫んだ。その言葉に、ステラは背後にいる気配にぞっとする。
「不敬」
横から振り抜かれた斬撃に、間一髪で腕を挟み込むことが出来たステラは、そのまま吹っ飛ぶ。
「刑の執行の最中である。邪魔建ては死罪ぞ」
ステラが吹っ飛ばされたことで、拘束が解ける。だが今度はゲニウスが再びその拳を射出する。だが、
「不敬、人形風情が、我に抗おうなど―――」
再び、斬撃。ゲニウスの身体が、斬り裂かれる。
「ユウゴォ!」
篝の叫びも虚しく響く中、装甲を砕かれ、中のフレームすら斬り裂かれたゲニウスが、ドームの壁に叩きつけられ沈む。
(まずいまずいまずい・・・!)
リブラが再び高見の見物を決め込む。
篝はラーズや操られた仲間たちの相手で手一杯。襲い掛かる仲間たちの猛攻を、篝は戦乙女流決闘術の技術を以て捌く。
だが、それも長くは続かない。
(完全に手詰まり!他の奴らはともかくラーズがこの状態だと複製の能力が一切使えねえってかデストロイモードの影響で頭が回らなくなるっ!このままデストロイモードが続けば、俺も飲み込まれる。そうなったらステラたちを殺してしまうかもしれないっ、そうなる前に、何か―――)
仲間たちの猛攻が、篝に襲い掛かる。それを凌ぐので手一杯で、打開策が浮かばない。
そうしている間に、篝の意識がどんどん遠のいていく。それでも篝は頭を回す。
(せめて、相手がラーズだけなら―――)
その時、一瞬、篝の意識に空白が出来る。それはデストロイモードによる精神汚染の影響だった。
(あ、やべ―――)
その時、セラの足払いが入った。篝の身体が仰向けに倒れる。そこへ、ゴライアスの剛腕が振り下ろされた。
凄まじい激震と共に、その鉄拳が地面に叩きつけられた。
拳は、篝の頭を粉砕する事無く、そのすぐ横に叩きつけられていた。
「・・・ラーズ」
「・・・・っ・・・・ぅっ・・・」
ラーズの表情に変化はない。だが、その赤く染まってしまった双眸から、ぽろぽろと涙が零れ落ちていた。
「・・・・ぁ・・・が・・・・り・・・・さ・・・・」
「・・・・・」
そんなラーズの頬に、篝はそっと手を添えた。
「大丈夫、大丈夫だ」
そう囁いて、篝は微笑む。
「お前がいる」
そう言って、篝はラーズの頭の後ろに手を回して、そっと自分の胸元へ抱き寄せた。
すると、ラーズの身体が光となって篝の中へと沈み、入っていく。
「・・・何?」
その様子に、リブラは怪訝そうな表情を浮かべる。その間に、ラーズの身体が篝の中へと完全に入り込むと、ゴライアスの身体が元の色へと戻っていく。
『命令受諾 形態変更 実行』
篝の姿も元に戻ると同時に、篝は起き上がった。
『・・・ごめんなさい』
篝の脳裏で、ラーズの声が小さく響く。
「気にすんな」
篝はそうラーズを慰める。
「不愉快。我が刑を途中で放棄するなど―――」
そこへ高見の見物を決め込んでいたリブラが、不機嫌そうに篝を見下ろしていた。だが、その言葉が唐突に途切れる。
篝が、リブラを見たからだ。ただ、それだけのこと。それだけでリブラは篝に気圧された。
「っ・・・!?」
立ち上がる篝。そんな篝にクローラルなんでも事務所の面々が襲い掛かる。
対して篝が取った手は、クルエ一人への対処。
「いつまで寝ぼけてんだ」
クルエが迎撃に鎖を打ち放つ。だが、その鎖が篝の身体を貫通したかと思えば、その姿が霞のように掻き消える。
戦乙女流決闘術『水月』
緩急をつけた動きによってまるで姿が掻き消えたかのように見せる歩法。それによってクルエの視界の死角に潜り込んだ篝は、クルエのその頭を打ち据える。
それを喰らったクルエは、一瞬、その体を仰け反らせると、ぎろりとその眼差しに光が戻り、一瞬にして自分も含めた事務所のメンバーを拘束する。
「何秒持つ」
「一分持たせるっ・・・!」
「上等」
篝はクルエとそう話し、リブラの方を睨みつける。
「不敬―――」
リブラが天秤を揺らす。
(ここまで見て、奴の洗脳を回避する方法はほぼゼロ。だが、気合いを入れれば抵抗可能という事は分かった。即ち精神力、それである程度対抗可能。そして、その耐性は―――)
しかし、クルエは拘束を離さない。
「むっ」
「回数を重ねるごとに強くなる」
篝が地面を蹴る。しかしリブラは上空、高見の見物のままだ。それでも篝は走る足を止めることなく駆ける。
(次に攻撃の確立操作だが、これはシンプル)
篝の頬を、風が撫でた。
「―――がっ!?」
その次に、リブラが突如として地面に落ちる。まるで何かに叩き落とされたかのように。
ステラのコードスキルだ。
「やっぱり、認識できなきゃ逸らせないみたいだねぇ」
ステラが、そうほくそ笑む。
この判断が出来た理由はユウゴによるゲニウスの攻撃。
篝を阻もうとした土壁、自動操縦時のゲニウスの初撃。これら全ては、リブラの意識外からの攻撃だった。
つまり、認識していない状態での不意打ちに対して、リブラは攻撃の直撃確率を操作できない。
そうして、地面に落とされたリブラは、着地した地面にて、身体に土がついたことに激怒した。
「人風情が―――」
だが、何か行動を起こす前に、篝の拳がリブラの顔面を打ち据えた。
戦乙女流決闘術『蒼火撃』
「ぐぼっ・・・!?」
「よくも―――」
その一撃を以て、篝は逆襲を始める。
「―――俺の妹分を泣かせてくれたなァ!!!」
叩き込まれるは、十の技を繋げた十連撃。
戦乙女流決闘術『クロスコンビネーション』
全ての攻撃がリブラへと叩き込まれた。
「がはっ・・・!?」
そのまま、篝は追撃しようと迫る。だが、それよりも早く、リブラの右腕が振り抜かれる。
それを認識した時、篝は同時に回避行動に出た。そして、
「外せ!」
『ズベン・エス・カマリ』
何ものをも断つ斬撃が、地面を走って篝へと迫る。篝はすぐ横の地面から突き出すように飛び出したバリケードを使って横に飛んだ。斬撃は何にも当たる事なく、ドームを斬り裂いた。
「不敬なっ・・・」
「さっきからそればっかだな!」
ほぼノータイムで回避から再び接近した篝は、そのまま拳を構える。同時に、リブラも迎撃に入るが、突如としてその布の奥でほくそ笑んだ気がした。
それもその筈、篝の背後には、何故かノリアが戦槌を振りかぶっていたからだ。
「不届き者が、我に逆らうな」
ノリアの戦槌が、篝に向かって振り抜かれる。
「『限界強振』」
その直前に、篝はリブラに触れていた。
「ん?」
「―――『人体貫通・全通激震』」
突如として襲い掛かった全身を揺さぶる衝撃に、リブラは瞠目する。
「なに・・・が・・・!?」
「ノリアのコードスキルは、人体も通るんだよ」
想定外の事態に、リブラは混乱する。しかもノリアの衝撃波は喰らうとしばらく体内に残る。それはブラックリンカーであっても同じ。
(最も俺もただじゃ済まねえが、標的よりマシだ)
篝がそう意地悪く笑う中、リブラの混乱は収まらないままだった。
何故、洗脳されている筈のノリアが、自分に対してこのような事をしたのか分からなかったからだ。
だが、その眼差しをみれば分かる。ノリアは洗脳に対抗している。
一体、どうやって逃れているのか。リブラはそれを理解する為に思考する。
だから頭上からのセラの一撃に対応できなかった。
リブラの身体が地面に叩きつけられる。
「ウガァァアアアアア!!!」
セラが倒れたリブラに対して猛攻を叩きつける。その度にリブラの身体が砕け、光の粒子が飛び散る。
(完全暴走状態で一番ムカつく相手だけ狙ってるなこりゃあ・・・)
意識がトんでいれば洗脳はそもそも意味がないのだろう。
「篝君・・・」
「おう」
背後から、ノリアが戦槌を振り下ろす。それを篝は後ろを見ずにあっさりと受け止める。
「ごめんなさい・・・これ以上は・・・」
「十分だ。あと任せろ」
「うん・・・信じてる」
篝がノリアの戦槌を下ろすと同時に、セラが突然、その場から転げ落ちる。
「グル!?」
「不敬、不敬、不敬!」
起き上がったリブラが、怒りを振りまきながら立ち上がる。その両手の天秤には既にエーテルが込められていた。
あの斬撃だ。
「人の分際で、神の意思に逆らう事など―――」
「・・・・そう来るかっ」
右の天秤で斬撃を放ち、左の天秤で確率を操作。
(さっきから見ていたが、こいつの能力は左右別々にあるんじゃなく、左右どっちでも発動できるタイプ。そして能力は同時行使可能!)
即ち、確率操作で自らの攻撃を必中にすることが出来る。
これが放たれれば、おそらく篝以外の誰かが直撃を喰らう。
ノリアとクルエは動けていない、ステラも間に合いそうにない。セラは洗脳に抗うかのように地面に頭を打ち付けている。篝も間に合わない。
「―――万死に」
身構える篝。リブラは止まることなく、その手の天秤を振り抜く。
「値す―――」
ドゴォン!!!
「がっ!?」
振り抜かれた天秤。しかし、横から飛んできたワイヤーに繋がれたナックルが、リブラの天秤に直撃した。
それによって、リブラの放った斬撃は、篝たちのいる場所から大きく横へと逸れた。
『へへ、外しちまったぜ・・・』
それを放ったのは、ボロボロのゲニウス。そして斬り裂かれた装甲から顔を覗かせるユウゴだった。
「ナイスだユウゴ」
篝が駆け出す。
「莫迦な・・・!」
狼狽えるリブラに、篝は容赦なく拳を繰り出す。
戦乙女流決闘術『打上花火』
リブラの視界から掻き消えるように下から潜り込み、大きく振りかぶった拳を地面すれすれに振り抜いて鳩尾を穿つ戦乙女流のアッパーカット。
「ごお!?」
続けて、左拳を握り、その首を打ち据える。
戦乙女流決闘術『巨火一進』
身体の捻りによる勢いを加えたうえで、煙の中からいきなり拳が飛び出してくるかのような速度域を以て打ち据える。その技によってリブラの身体が後退する。だが、離れていくリブラの右腕を突き出した左手で掴み、そのまま引き寄せ、更に鳩尾に右肘を叩き込む。
戦乙女流決闘術『鉄火・砕』
叩き込まれる三連撃。
「不敬、だ・・・!」
そこでリブラが反撃する。まるで弾丸のような勢いで繰り出された拳のラッシュが篝へと叩き込まれる。
だが、全て篝によって受け流され、躱されてしまう。
戦乙女流決闘術『時化抜ケ』
「何故、何故、なぜ!?」
リブラは、何故自分の攻撃が当たらないのか理解出来ていなかった。今の今まで圧倒出来ていた筈の相手に、何故か自分の攻撃の全てが避けられ躱されてしまっている。
その事実を認められず、リブラは更に攻撃の密度を高めて攻撃を繰り出す。
「何故かって?決まってんだろ」
だが、それすら掻い潜って篝の拳がリブラの顔面に叩きつけられた。
戦乙女流決闘術『祓石火』
「ぶべぇ!?」
「ブラック化した影響で、スケールダウンはもちろんのこと、精神力で抵抗出来る洗脳、認識しないと使えない確率操作、そしてただ威力がデカいだけの分かりやすい斬撃」
すぐに反撃に拳を繰り出すリブラ。だが、その攻撃は篝に当たる事なく躱され、その喉に拳を叩き込まれる。
「その上相手を侮って高見の見物を決め込み、人間のような感情で行動して勝機を逃す」
戦乙女流決闘術『隕刻・彗星』
篝の放つ後ろ回し蹴りがリブラの顔面を蹴り飛ばす。
「存在を歪められ、人と同じ形を取り、感情を振りまく。まるで『神』である事に固執し酔いしれる人間そのもの。そんなただ偉ぶってるだけの奴が、揚げ足とられるなんて当たり前だろうがっ!」
とにかく一方的だった。
勝ち誇っていた所を次々とありえない事態で覆され、挙句の果てには無警戒だったただの鉄屑に渾身の一撃を阻止されたのだ。
その動揺を、リブラは隠しきれず、抜け出す事が出来ないまま、篝に揺さぶられ続けている。
「ついでに戦い方をまるで知らない。ただある力を振り回してるだけ。なまじ知恵もある分、癖も分かりやすい。これじゃあデストロイモードの俺たちと何も変わらない」
『鉄火』による手打ちですらリブラは避けられない。
リブラの能力は確かに驚異的だ。だが、戦ってみて分かるのは、戦闘経験の浅さと能力に驕った油断。それが明け透けて見える。だからそれが通用しなかった時の対処法を用意していないし思いつきもしない。
だから篝一人に一方的に叩きのめされる。
「ふ、不敬っ、ごぼっ!?不敬っ!おべっ!?フケ、イィい!!!」
「こんな奴に、俺の仲間が操られたんだと思うと―――」
だから、篝は拳を握り締める。同時に、篝の背後でゴライアスが拳を握り締めた。
「―――ふざけるなァッッッ!!!」
戦乙女流決闘術『鉄火』×『鉄拳制裁』
篝の鉄の拳とゴライアスの鉄の拳が同時にリブラに激突。殴られたリブラはそのまま吹っ飛び、球場の壁に激突する。
「カテゴリーIXだろうが関係ねえ!もう塵一つ残らない程の原子の果てまで叩き潰してくれるッ!!!」
(((最後の最後でブチキレた!?)))
もはや篝の怒りは怒髪天を突いていた。実際にはそうなっていないのだが、彼から立ち昇る気迫がまるで天に立ち昇る湯気のようなオーラを錯覚させていた。
アイリス曰くの『怒りの権化』。その怒りがここに来て爆発していた。
「・・・・不敬」
しかし、それでもリブラが放つ圧は、その場を支配するには十分。
「人の分際で、我を其方たちと同列に扱うなど、万死すら生温い―――」
その身を歪ませ、膨れ上がったかと思えば、瞬く間に見た事のない怪物へと変貌する。
見た目は巨大な尻尾の無いサソリ、しかし頭部に当たる部分がそのままリブラの上半身となっているような異形な姿であり、その上半身ですら元の三倍近いサイズに巨大化してしまっている。
例えるならば『人馬』にかけて『人蠍』だ。そんな巨大な異形へと変貌したリブラが、天秤と鋏を篝たちに向ける。
「今こそ、裁きの時―――」
そしてリブラは見た。
リブラを完全にバカにした顔で耳をほじっている篝の姿を。
「何してんの篝くん!?」
そんな篝にステラがツッコミを入れる。
「ああ、いや、なんか―――」
篝は酷く戸惑った様子でステラの方を見た。そしてその隙を縫ってリブラが巨大な鋏を、弾丸のような速度で振り抜いた。だが、その鋏は篝の姿を捉える事は無かった。
「なんか、負ける気がしなくなった」
「・・・・は?」
とん、と彼が着地したのは、なんとリブラの頭の上。
「不思議だ。ジェスターの時も思ったが、人間の時より、こういった怪物になってくれた方が戦いやすいって思うんだよ」
「きさ―――」
篝がリブラの顔に向かって降りる。その直後、その顔面にサッカーボールを蹴るように蹴り飛ばした。
「ぶべ!?」
続けてゴライアスを足場に今度は飛び蹴りを叩き込む。そして身体を捻って回転させた。そのすぐあとに左の鋏が飛んできた為に、その鋏に手を置いて上に飛び上がり、リブラが振るった左の天秤の斬撃を躱す。
そして再び、ゴライアスの拳に乗ってリブラへ再突撃。
戦乙女流決闘術『毅焔』
身体を大きく捻り、全身にあるバネを利用し、対象を力の限り殴り飛ばす、戦乙女流の技である。
ただし、この技の多様は禁物。この技は使用者に多大な負荷をかける技だからである。
その一撃をもって、リブラを殴り飛ばす。
その様子を、高層ビルの柵に座って眺めるアイリスの姿があった。
「ふふ、訳が分からないでしょうね。どうして巨大化した途端、もっと戦いづらくなったのか」
理由は戦乙女流の理念にある。
「そういや、アイリスが言ってたな・・・」
『戦乙女流』は英雄の流派。
魔性を討ち、人に施し、厄災を打ち砕く者による決闘作法。
その身を鉄とし、派を鋳型に、鍛錬を以て熱し、指導を槌とし鍛え上げる。
そうして産みだされるは、剣か槍か、はたまた盾か。
されど最後に行き着くは最大の名誉。
即ち、『竜殺し』である。
「戦乙女流の最終目標は竜を討つこと」
「ただの怪物風情、叩き潰すのはたやすいってことだ」
英雄の流派を以て、魔性を討て。




