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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第16話 二つの極大技

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(三)極大技・絶光

◆ 極大技・絶光


 古代兵器の砲口が白く輝いた。

 周囲から集めた原光が、今にも放たれようとしている。


『呼んでください』


 ネアが言った。


「戻れるな」

『戻ります』

「必ずだ」

『ええ』


 セトは左手の精霊剣・絶光を地面へ向けた。

 精霊剣を呼ぶためではない。

 その剣に秘められた全力を解き放つために、技の名を呼ぶ。


「絶光!」


 極大技・絶光。

 音のない波が、精霊剣・絶光から周囲へ広がった。

 光はなかった。

 風も起こらない。

 それでも、世界の何かが途切れた。

 古代兵器の砲口へ集まっていた原光が消える。

 空から落ちていた流れ。

 大地を通っていた流れ。

 森や水から引かれていた流れ。

 すべてが、古代兵器を中心とした広い範囲で完全に断たれた。

 術士たちが、自分の手を見る。

 精霊術を使おうとしても、周囲から原光が集まらない。

 古代兵器の砲口から光が失われる。

 装甲の隙間で脈打っていた原光も弱くなった。

 発掘坑の奥で動いていた光まで、一時的に消えている。


「全部、止まった」


 隊長が呟いた。

 精霊剣・絶光の銀色の縁が薄くなる。


『戻りました』


 ネアの声が聞こえた。

 弱い。

 だが、意識は残っている。


「ネア」

『聞こえています』

「次へ行くぞ」

『ええ』


 完全に断たれた原光は、すぐには元へ戻らない。

 空にも。

 大地にも。

 古代兵器の周囲には、流れが一つもなかった。


『今度はわたしだ』


 シアが言った。


◆ 極大技・極炎


 セトは右手の精霊剣・極炎を上段へ構えた。

 古代兵器はまだ動いている。

 兵器の内部に残されていた力までは、極大技・絶光でも消していない。

 複数の脚が、セトへ向かって振られる。

 セトは地面を蹴った。

 二人の精霊王から流れ込む力によって、古代兵器の脚を越える。

 古代兵器の正面。

 核がある位置を見据える。


『中央より少し下だ』


 シアが言った。


『前の兵器と同じ位置です』


 ネアも答える。


「装甲ごと斬る」

『全部使え』

「ああ」


 精霊剣・極炎へ、シアの力が集まり始めた。

 刀身を包む炎が、赤から白へ変わる。

 炎は長く伸び、古代兵器の全高を越えた。

 セトは技の名を呼ぶ。

 剣を呼ぶための名ではない。

 精霊剣・極炎に集めた全力を、一撃として放つための名。


「極炎!」


 極大技・極炎。

 赤白い炎が振り下ろされた。

 古代兵器の上部へ入る。

 一枚目の装甲を切る。

 二枚目。

 内部の骨組み。

 原光を運ぶ管。

 すべてを焼き切りながら、炎の刃が下へ進む。

 古代兵器の中央へ、一本の線が走った。

 通常なら、途中で装甲の再生が始まる。

 新しい部品が炎の進路へ入り、極大技・極炎の力を削る。

 今は違う。

 極大技・絶光によって原光の供給が完全に断たれている。

 切られた装甲は戻らない。

 破壊された骨組みも作り直されない。

 赤白い炎は止まることなく、機体の下部まで斬り抜けた。

 古代兵器の巨体が左右へ分かれる。

 上部から脚の付け根まで。

 機体は完全に真っ二つになった。


「やった!」


 兵士の一人が声を上げる。

 だが、二つに分かれた機体は倒れなかった。

 中央に、球状の核が残っている。

 極大技・極炎は、核がある位置まで届いていた。

 しかし、核を覆う防御壁が赤白い炎を左右へそらしている。

 機体の上と下は斬れている。

 核の周囲だけが、防御壁に守られたまま残っていた。


『防御壁が残った』


 シアが言った。


『原光の供給を止めても、すでに作られていた壁は消えません』


 ネアが答える。

 外からの原光は完全に断たれている。

 防御壁を新しく作り直すことはできない。

 それでも、極大技・絶光を放つ前から存在していた防御壁には、核を守りきるだけの力が残っていた。


「なら、残った壁を壊す」


 セトが核へ向かおうとする。

 右手の精霊剣・極炎が揺れた。

 左手の精霊剣・絶光も、形を保てなくなっている。


『もう剣ではいられない』


 シアが言った。


『わたしもです』


 二本の精霊剣が光へ変わる。

 赤橙色の光がシアの姿を作る。

 黒に近い光がネアの姿へ戻る。

 二人は地面へ降り立った。

 立つことはできている。

 だが、すぐにもう一度精霊剣になれる状態ではない。


「ここにいろ」


 セトが言った。


「一人で行くのか」


 シアが尋ねる。


「核は見えている」


 セトは両手を開く。

 右手に白い刀身。

 左手に黒い刀身。

 白刃と黒刃が伸びた。


「これで壊す」



※第16話「二つの極大技」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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