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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第18話 原光の止まる場所

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(二)なぜ埋まっていた

◆ 届かない中枢


 術士たちが、地面の亀裂へ探査の精霊術を流した。

 土の中を進んだ力は、兵器へ触れたところで吸収される。

 反響が返らない。

 どこまで外殻が続き、どこから地面へ変わるのかも分からなかった。


「掘ることもできないのか」


 セトが尋ねる。


「掘ること自体はできます」


 調査を担当していた術士が答えた。


「ただ、兵器へ触れれば、掘削へ使った精霊力を吸われます。人の手だけで掘るには、範囲が広すぎます」

「火で土を飛ばす」


 シアが言う。


「兵器まで攻撃することになります」

「それが目的だ」

「中枢の位置が分からないまま外殻を刺激すれば、起動が早まる可能性があります」


 ネアが止めた。


「なら、起動してから倒すしかない」


 シアは兵器が埋まっている窪地を見渡した。


「これまでより大きいだけだ」

「その大きさが問題なのです」

「大きければ当てやすい」

「倒しにくくもあります」

「やることは同じだ」

「同じことをしても、中枢まで届きません」


 二人の視線がぶつかる。

 セトは再び亀裂の奥を見た。


「今までとは違う方法が必要だ」


 シアは不満そうに息を吐いたが、否定はしなかった。


◆ なぜ埋まっていた


 その日の調査では、中枢の位置も、兵器の正確な形も分からなかった。

 兵士たちは窪地から離れた場所へ野営地を移した。

 兵器が地上へ出た時、巻き込まれないだけの距離を取るためだった。

 夜になっても、地面の奥から低い振動が続いている。

 シアは焚き火の前に座り、窪地の方角を見ていた。


「どうした」


 セトが隣へ座る。


「考えている」

「珍しいな」

「わたしも考える」

「知っている」


 シアはセトを見る。


「今、少し間があった」

「気のせいだ」


 シアは焚き火へ小枝を投げた。


「こいつらは、なぜ埋まっていたんだ」

「古代の兵器だからだろ」

「そうではない」


 炎が小枝を包み込む。


「兵器は勝手に土の中へ入らない。誰かが埋めた」

「使わなくなって捨てたんじゃないのか」

「それなら中枢を壊す。動かなくしてから捨てればいい」


 古代兵器を作った者たちが、何を考えていたのかは分からない。

 だが、原光を吸えば再び動く兵器を、そのまま地中へ残す理由はない。


「故障していた可能性は?」

「故障したものが、今は動こうとしている」

「直ったのかもしれない」

「土の中でか?」


 シアは首を横へ振った。


「誰かが、動くものを無理に埋めたんじゃないか」


◆ 過去の精霊王たち


 ネアは、二人の会話を少し離れた場所で聞いていた。


「誰かというのは、精霊王ですか」


 そう言いながら、焚き火の近くへ来る。


「人間だけで、あれを埋められるか」


 シアが尋ねた。


「現在の兵士と術士だけでは難しいでしょうね」

「昔の人間なら」

「今より強い精霊術を扱う者がいた可能性はあります。ただ、それでも人間だけとは考えにくいです」

「なら、精霊王も戦った」

「そうかもしれません」

「勝ったのか?」


 ネアは答えなかった。

 シアも、すぐには続けない。

 地面の奥から振動が伝わってきた。

 焚き火の炎がわずかに揺れる。


「勝ったなら、なぜ中枢を残した」


 シアが言う。


「破壊する余裕がなかったのかもしれません」

「負けたなら、どうやって埋めた」

「戦いながら封じたのでしょう」

「倒せなかったから埋めた?」

「可能性はあります」


 セトは窪地の方角へ目を向けた。

 これまでの兵器は、二本の精霊剣と国軍を合わせれば破壊できた。

 最後の一体だけが、はるかに大きい。

 過去の精霊王たちも、同じ兵器を前にして止まったのかもしれない。

 ただ、今の時点では、何が起きたのかを判断する材料が足りなかった。


◆ 王都への脅し


 シアは何かを思い出したように、ネアを見た。


「昨日、お前は王都への原光を止めると言ったな」

「言いましたね」

「本当にできるのか」

「できないことを、脅しには使いません」

「どうやって止める」

「周囲から王都へ流れ込む原光を偏向します」

「全部を?」

「完全に止める必要はありません。入る量より使われる量を多くすれば、いずれ不足します」

「それでは時間がかかる」

「急ぐのであれば、流れの中心を遮断します」


 シアの目が細くなる。


「流れの中心?」

「原光にも流れがあります」

「それは、火や風へ変わる前の話か」

「ええ」

「そんな知識はない」

「イフリートに必要な知識ではなかったのでしょう」

「精霊王なのにか」

「すべての精霊王が、原光のすべてを知っているわけではありません」


 ネアは焚き火へ手をかざした。

 炎の周囲にある原光を、指先でわずかに曲げる。

 火が横へ揺れた。


「原光は、どこにでも同じ量があるわけではありません。集まりやすい場所と、通りやすい場所があります」

「川みたいなものか」

「かなり簡単に言えば」

「なら、その川を止めればいい」

「一つではありません」



※第18話「原光の止まる場所」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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