(三)二体まで
◆ 二体の起動
北東の兵器を誘導している途中で、西の林が持ち上がった。
地面へ亀裂が走る。
木々が根から傾き、その隙間から金属の装甲が現れた。
「もう一体だ!」
見張りの兵士が叫ぶ。
北東から来る兵器は、すでに街道の先まで迫っている。
西の兵器との距離は遠くない。
二体が同じ場所へ集まれば、大砲を撃つ前に陣形を崩される。
「西の方を埋め直せ!」
隊長が命じる。
術士たちが林へ向かって岩を落とす。
地面から半分ほど現れていた兵器が、崩れた岩に埋まる。
だが、その上部が開いた。
白い光が、積み重なった岩を内側から貫く。
砕けた石が林へ降り注いだ。
古代兵器が土を押しのけ、完全に地上へ出る。
「二体を倒せるか」
隊長が尋ねた。
「同時には無理だ」
セトが答える。
「なら、片方を引き離す」
シアとネアが、同時に手を差し出した。
セトは二人の手を取る。
「シア」
右手へ赤橙色の光が集まる。
極炎。
「ネア」
左手へ黒に近い光が集まる。
絶光。
二本の精霊剣から流れ込む力が、セトの全身で重なった。
◆ 二本で止める
北東の兵器が、脚を振り上げる。
セトは極炎で受け流し、そのまま装甲の継ぎ目を斬る。
一枚を裂く。
すぐに原光が集まり、傷が埋まり始める。
倒すためではない。
足を止め、こちらへ向かせるための攻撃だった。
『西から砲撃が来ます』
ネアの声がする。
林を出た兵器の砲口が光った。
セトは絶光を横へ振る。
放たれた光の側面へ、黒い刀身を当てた。
砲撃が曲がる。
二体の間にある地面へ突き刺さり、土と岩を吹き上げた。
「西の兵器を北へ誘導しろ!」
隊長が叫ぶ。
「術士は左から攻撃! 北へ下がれ!」
術士たちが、西の兵器へ火と風を放つ。
攻撃を受けた兵器が、術士たちへ向きを変えた。
術士は森の外へ下がる。
兵器が追う。
北東の兵器が、逃げる術士へ向きを変えようとした。
セトは極炎で脚を斬りつける。
兵器の動きが止まり、再びセトへ向いた。
二本を持てば、二体の攻撃へ同時に対応できる。
極炎で一体を止める。
絶光でもう一体の砲撃をそらす。
だが、それだけだった。
一方の装甲を開けば、もう一方が兵士と大砲を攻撃する。
周囲一帯の原光を断てば、味方の術士も動けなくなる。
さらに、二人分の力を同時に受け続けるセトの体にも限界があった。
◆ 二体まで
腕が重い。
足へ力を流すまで、わずかな遅れが出始める。
『西の兵器が離れました』
ネアが言った。
「どれくらいだ」
『ここからは見えません』
「なら、こちらを倒す」
セトは北東の兵器から距離を取った。
「二人とも戻れ」
『なぜだ』
シアが尋ねる。
「このままでは大きな技を使えない」
二本の精霊剣が、それぞれ光へ変わった。
シアとネアが人の姿へ戻る。
セトは一度膝へ手をつき、息を整えた。
それから、改めてシアの手を取る。
一体ずつなら、決まった手順で倒せる。
二体までなら、一体を止めながら、もう一体を引き離せる。
それ以上は相手にできない。
そして、二体を相手にできる時間も長くはなかった。
※第17話「数日間の殲滅戦」は全六回です。
続きます。
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