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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第18話 原光の止まる場所

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(四)月が変えた流れ

◆ 埋められた場所


 日が沈む直前、ネアが地図の端を見た。


「この線は、誰が引きましたか」


 隊長がのぞき込む。


「発掘前の地形です。今は削られてなくなっています」


 窪地の北側に、細長い高まりが描かれていた。

 古い記録では、小さな丘だったらしい。

 発掘を進める際、土と岩を取り除き、平らな道へ変えられている。


「その下を調べたいです」


 一行は、発掘路となった場所へ向かった。

 ネアが再び原光を広げる。

 東と西から来ていた流れが、岩盤に押されるように集まっていく。

 丘があった場所の下で、一つになる。

 その先は窪地へ続いていた。


「一本だ」


 シアが言った。


「ええ」


 ネアは目を閉じたまま頷く。


「ここを通る流れが、窪地へ入る原光の中心です」

「止められるか」

「現在の状態では、流れが広がっています」

「丘が削られたからか」

「おそらく」


 ネアは足元へ手を向けた。


「以前は、もっと狭い範囲を通っていたのでしょう」

「丘を戻せばいいのか」


 隊長が尋ねる。


「同じものを作る必要はありません。原光を通しにくい土と岩を集め、流れを一か所へ寄せられれば十分です」

「兵士と術士を使えばできる」


 隊長はすぐに伝令を呼んだ。


◆ 古い制御の痕跡


 兵士たちが土と岩を運び始める間、セトたちは窪地の手前を調べた。

 一本へ集まった原光は、そのまま兵器へ入っているわけではない。

 窪地へ達する直前で、不自然に向きを変えていた。


「曲げられている?」


 セトが尋ねた。


「そう見えます」

「兵器が吸っているからではないのか」

「それだけではありません」


 ネアは地面へ手を触れた。


「古い制御の痕跡があります」

「誰のものだ」

「分かりません。ただ、兵器が作った流れではありません」


 シアが周囲を見回す。


「月の力か」

「似ています」

「ネアがやったのか」

「わたしではありません」


 ネアはきっぱりと答えた。


「この兵器が埋められた時代に、わたしはここへ来ていません」

「なら、昔の月の精霊王だ」

「可能性は高いですね」


 ネアより前にも、月の精霊王は存在した。

 役割と知識は受け継がれる。

 だが、誰と戦い、どこで何をしたかという個人の記憶までは残らない。


「過去の月の精霊王が、原光の流れを変えた」


 セトが言う。


「ええ」

「兵器へ入る原光を止めるためか」

「そう考えるのが自然でしょう」


◆ 流れを止めたあと


 シアは窪地の方角を見た。


「月の精霊王が原光を止めた」

「おそらく」

「それだけで兵器を壊せるのか」

「止めるだけでは破壊できません」

「なら、ほかにもいた」


 ネアがシアを見る。


「何がですか」

「戦った精霊王だ」


 シアは地面へしゃがみ、原光の流れが集まる場所へ手を置いた。


「月の精霊王が流れを止める。そのあとに、ほかの精霊王が兵器を攻撃した」

「可能性はあります」

「外殻を壊して、中枢まで届かせるなら、強い攻撃が必要だ」


 これまで倒した古代兵器も、外殻を破壊しただけでは止まらなかった。

 再生を妨げながら、中枢へ攻撃を届かせなければならない。

 この大型兵器も、基本的な構造が同じなら、必要になる役割も大きくは変わらない。


「イフリートか」


 セトが尋ねた。


「ああ」


 シアは頷く。


「火なら、外殻を焼いて壊せる」

「ほかには?」

「雷だ」

「雷の精霊王?」

「一点を突破する力が強い。硬いものを抜くなら、火より向いていることもある」

「月が流れを止め、火と雷が攻撃した」


 セトが整理する。


「そうだったかもしれない」


 シアは地面の下にある巨大兵器を見つめた。


「それでも、中枢は残っている」


 なぜ破壊できなかったのか。

 なぜ兵器は地中へ埋められたのか。

 そこまでは分からなかった。

 過去の精霊王たちが押し切れなかったのか。

 攻撃が中枢まで届かなかったのか。

 あるいは、別の理由があったのか。

 残っているのは、原光の流れを変えた痕跡と、破壊されていない兵器だけだった。



※第18話「原光の止まる場所」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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