↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第17話 数日間の殲滅戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
94/219

(五)国よりセト

◆ 一体だけ


 ネアは、すぐには答えなかった。

 古代兵器が動いている限り、世界から原光が失われ続ける。

 一日遅れれば、その分だけ森や川が力を失う。

 精霊術を使えなくなる土地も広がる。


「それでも、セトが動けなくなれば、残る兵器を倒せません」

「今日二体倒せば、残りは減る」

「今日二体を倒して、明日一体も倒せなくなる可能性があります」

「そこまで疲れていない」

「判断するのはセトではありません」

「俺の体だぞ」

「だからです」

「どういう意味だ」

「自分の体であるため、動く限り使おうとするという意味です」


 シアが頷く。


「セトは壊れるまで使う」

「壊れない」

「壊れてからでは遅い」


 結局、その日に倒したのは一体だけだった。

 戦いを終えた後も、セトは歩けた。

 だが、次の兵器へ向かう途中で、荷車から下りようとして足を滑らせた。

 地面へ落ちる前にシアが支える。


「道が悪い」


 セトが言った。


「荷車から下りるだけだ」

「車輪が石を踏んだ」

「止まっていた」

「なら石が悪い」

「今日は終わりだ」


 シアはセトを荷車へ戻した。

 ネアも反対側へ座り、逃げられないようにしている。

 セトは諦めて背を預けた。


◆ 来ない精霊王


 夕暮れの空には、古代兵器へ向かう原光の筋がいくつも見えた。

 ネアは、その流れを眺めながら、ふと疑問を覚えた。

 ここにいる精霊王は、火と月だけだった。

 世界規模で原光が吸われている。

 本来なら、ほかの精霊王が異変に気づいてもおかしくない。

 何人かが集まってきても、不思議ではなかった。

 だが、誰も来ない。

 ネアは一度だけ、遠くへ意識を向けた。

 それらしい気配は感じられない。

 ほかの国でも、何かが起きているのかもしれない。

 原光が減ったことで、それぞれの土地に異変が生じている。

 精霊王たちも、自分の役割から離れられないのだろう。

 そう考えれば、ここへ来ていないことも、それほど不自然ではない。

 今は目の前の兵器を止める方が先だった。

 ネアは、それ以上深く考えなかった。


◆ 王都から来た者


 三日目の夜、王都から高官が来た。

 数人の護衛を連れ、兵士たちの野営地へ入ってくる。

 古代兵器の近くへ来たのは初めてらしい。

 衣服にも靴にも、ほとんど汚れがなかった。

 高官は隊長から報告を受けると、休んでいるセトたちの前へ来た。


「次の兵器を、今夜中に破壊してもらいたい」

「無理だ」


 シアが答えた。


「まだ、お前には聞いていない」

「誰に聞いても同じだ」


 高官はセトを見る。


「戦えるか」

「一体なら」


 セトが答える。


「なら、すぐに出てもらいたい」

「駄目です」


 ネアが言った。


「本人は戦えると言っている」

「セトの判断は採用しません」

「なぜだ」

「疲労によって、正しく判断できていないからです」

「歩いているように見える」

「精霊剣を扱えるかどうかは、歩けるかどうかでは決まりません」


 高官はセトへ視線を戻す。


「各地で被害が広がっている。精霊術が使えず、水をくみ上げられない村もある。作物も枯れ始めた。一晩待てば、その被害はさらに増える」

「分かっている」


 セトが立ち上がろうとする。

 シアが肩を押さえた。


「行かない」

「シア」

「今日は行かせない」


◆ 国よりセト


 高官の表情が硬くなる。


「国全体の被害より、一人の休息を優先するのか」

「ああ」


 シアは迷わなかった。


「セトを壊してまで、この国を守るつもりはない」

「この国がどうなってもよいと?」

「セトより大事ではない」


 周囲にいた兵士たちが息を止める。

 高官はネアを見る。


「月の精霊王も同じ考えか」

「ええ」

「あなた方が戦わなければ、国軍だけでも次の兵器を止める」

「倒せません」

「それでも出撃させる」

「兵士たちを戦わせれば、セトが見捨てられないと考えていますか」


 高官は答えなかった。

 ネアの羽衣が、わずかに持ち上がった。

 周囲を流れていた原光が揺れる。


「兵士たちを使ってセトを戦わせるのであれば、王都へ流れる原光を止めます」


 静かな声だった。

 それでも、周囲の誰にも聞き間違える余地はなかった。



※第17話「数日間の殲滅戦」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。