一見明るい闇の煮凝り
「じゃじゃーん! ここが僕の部屋ですよ! そしてこちらが先代から引き継いだ家宝の銃剣です! 別名だと牛蒡剣とも言うみたいで、そこから僕の名前を付けたらしいんですよー」
瑠璃達警察を部屋へと案内し、朗らかで快活な笑みを浮かべてそう語るのは、この屋敷の当主である根尾牛蒡。
無害そうな笑みを浮かべているが、その室内は彼の態度と裏腹に、謎の毒々しさが満ちていた。
「……お国殺し、と予告状には書いてありましたが」
「ああはい! そうなんです! とはいってもこのお国殺しというのは祖国を殺すぞって意味じゃなく、相手のお国のヤツをぶっ殺すぞーってヤツらしいです! 元々は他の人が所有してたらしいんですけど、先代が勝ち取った? とかで格好いい名前をつけたとか何とか!」
まあ僕受け継いだだけなんでこの家宝の価値あんまりわかんないんですけどね!
根尾は堂々と胸を張って言い切った。
「だから何で怪盗塩犬がこんなのを狙うのかなーっていうのもちょっとよくわかんないです。確かに僕の家の家宝ではありますけど、僕からすればそこまで価値を見出せませんし」
「成る程……」
ところで、と瑠璃は根尾の自室だという広い室内を見渡し、目を細める。
「あちらの壁に埋め込まれているガラスケースの中身……デザインもサイズもテイストも関係無く飾られているようですが、どういった意図で? 男性用も女性用も関係無い品が並んでいるようですが」
「ああ、確かに腕時計とかピアスとか色々あるのに種類沢山ですもんねー」
根尾は瑠璃の問いにケラケラ笑ってそう返す。
「でも一見わからないようで、実は凄い共通点があるんですよ! なんと! これの持ち主はみーんな僕の同級生だった人達なんです!」
「…………それならテイストや女性用男性用関係無く飾られているのも納得ですが、今回護衛するにあたって調べさせていただいたところ、貴方の同級生は殆どが」
「ああはい、死んでますね!」
言いにくそうにしている瑠璃に対し、あっさりさっぱりとした返答が来た。
「皆ぽっくり死んでます! なのでこれは遺品なんですよ遺品! 死んだ人の物をもらい受ける事で、見る度に思い出せますからね!」
ええ! と根尾は光り輝くような笑顔を浮かべた。
「僕を一方的にいじめやがったアイツらが苦しんで死んだ……見る度にその復讐が達成された事実に胸がスッキリするってもんですよ! ここのところ病気も無いくらいなので復讐ってのは気分が良いですね! 健康にはやっぱり復讐! やられた分以上をやり返してザマァってやって初めて健康的な生活が手に入る!」
「危険な思想が詰まった勧誘のような言葉はちょっと」
「えー、でも国の法律的にいじめとかっていまいち手を打ってもらえないじゃないですか。だったら自力でやるしかないですよ! 恨みつらみは自分で晴らすしかありませんからね! その方がスッキリするのも事実だし!」
好きな映画について語っているかのようなテンションで、根尾は語る。
「大体、日本って国は大昔からいじめがありまくりじゃないですか! 大奥でもそうだったんでしょうけど、番町皿屋敷だってアレいじめからの殺人ですよ殺人! そりゃあ化けて出ますよそんな事されたら! 他にも話題になってないだけで昔っからいじめ大国ですよこの国! 現代では問題として取り沙汰されるくらいなのに具体的な対策無いままだし!」
だから自力で報復するんです! と根尾は両手を広げてくるくる回る。
「幸い僕のお家はお金持ちだったので、頑張って跡継ぎになって、頑張って会社を大きくして、頑張って相手の会社を潰したり吸収したりして、頑張って相手が路頭に迷って生活出来なくなるよう追い詰めて、って頑張りに頑張ってみたんです! 結果的に僕をいじめてた奴らは自殺の連続! いじめで自殺を迫られた事もありますからね! だったら自殺するレベルまで追いつめられるっていう覚悟はすべきですよね! 当然!」
「警察に言わないでいただきたい」
「こうやって暴露しても、関わりたくないオーラ出して最初っから決まってる仕事の方を優先して、目の前の問題を見ない振りするのが警察だってわかってるからするんですよー。僕もいじめを訴えたところで無視されるか嘘つき呼ばわりされるかその場しのぎの対応をされるかでしたからね! やっぱり相手の息の根止めないと現状から逃れたりってのは出来ないもんですよ!」
……いじめられてそういうメンタルになったのか、そういうメンタルだっていうのを無意識に察して周囲が拒絶をしたのか、どっちかしら……。
天井裏から覗いているが、ひたすらに明るく闇が深い。
よく見たら根尾の目、煮詰めた闇鍋のようにねっとりしたドス黒さに満ちているし。
あとさっきから隣に居るモダン大吉が、まあそうだろうな、という雰囲気で頷いているのも微妙に居心地が悪い。
……こっちはこっちでまあまあ淡泊だものねえ。
私に対して謎の執着を見せる事こそがイレギュラーだというレベルで淡泊なのが彼である。
「と、まあそういうわけで遺骨とかもあるんですが、あっちに飾られてる金箔でコーティングした髑髏! あの頭蓋骨ってば僕の隣の席で頻繁に僕をいじめてたヤツの頭蓋骨なんですよ! もー死んだ時に嬉しくて嬉しくてついあんな立派な飾り方しちゃった!」
キャッキャと笑う態度とテンションは恋バナをする女子高生のようだが、言っている内容はひたすらに闇。
いじめを現状のような状態で放置し続けてたら、いじめられていた側が吹っ切れた場合マジでこういうのが大量生産されるのでは、と思うくらいにはヤバい。
すっかり限界まで闇が煮詰められている。
「ちなみにあっちのガラスケースに飾ってある指輪用の手の骨、本人の手の骨なんですよー! 元々骨密度あんまり高く無いヤツだったんでどうなるかなーって思ってたんで先に手だけ貰って肉削ってもらって! それを飾ってあるんです! 下の方に飾ってあるつけ爪みたいなヤツもアレ本物の爪なんですよ! もーこの爪を彩る為だけにネイルアートの勉強すっごいしたんですから! 骨にしちゃうと爪落ちちゃうけど、それじゃあ勿体ないですからね!」
「………………」
「……!」
はしゃぐ根尾にもう耐えられなくなったのか、瑠璃は恐怖と困惑が入り混じった顔で泣きそうな目のまま誰か変わってくれという視線を周囲に向けた。
しかし残念ながら、無言ではあれど殆どが首をぶんぶん強く横に振る。
根尾以外が逃げ出したいという雰囲気を全力で発している中、内鍵であるはずの窓が外から開けられた。
「怪盗塩犬、ここにさん、」
「待ってたぞ怪盗塩犬ーーーーー!」
「じょーーーーーっう!?」
窓枠のところに立っていた怪盗塩犬が口上を述べる前に耐え切れなかったらしい瑠璃が突撃した。
最早抱きつきに近い勢いのタックルに驚いたのか、怪盗塩犬はただでさえ見開いている目をより一層強く見開き、向かってくる瑠璃の頭を跳び箱のように使って部屋の中へと着地しそのタックルを回避した。
「な、な、何なんだ一体!」
「おらー!」
「ってギャーッ!」
状況がわからず困惑する怪盗塩犬の背中側から小紋が飛び掛かるも、怪盗塩犬はすんでのところで転がるように横へと回避。
「おっそいんだよお前! 俺様達が! 俺様達がこの待機の間にどれだけの苦痛を強いられたと思ってんだチクショー!」
「警察になった事をここまで後悔した日は無いくらいに心がへし折れそうだったんですよ!」
「ほのぼの作品がまさかのハートフルボッコ作品だった時並みに心がめきょめきょになったんだからな!」
「日本人なら約束の五分前行動は当たり前だろう!? その五分で自分たちがどれだけ救われたと思っているのだ!」
「何の話!?」
涙目の小紋、青、蓮、勲が口々に叫び、怪盗塩犬は困惑のままそう返した。
いやまあ、うん、双方の主張はその通り過ぎるので全部見てた私としてはどちらの意見も尊重したいところ。
……明るい闇って、吹っ切れちゃってるから尚の事何もコメント出来ないものね……。
「も、本当めっちゃくちゃ怖かったんだぞ馬鹿野郎! お前が遅かったせいで!」
泣きながら突撃して躱されたのは、羽衣鋸。
気のいい兄貴分的な性格だが、一人っ子な上に幼少期は近所に居る年上の子達に可愛がられていたとかで時々末っ子らしさも見れ隠れするタイプだ。
尚、その幼少期によく山で遊んでいたとかで山道や野草に詳しく、時々罠に掛かって怪我をした非狩猟対象の動物を保護してうちに連れて来たりもしてくれる。
「いやもう本当にな!? 流石の私も今すぐに泣き出して逃げ出そうかと思ったくらいだぜ! もう絶対今さっきの光景が夢に出る! 絶対魘されるの確定じゃないかこんなの!」
涙目のまま表情を引き攣らせながらそう叫ぶのは白獅子薄雪。
見た目はおしとやかな美人だが結構なガンガンいこうぜタイプであり、わりと向こう見ずで無鉄砲な性格。
警察でありながら、公園で近所の子とヤバい威力のペットボトルロケットを作って爆音を発生させて通報された事が何度かあるという、お茶目のもう一段階上に居る男。
ちなみに彼は黙っていると美女に見間違えるような美しさの為、ちょいちょい男に告白されるらしい。
本人は気の強い美女が好みらしく、男に告白されても嬉しくない、と嫌そうに愚痴っているが。
「ああもう意味の分からない事を……一旦撤収!」
「「「させるかああああ!」」」
全員が全員涙目のまま凄い勢いで迫ってくるからか、怪盗塩犬は銃剣の奪取を一時諦めて逃げる事にしたらしい。
しかし、扉から転がるようにして逃げて行った怪盗塩犬を警官が全員で追いかけ始めた。
守る対象があるとはいえ、あの部屋に長居はしたくないという心境なのだろう。
「じゃ、私が行くからモダン大吉は向こうのフォローをしてあげてちょうだい」
下の室内に居る根尾に気付かれないよう小声で告げれば、モダン大吉は口をへの字に曲げ、仮面越しでもありありと不機嫌さを醸し出していた。
「…………狐仮面があの駄犬と二人きりで接触する方が嫌なので従いますが、何もあのような犬をわざわざ助けずとも良いのでは……」
「ま、怪盗塩犬の回避力や逃げ足の速さは凄いと思うけど……瑠璃を始めとして、瑠璃の部下は皆優れてるんだもの。甘く見てたらあの男をしょっ引かせる事が出来ないわ」
「復讐程度、昔の日本でも認められていた事だと思いますが」
「彼の目的は特定の相手への復讐とはいえ、ただその会社に居ただけの無関係な人まで被害に遭ってる。怪盗塩犬が動くのはそういう理由。そういう理由で動くなら、私も協力したいと思う。それだけよ」
指を折って狐の形を作り、モダン大吉の仮面、額部分に指先をコツンと当てる。
「それじゃ、行ってくるわね」
「……ご武運を」
「そっちこそ」
モダン大吉が移動したのを見届けて、私は天井裏から室内へと侵入。
背後に降り立った為、根尾は一瞬の間を置いてから驚いたように振り返り、
「はいワンプッシュ」
香水型の眠り薬をワンプッシュすれば、ラベンダーの香りに包まれて仰向けになって転がった。
わりと寝汚いのかガーガー鼾を掻いて寝ているけれど、とりあえず寝たので良しとする。
「で、これがお国殺しね」
壁に掛けられていた銃剣を手に取り回収する。
他の遺品はガラスケースで大事に保管されているのに比べ、これに対しての執着は本気で無いらしく、ただ雑に掛けられているだけだった。
……なんかもう、恨みつらみを超えて変な執着になっちゃってるような……。
まあ日本人というのは夢で見た美女に恋煩いをして狂って死んだり、気持ちを告げようかどうかで悩み過ぎて死ぬ、という何やってんだみたいな事例もあるのでまあまあまあ。
大昔の時点でそんな感じなので、このレベルの執着もありえなくは無いのかもしれない。
……だからってここまでするのはどうかと思うけど。
そう思いつつ、部屋を後にする。
飾られている元クラスメイト達らしい遺品に何か思わないわけでも無いけれど、私が手出し出来る物でもないから警察に任せるべきだろう。
……それに、私が手出しをする相手じゃないわ。
根尾が大分狂った仕上がりなので被害妄想なのか本気でいじめられていたのかは知らないが、もし本当にいじめられていた場合、口火を切ったのは彼らなのだ。
そうであるなら、私が慈悲を見せる対象では無い。
……さて、と。
目的の品は回収出来たわけなので、警察に追われているだろう怪盗塩犬と合流を、
「お前、狐仮面ダナ?」
「!」
気配が消されていてわからなかったが、廊下には陳霞が待機していた。
いつでも踏み込めるように下半身に力を入れているのがわかる。
服装も昼間のゆったりした服と違い、同じく中国風ながらも、動きやすそうに袖部分が絞られたデザインの服へと変化していた。
「ワタシ、瑠璃に頼まレタ。廊下の方で待機スル。自分達が追わなかった方の獣が出現する可能性高イ。だからワタシが対処スル。そしてお前が来タ。来たからお前、ワタシが対処スル!」
「説明はありがたいけど、挨拶も無しに攻撃してくるのは無いんじゃない!?」
体重を乗せた真っ直ぐな掌底が腹を狙ってきたので、ジャンプして避け、着地点を狙われそうになったので壁を蹴って着地点をずらし、追撃を躱す。
「……ワタシ、陳霞。よく動くなお前」
「ええまあ、私って狐仮面だもの。狐はこういう動きが得意なのよ」
「知っテル!」
握った拳が向かってきたので、逆にこちらも向こうに飛び込んで腕をこちらの右腕で横に叩いて軌道をずらす。
そのまま前に踏み出し、右足を軸にしたまま左側を陳霞の方へと寄せ、左手で肩を向こう側に押して真逆の方を向かせる。
しかし向こうも移動させる動きの勢いを利用してぐるんと回転しこちらを向いたので、私は向かい合う体勢のままバク転で距離を取った。
「…………その動キ、独学カ?」
「動画で見たヤツを真似た程度だから、実際独学みたいなものね。試してみたら意外と出来たのが楽しくって」
実際、ここがゲーム世界だと自覚してからは自分の身体能力が二次元染みている事に気付いた。
そこからはどこまで出来るかが楽しくて、つい色々はしゃいで習得してしまったものだ。
お陰でパルクール系の動きがやたらと上達してしまった。
……まあ結果的にこうやって役立ってるから良いんだけど。
普通の日常を歩むつもりなら絶対要らないだろうスキルだ。
「大体、廊下に居たとはいえ貴方だって根尾が……あの男の方が悪質だっていう話は聞こえてたんじゃないの?」
「瑠璃に言わレタ。護衛対象は駄目なヤツが多イ。だから逮捕する可能性高イ。だからといって獣を逃がす道理も無イ。ワタシ、それわかりやすかッタ。わかルナ?」
「……二兎を追う者は一兎をも得ず、みたいなことわざ、そっちの国には無いのかしら」
「逐鹿者 不見山。利益に夢中になると道理見えナイ。だが勿以善小而不為という言葉もあルゾ。小さな善だからとやらナイ、よくないという意味ダ」
「あらまあ。確かに曲がりなりにも悪党の行いをしてる私は逃がしてもらえないわね、ソレ」
空き缶が捨てられているのを見て、小さい事だから別に良いや、と見逃すのは良くないという意味だろう。
そういう事を重ねる事で大きな善になるし、それらを見逃せばよくない事が重ねられると同じ事なのだから。
「わかったナラ、とっとと捕マレ!」
「だからってはいそうですかとは言えないのよねえ」
流石に女性相手に全力を出す気は無いらしく、直前で動きを止めるか威力を抑える為なのか、動きには微妙な鈍りがある。
仮面を弾く狙いで繰り出されたのだろう掌底をしゃがんで避け、一歩踏み込んで陳霞の眼前へと近付く。
この距離ならワンプッシュで眠らせる事も出来るだろうか。
「! ワ、ゥ、ナァッ!?」
「あら?」
そう思ったら、陳霞は一瞬で顔を真っ赤に染めて慌てたようにその無表情を崩し、後方へと下がる。
……ああ、成る程、手加減とかじゃなく……。
「貴方、女慣れしてないのねえ……」
「ウルサイ! 黙レ! お前に対して照れテル、違ウ!」
「はぁん」
私に対して照れているわけじゃない、というのは本心かどうかわからないが、私は成る程と頷いて上半身を屈め、胸の谷間を指先でなぞる。
「つ、ま、り、この体に照れてるってわけ?」
「痴女かお前ハ!」
「年取ってからやらかす方がアウトじゃない。こうやって肌を露出するなんて、若い内しか出来ない特権よ? 腕も足も胸も腹も、出せる時に出しておかなきゃ」
「グ、ゥ……!」
ギ、と陳霞は顔を真っ赤にさせながら歯噛みした。
「……面倒臭イ! とにかく捕まエル! 良イナ!?」
「よくないわよ」
ニィ、と私は口角を吊り上げる。
「特に、それは薊にとっても良くないんじゃないかしらーぁ」
「ハ」
虚を突かれたように、陳霞は停止した。
先程までの赤面も敵意も無く、迷子になって困っている子供のような表情で。
「……何故、お前がその名を知っテル?」
「私、彼女とお友達なのよ」
本人だけど。
「私が捕まった、なんて知ったらあの子は悲しむんじゃないかしら。それも貴方が捕まえて、だものねえ」
「う、ぐ、ゥウ……」
陳霞は困ったように眉を下げて唸る。
いや、普通に捕まえて安心させるべきだろうが、くらい言われる気でいたのだが、思ったよりも純情だったらしい。
まさかこんな稚拙な誤魔化しが通じるとは。
「い、イヤ、それデモ……!」
「私を攻撃して傷物にでもする? その場合、責任を取ってもらわないといけないわねえ。そうなると貴方の伴侶は前科がある女になるし、薊を嫁に貰う事は叶わないんじゃないかしら。ああ、どころか女を傷物にした男ってレッテル張られちゃうかも?」
「っ!」
陳霞は本気の泣きそうな顔で停止した。
嘘だろそこまでの好意だったのか。
……いや、流石にある程度の好意を持たれてるのはわかってたけど……。
雷那相手に一歩も引かなかったのは単純に負けず嫌いな部分によるものかと思っていたのだが、そういうわけでもなく本気でそういう好意だったらしい。
もしかしなくとも最初に私の顔を見て停止した後に慌てて目を伏せていたのは、本気で一目惚れ的なアレソレだったとでもいうのか。
……んー。
「えい」
「ウガッ!?」
ワンプッシュにより倒れ伏して寝息を立て始めた陳霞を見下ろし、うん、と頷く。
……まあだからといって現状色々やる事あるし、ソレを知ったところで私が何か態度を変えるわけでも無いものね!
冷たい悪女みたいな発想と思考だけれど、そこはもう仕方がない事なので。
庇護対象への愛はわかるけれど、恋愛感情は恋バナを楽しめる程度しかわからず、現状初恋すらもまだという惨状。
逃げる手段や躱す手段は多い方が良い、と割り切ろう。




