(二)人間が核を砕く
◆ 人間が核を砕く
『今です』
ネアの声と同時に、隊長が腕を振り下ろした。
「全門、撃て!」
大砲が一斉に火を噴いた。
砲弾が露出した核へ向かう。
高台からは、術士たちが岩を放った。
岩は絶光の範囲へ入った瞬間、術による加速を失う。
だが、それまでに得た速度までは消えない。
砲弾と岩が、ほぼ同時に核へ直撃した。
球状の表面へ亀裂が走る。
二発目が亀裂へ食い込んだ。
続けて大きな岩が当たり、核の一部を砕く。
内部から漏れた光が弱くなる。
「もう一度だ!」
隊長が叫ぶ。
次の砲弾が放たれた。
核の中心を打ち抜く。
亀裂が全体へ広がり、球状の核が複数の破片へ分かれた。
古代兵器の脚から力が抜ける。
巨体が前へ傾き、地面へ倒れた。
絶光が光へ変わる。
人の姿へ戻ったネアを、セトが支えた。
「止まったか」
隊長が尋ねる。
「核は壊れています」
倒れた古代兵器へ原光は集まらない。
切られた装甲も戻らなかった。
「これでいけるな」
セトは倒れた兵器と、並べられた大砲を見る。
シアが装甲を開く。
ネアが周囲一帯の原光を断つ。
防御を失った核を、王国の大砲と術士が破壊する。
二体目のように、最後まで三人だけで壊す必要はない。
「ああ」
これが、残る古代兵器を倒すための手順となった。
◆ 一体ずつ
古代兵器は、同じ場所から現れるわけではなかった。
発掘坑の奥。
山の斜面。
何年も使われていない採石場。
畑の下。
原光を吸い始めた兵器が、岩や土を押しのけて地上へ向かっていた。
ネアが原光の流れを追い、兵器の位置を探す。
近くにある町や村から、住民を避難させる。
先行した兵士が地形を調べ、誘導する道を決める。
土壁を作る。
岩を崩す。
大砲を運ぶ。
術士たちは投石に使える岩を集める。
一体を倒せば、次の場所へ移動した。
どの兵器も、倒し方は同じだった。
ただし、場所が違えば準備に時間がかかる。
街道を外れた山中では、大砲の車輪が泥へ沈んだ。
兵士たちは馬だけに任せず、綱を引いて坂を上る。
川の近くでは、兵器が水辺へ向かわないよう、術士たちが土を盛って進路を変えた。
畑から現れた兵器は、周囲に遮るものがない。
遠くから攻撃を加え、何度も向きを変えさせながら大砲の正面へ誘い込んだ。
「次は北東です」
ネアが地図の一点を指した。
「ここから半日かかるぞ」
隊長が言った。
「すでに地上へ向かっています」
「近くの部隊だけで止められるか」
「倒すことはできません」
「分かっている。こちらが着くまで、街道から外せればいい」
隊長は伝令を呼んだ。
「北東の部隊へ伝えろ。正面から戦うな。森の側から攻撃して、岩場へ向かわせろ」
「はい!」
「大砲も動かすぞ!」
◆ 移動中の休息
兵士たちが大砲の車輪へ綱を結ぶ。
セトも、その一本を取ろうとした。
隊長が先に綱を奪う。
「お前は荷車に乗れ」
「これくらいならできる」
「次に剣を持つのは誰だ」
「俺だ」
「なら、腕を休めろ」
「兵士は歩いている」
「兵士は精霊剣を二本も使わん」
「続けて使っているだけだ」
「それを二本使っていると言う」
セトは綱へ手を伸ばした。
今度はネアに手首をつかまれる。
「乗ってください」
「ネアまで」
「セトの代わりはいません」
「大砲を引く兵士の代わりもいないだろ」
「兵士は交代できます」
「俺も休めばいい」
「ですから、今休むのです」
後ろからシアがセトの背中を押した。
「乗れ」
「押すな」
「自分で乗らないからだ」
セトは二人に押され、砲弾を積んだ荷車の端へ座った。
兵士たちは何も言わなかった。
自分たちが歩くことより、核までの道を開く者が休むことの方が重要だと理解していた。
荷車が動き始める。
道は平らではない。
車輪が石を踏むたび、荷台が大きく揺れた。
「これで眠れると思うか」
「目を閉じるだけでも違います」
ネアが答える。
「揺らさなければいい」
シアが荷車を見る。
「持ち上げるか」
「やめろ」
「少し浮かせるだけだ」
「馬が驚く」
「ならセトだけ持つ」
「もっとやめろ」
シアなら本当に抱えたまま歩きかねない。
セトは荷車の縁へ背を預け、目を閉じた。
※第17話「数日間の殲滅戦」は全六回です。
続きます。
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