(六)今は、まだ
◆ 王都への脅し
「脅しているのか」
「ええ」
「王都に何人いると思っている」
「知っています」
「本気で止めるつもりか」
「必要であれば」
高官はネアを見た。
ネアは視線をそらさない。
虚勢ではない。
少なくとも、高官にはそう見えた。
「国軍は、今夜の出撃を見送る」
高官が言った。
「日の出まで、次の兵器を足止めさせる」
「そうしてください」
「明朝には戦えるのだろうな」
「セトが回復していれば」
「また条件を付けるのか」
「最初から同じ条件です」
高官はそれ以上何も言わず、護衛を連れて離れた。
その背中が見えなくなってから、セトが口を開く。
「王都まで止めるな」
「必要なら止めます」
ネアが答えた。
「必要じゃない」
「それは、相手が決めます」
「国よりセトの方が大事だ」
シアが言う。
「比べるな」
「比べるように言われたから答えた」
セトは何か言い返そうとした。
シアが先に天幕を指す。
「寝ろ」
「まだ話は終わっていない」
「わたしたちは終わった」
「勝手に決めるな」
「起きているなら運ぶ」
シアがセトへ手を伸ばした。
セトは自分で天幕へ向かった。
◆ 翌朝
夜の間、谷へ誘導された古代兵器は、国軍が足止めした。
岩を落とす。
進路を土壁で塞ぐ。
遠くから攻撃を加え、村のない方向へ向かせる。
倒そうとはしない。
朝まで近づけさせないことだけに集中した。
日の出とともに、セトたちは谷へ向かった。
前日より、セトの足取りは軽い。
疲れがすべて消えたわけではない。
それでも、極炎を核の位置へ正確に振り下ろせる。
絶光を放った後も、自分の足で立っていられた。
大砲と投石術が核を砕く。
古代兵器は短時間で停止した。
「昨日の夜に戦うより早かったな」
隊長が言った。
「昨日でも倒せた」
セトが答える。
「倒した後、お前が動けなくなっていただろう」
「今日はまだ動ける」
「なら次へ行くぞ」
高官は離れた場所から戦いを見ていた。
今度は、すぐ次へ向かえとは言わなかった。
ネアと一度目が合う。
高官の方が先に視線をそらした。
◆ 一体ごとの休息
それ以降、一体を倒した後には必ず休息を入れた。
大砲を移動させる時間。
砲弾を運ぶ時間。
次の地形を整える時間。
それらすべてを、セトたちの休息にも使った。
早く倒そうとして無理に二体を相手にするより、一体ずつ確実に処理する方が、結果として多く倒せた。
四日目。
朝に一体。
夕方に一体。
五日目。
昼までに一体を破壊した。
その日の夕方、地上へ出ていた最後の古代兵器が、大砲の正面へ誘導された。
兵士たちの動きに、初日の迷いはない。
術士たちは必要な距離を取り、すでに岩を浮かせている。
砲兵は装甲が開く位置を予測し、砲身をわずかに右へ向けていた。
シアが剣となる。
赤白い炎が装甲を裂く。
核が露出する。
シアが人の姿へ戻る。
入れ替わるようにネアが剣となった。
「絶光!」
周囲一帯の原光が途切れる。
装甲の再生が止まり、核の防御壁が消えた。
「撃て!」
大砲が火を噴く。
高台から岩が飛ぶ。
砲弾が核の表面を割り、続く岩が亀裂を押し広げた。
最後の砲弾が中心へ入る。
核の光が消えた。
古代兵器が地面へ倒れる。
◆ 残る一体
しばらく、誰も動かなかった。
兵器が再生しないことを確かめてから、兵士たちが武器を下ろす。
「終わったか」
隊長が尋ねた。
ネアは周囲へ意識を広げた。
各地へ伸びていた原光の流れは、ほとんど消えている。
地上へ向かって動く兵器の反応もない。
だが、すべてではなかった。
「まだ一つ残っています」
「どこだ」
「地下です」
「動いているのか」
「いいえ」
ネアは遠くの地面へ目を向けた。
「今は、まだ」
通常の古代兵器を相手にした、数日間の殲滅戦は終わった。
それでも、世界から原光を奪う流れは、完全には消えていなかった。
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