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黄金のアテナ  作者: 綾波幻在
第一章 クローラル編
16/27

篝の怒り


「はっきり言って篝は天才よ」


アイリスは、向かいの席に座るクルエに向かってそう零した。

「天才・・・確かに、篝の一度見ただけでなんでも出来る事は凄まじいが・・・」

「そう、そこよ。あいつ、一度技を見せるだけでそれを自分の身体に合うように調整して百二十パーセントの精度で使えるようになるのよ。教え甲斐が無いったらありゃしない。お陰で、たった七年で奥義以外の戦乙女流の技を使えるようになってたわ」

「確か免許皆伝までに十年はかかると言っていたが、七年でそれほどか?」

「これは私の予想だけど、本来ならあいつは五年で戦乙女流決闘術をものにしていた筈よ。七年もかかったのはあいつがまだ幼かったから。技術もそうだけど、その技術についていけるだけの肉体を持っていなかったことが幸か不幸か、ここまでの時間をかける要因になったと思う」

「肉体、か・・・あいつの事情を考えると、奴はそこまで我慢強くは無かったと思うが」

「そうね。あの獣のようだった子供が、あそこまで成長してくれるなんて、師匠冥利に尽きるわね」

「どんな鍛錬をさせたんだ。奴はお前には素直にいう事を聞くようになるコツでもあるのか?」

「コツなんてないわ。ただ、あいつがちゃんと聞き分けの良い子だってだけ」

アイリスは酒の入ったグラスの縁をなぞる。

「あいつはただ、許せないだけなのよ」





「オオオォオ!!!」

篝が拳を振り抜く。対して、スカーはバックステップを踏んでその拳を躱す。

そのまま繰り出されるラッシュを、スカーは軽快なステップで躱していく。篝の攻撃は当たる事なく、建物の壁へと追い詰める。しかし、スカーはその壁を飛び上がって登り、屋根へと上るとその手にトランプカードを持つと、それを篝に向かって投げつける。

「っ!?」

篝はそれを避ける。直後、それは地面に当たる事なく爆発、炎をまき散らす。

(こいつは、コードスキルやリコレクトスキルじゃない・・・)

「術式か!?」

「正解だ」

スカーが再び、トランプカードを投げる。



『術式』

コードスキルやリコレクトスキルが個人の持つ『能力』なら、術式とは魔術や魔法と言った『道具』のようなものである。

特定の模様、文言、配置などによって構築された『式』によって、エーテルをエネルギー源として超常現象を引き起こすことの出来る技術であり、やり方さえわかれば誰もが使えるエーテル技法である。


だが、術式はコードスキルに比べてコストも手間もかかる上に大半がコードスキルの劣化版となるため、よほどの『適性』が無い限りは使い手が限られるものである。



「劣化版になるとはいえ、この術式は何かと便利でな。だからこうして愛用しているわけだ!」

トランプカードが迫る。カードに仕込まれた術式はどうやら時間で爆炎を炸裂させるタイプのようであり、地面に刺さる前に爆発する為、回避をワンテンポ早く行わなければならない。

「舐めるな・・・!」

対して、篝は爆炎を掻い潜りながら鉄球を複製。それを躱しながら投げ飛ばす。対してスカーはそれをカードで迎撃する。しかし、そこから起こったのは想定外の規模の爆発だった。

「なっ!?」

その異様なまでの爆発にスカーの視界が遮られる。その黒煙が収まった時には、篝の姿はスカーの視界から消えていた。

「一体どこに―――」

探そうとして、背後からガタ、と言う音が聞こえた。スカーは自身の直感に従い、前に飛び出しつつ後ろを振り返った。直後、視界が塞がった間に建物をよじ登って背後に回っていた篝の蹴りがスカーに叩きつけられる。

地面へと落とされたスカーは、篝の方を見上げる。だが篝は既にスカーへと追撃を仕掛けていた。

「戦乙女流決闘術―――」

篝は屋根かた飛び出すと同時に、身体を前に回転させ、その勢いでスカーの脳天へ踵落としを繰り出す。


戦乙女流決闘術『隕刻(インコク)木星(モクセイ)


篝の踵落としを、スカーは両腕を交差させて防御する。

「ぐおっ!?」

(重いっ・・・!?)

「ガァァアア!!!」

そこへダメ押しに篝はもう片方の足を蹴り上げる。顎を狙ったそれは、蹴り上げた事で緩んだ踵落としの威力から逃れたスカーの顎を打ち損じる。

だが、バランスは崩れた。空中で後転した篝は地面に着地すると同時に、拳を握り締めてスカーに向かって駆け抜ける。


戦乙女流決闘術『蒼火撃(ソウカゲキ)


凄まじい速度で突進し、拳を叩きつける。最初にスカーの顔面を殴り飛ばした一撃が再びスカーを狙い撃ちにする。だが、スカーはそれを横に打ち払って回避してみせる。だが、篝はバリケードを作って勢いを無理矢理殺し、その状態でスカーを背後から追撃する。


戦乙女流決闘術『鉄火(テッカ)


今度はただの手打ちだ。威力はそれほどない。だが、篝の部位鍛錬によって鍛え抜かれた拳は、ただの手打ちであってもそれなりの威力を誇る。対して、スカーはその攻撃を振り返って掴みとろうとした。

だが、結果はスカーの手が逆に掴まれる事となった。

「なっ・・・!?」

「捉えた」

その状態で、篝はそのまま再び威力のある拳撃を繰り出そうとする。

だが、その前にスカーの蹴りが篝の側頭部に直撃する。

「ぐっ!?」

だが、篝は手を離さない。

(どういう握力をしているんだ・・・)

スカーの掴まれた腕は、既に骨がみしみしと音を立てていた。スカーを本気で逃がさないという意思を感じていた。

(いや、違う、こいつの狙いは―――)

しかし、その真意に気付いたスカーは、すぐさま拳を繰り出そうとしていた篝の拳を片足で食い止め、その一瞬で空いている手でカードを取り出す。

直後、篝の足払いが、スカーの残った足を払い、スカーの態勢を崩すが、スカーは自身の腕を掴んでいる篝の手にそのカードを添えた。

「チッ」

直後炸裂。

辛うじて直撃を免れた二人は、距離をとり、ようやくそこで攻防を止めた。

「まさか、俺を殴るんじゃなく、この腕を握りつぶす気だったとはな」

スカーは掴まれていた腕をさすって冷や汗を流していた。


篝があの時、繰り出していたのは戦乙女流決闘術『蛇咬(ヘビガミ)


本来は相手の身体の一部を蛇の顎のように掴んで逃がさないようにする技なのだが、先ほどの篝はこれを驚異的な握力で握り砕く技として使っていた。

もし、あのまま拳の方の対処に気を取られていたら、スカーの腕はあの時点でオダブツとなっていただろう。

「まさか、ここまでしてくるとはな。何がお前をそこまでさせる?」

スカーはあくまで笑顔だ。凄まじい感情をぶつけてくる篝の事を好いているかのように。

対して篝はどこまでも不機嫌な顔を隠さず、怒りを曝け出してスカーを睨みつけている。

「先日の百面道化の時もそうだ。お前は良くも悪くも『平等』だ。悪事を働く輩には等しく平等にその拳を向け、叩きつける。自身の事など目もくれず、ただひたすらに自分の意思に従って拳を振るう・・・だが、その生き方はここじゃあ窮屈じゃないか?」





「篝はずっと怒っている」

「怒っている?」

「そう、ずっと。母親を見捨てた自分を、技を覚えてもすぐには使えない自分を、自分が許せない事を見逃す事を。その癖、世界が残酷なんだと理解していて、全てに手が届かないってことも理解してる。それでも、あの子は諦めきれずに怒り続けてるの」



「俺たちとともに来い。俺たちならお前のその『怒り』を自由に発揮できる場所を用意してやれる」

スカーは、未だに篝を誘う。本気で、篝を仲間に引き入れる気なのだろう。

しかし、だが、しかし、篝の『火』は、止まることなく燃え上がっていた。

「自由に、発揮できる、場所・・・・?」

篝は拳を握り締める。その筋肉が引き千切れ、骨が折れんばかりの力で握りしめる。

手袋に包まれ、分かりづらくとも、その手袋に血が滲んでしまっている。


「どこまで俺を馬鹿にすれば気が済む」


ぞくり、とスカーの背筋に悪寒が走った。

「俺が欲しいのは自由じゃない。怒りを振りまく場所じゃない。俺は、みんなと一緒にいられる不自由が欲しんだよ(・・・・・・・・・)・・・っ!」




「やりたいことを出来ないこと、誰かを守りたくても守れないこと、全部、許せないから強くなりたい。だから、貴方たちと出会う前は、よく無茶してた。ずっとコンクリートの壁に拳を叩きつけて、血が滲んで皮膚が避けて、骨が砕けそうになろうとも、その怒りの使いどころが分からないかのように、無邪気に拳をぶつけ続けてた」

「想像出来ないな。確かにあいつはマイペースで自分本位だが、そこまでの無茶はしないと思っていた・・・」

「そりゃあ今はね。自分のせいで、仲間が危険に晒される事は許せないもの。だから、壊れて使い物にならなくなった自分を許せるのって言ってやったわ」




篝はその指先をスカーへと突き付ける。

「お前らは俺から仲間を奪う。自由を押し付ける。繋がりを切る!だから何があってもお前らは皆殺しにする!俺の意思で、俺の拳で、俺の怒りで!お前らを地獄の底まで叩き落とす!」



「だって篝は、ずっと怒っているんだから」




「俺はお前たちを許さない」

篝が取ったのは独特な構えだ。右拳を耳の高さに、左手はその拳の下に添え、左肘は胸に当てる。左足を前に、右足を後ろとしたその独特の構えは、例えるならば『示現流』と呼ばれた剣術の構え『蜻蛉』と似た構えだった。

「その構え・・・来るか」

「お前はここで殺す」


『蒼火撃』は骨の関節の稼働によって繰り出される突進技。

『祓石火』は上半身の筋肉の躍動と腕の回転を組み入れた正拳突き。

『水月』は巧みな重心移動を足捌きによる短距離での移動法。


ここで繰り出すは、骨、筋肉、重心、ありとあらゆる人体に存在する『加速装置』を組み合わせた突進技。


「音を超える顎を見た事はあるか?」

スカーの直感が告げる。この技は、まともに受けたら死ぬ。


予備動作は、見えなかった(・・・・・・)


「ごっ!?」


――――ドウッ


スカーが再び吹き飛ばされる。そのまま建物をいくつか貫通して吹っ飛んでいった。そしてその後、支えを失った建物が立て続けに崩れ去る。



まず、外に置いた重心と筋肉の稼働。前に出した左足の膝を脱力させ、同時に後ろ足である右足を地面から抜く。それによっておこる体の浮き上がりは腹筋によっておさえ、骨盤と一番下の肋骨の間にある腰方形筋によって姿勢を制御しつつ、そのまま腸骨を体の中心、正中線へと叩きつけるイメージで後ろ足を前方へと推進力を乗せて繰り出す。

そうする事により、重心は外へ出たまま、踏み込みの時点で肉眼では捉えられない神速域へと突入する。


だが、この技はここで終わらない。むしろ重要なのはここから。


今度は骨。前へ出した右足を起点に、骨、関節、筋肉を、足先から同時に順番に稼働させて体内で推進力を発生させる。それによって生み出された推進力は、関節と骨の間にある筋肉を通る度に加速増幅する。それによって、繰り出される二歩目は、一歩目の勢いを殺す事なく更なる加速を生み出し、音の壁を超える(・・・・・・・)


そうなれば、もはや音は置き去り。その一撃が到達した後に、音は響く事だろう。


そして、三歩目(・・・)。一歩目の踏み込みに、さらに二歩目の加速を組み入れた本命の一歩(・・・・・)と、今度は上半身にすら経由する音速を超えた拳が体内で加速増幅された推進力と共に、全体重と共に繰り出される。


それこそが、戦乙女流決闘術第一奥義『レッドフード』である。



(――――クソッ)

だが、仕留められなかった(・・・・・・・・・)

(合わされた・・・・!)

篝の右肩の衣服が焼け焦げている。

(ヤロウ・・・直線攻撃だと分かってそこにカードを置きやがった(・・・・・・)・・・!)

『レッドフード』は音速を超える突進技。だが、欠点として一度駆け出したら止まれないという弱点がある。

しかも、筋肉の稼働や骨の駆動が重要となるこの技は、直撃するまで筋肉を締めることで相手の攻撃を防ぐ『火威』が使えない。

無論、音速を超える攻撃なんて見切ることなんで困難な筈だが―――

(初見で見切りやがった・・・!)

幸い、時限式だった上に爆炎をまき散らすだけなことが幸いしたのか、軽い火傷で済んでいる。だが、そのせいで威力が削がれてしまった。

しかし、それでもかなりのダメージが入った筈。

「クク・・・・ハハ・・・!」

「っ!?」

筈、なのに、その男は立ち上がった。

「流石に今のはやばかった。俺も死を覚悟したよ・・・お前の殺意は本物だ!だが、まだ若い。俺を仕留めるには至らなかったようだ!」

「言ってろすぐにでも倒れそうなくせに」

篝は立ちあがって、再び構える。だが、

(流石にレッドフードの反動はきついな・・・)

その速度と威力故に、一度使えば全身が悲鳴を上げるほど反動を受ける。

師であるアイリス曰く、戦乙女流の構想段階で考えていた『唯一の奥義としてただただ威力だけを求めた結果の産物』であるが為のものであるため、このような反動があるらしい。

(七つある奥義を全て習得すればデメリットを解消できるとか言っていたが、肉体の限界を超えた攻撃に解消する余地なんてあるのか・・・!?)

反動で全身が痛い。だが、目の前の敵を逃す手なんてない。

「まだやるつもりか」

「殺すと言った筈だ」

「そうか、なら―――」

再び両者が激突する。その直前―――

「篝さん!」

ラーズがゴライアスを伴って、スカーに拳を振り下ろす。

「ラーズ、戻ってこれたのか!?」

「別空間に飛ばされましたが、ゴライアスの次元潜伏を利用して戻ってきました!」

「なら丁度いい、あいつを仕留める、手伝え!」

「はい!」

ラーズが手を振り上げ、同時にゴライアスもその巨腕を振りかぶる。

その手に出来上がるのは鋭利な巨大な槍。どこで認識したのかは分からないが、それをゴライアスの持つ膂力でスカーに向かってぶん投げる。

「全く、良いところだったんだがな」

それをスカーは躱し、ラーズに向かってカードを投げようとする。だが、その前に、今度はゴライアスが左腕を振りかぶっているのが見えた。

「っ!?」

「『投擲(スロウ)』!」

その左拳から放たれたのは、砕けた瓦礫。エーテルを伴っている分、それは強力な散弾となってスカーに襲い掛かる。対してスカーはカードを投げてそれを炸裂させ防御。その隙を狙って、篝が接近を試みる。だが―――


突如として篝とスカーの間に、赤い一閃が迸った。


「うお!?」

急制動をかけ、辛うじて回避した篝は、距離を取らざるを得なかった。

「今のは!?」

ラーズが、その攻撃が飛んできた方向を見る。そこにいたのは、一人の女。

立ち居振る舞いから、篝やスカーのような男の戦姫などではなく、正真正銘の女であることが見てとれる。

「二人きりにしてくれと頼んだ筈なんだがな」

スカーはあくまで笑顔を崩さない。対してその女はつまらなそうな表情のまま、スカーの傍に立つ。

「それならシナリオ通りにしてちょうだい。アドリブを入れられるとこっちも困る」

どこか植物のような雰囲気を持つその女は、妙な事に片目を包帯で隠していた。

「それに、どうやらあの子の師匠がこっちに向かってるみたいよ」

「勘づかれた・・・いや、最初から分かっていてわざとこいつをここに来させたのか・・・相変わらず食えない女だ」

そうして呆れていたスカーは、再び視線を篝へと向ける。その傍には既にラーズとゴライアスが近寄っていた。

「残念、今日のデートはここまでだ、篝。だが忘れるな」

スカーは変身を解除して、篝に話しかける。

「天より定められた理か、それとも公正公平な平和か、もしくは一攫千金に値する博打か・・・最後にお前が何を選ぶのか、今から楽しみで仕方ない」

「どれを選ぼうが、お前らを滅ぼす事には変わりないぞ」

「どうだろうな。だが、きっとお前は正しい選択をする筈さ。その時を、楽しみに待っている」

そうして出現するのは何かの扉だった。

「篝さん・・・っ!」

「良い・・・ここまでだ」

スカーと女が扉の中へと入り、吸い込まれていく。その際に、スカーはこちらに手を振ってきた。

「また会おう、篝」

そうして、扉は消え、彼らの気配は完全に消え失せた。

「敵性反応、消失(ロスト)・・・完全に見失いました」

「・・・そうか」

篝は、それだけ聞くと、建物の一つへと向かった。

「篝さん?」

その壁に近付き、しばらくその壁を見つめていると―――


突如としてその壁を殴り砕いた。


「!?」

それにラーズはびくりと肩を跳ねさせる。

しかし、篝はそれどころではないほどに歯を食いしばっていた。

(手加減されていた・・・!)

最初から最後まで、スカーは篝に対して加減しながら戦っていた。

コードスキルを使わず、劣化版である術式しか使っていなかったのがその証拠だ。

だからその油断を利用してレッドフードさえ使った。だが仕留め切れなかった。

「クソッ!」

悪態を吐き捨てる篝。悔しさで泣きそうになる。

せっかく見つけた仇の一人を、みすみす見逃してしまった。

「母さん・・・・」

敗北に打ちひしがれる篝の背を、ラーズは黙って見守る事しか出来なかった。

(こんな時、どう声をかければ・・・)

しかし、ふと、ラーズは新たに現れた者たちの気配に気づく。

「こーら」

篝の耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。その聞こえた方向に視線を向けると、いきなり額に痛みが走った。

「だぁ!?」

デコピンである。

「また一人で無茶したわね」

「あ、アイリス・・・」

篝は唖然としたまま、戦姫形態で目の前に立つアイリスを見上げる。

アイリスは、呆れた様子で笑っており、そのデコピンをした手をぽん、と篝の頭に乗せた。

「また無茶をしたのね。しかもレッドフードまで使うなんて。それほどまでの相手だったとはいえ、少し迂闊だったわね」

「・・・ごめん、アイリス」

篝が項垂れると、そこへ一緒についてきたクルエがやってくる。

「全く、一体何があったんだ?」

革星機関(ディフェクトライン)のスカーと遭遇、戦闘になりました。更に、同じ幹部と思われる女性とも遭遇・・・」

「何?」

「幸い、すぐに撤退してくれたのですが、今後とも、篝さんに干渉してくるものと」

「目をつけられたわね」

クルエの質問に答えたラーズの情報を聞いて、アイリスはそう断定する。

「どこでバレたのかしら・・・そう言う手合いは片っ端から消してたのに」

「消してたんかい」

「ザコだからと油断したからかしら」

「そんな事はどうでもいい。どうする?今後も狙われ続けるとなると、対策を・・・」

「今は目の前の事に集中した方がいいでしょ」

アイリスはそう言い切った。

「リブラの位置はもう分かっているんでしょう?だったらそっちを先に対処した方が良いと思うわよ」

「それもそうか・・・」

アイリスの言い分にうなずいたクルエは篝の方を見る。見られて、篝はバツが悪そうな顔で視線を逸らした。そんな篝に、クルエは両肩に手を置く。

「・・・お前が無事で良かった」

「・・・ごめん、先生」

「分かったなら、次から事前に報告してくれ。心配する」

そうして、クルエは篝の手から手を離して、言う。

「帰ろう」

火が燃えた後、そこには灰しか残らない。されど熱は未だある。

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