(三)極大技・絶光
◆ 極大技・絶光
古代兵器の砲口が白く輝いた。
周囲から集めた原光が、今にも放たれようとしている。
『呼んでください』
ネアが言った。
「戻れるな」
『戻ります』
「必ずだ」
『ええ』
セトは左手の精霊剣・絶光を地面へ向けた。
精霊剣を呼ぶためではない。
その剣に秘められた全力を解き放つために、技の名を呼ぶ。
「絶光!」
極大技・絶光。
音のない波が、精霊剣・絶光から周囲へ広がった。
光はなかった。
風も起こらない。
それでも、世界の何かが途切れた。
古代兵器の砲口へ集まっていた原光が消える。
空から落ちていた流れ。
大地を通っていた流れ。
森や水から引かれていた流れ。
すべてが、古代兵器を中心とした広い範囲で完全に断たれた。
術士たちが、自分の手を見る。
精霊術を使おうとしても、周囲から原光が集まらない。
古代兵器の砲口から光が失われる。
装甲の隙間で脈打っていた原光も弱くなった。
発掘坑の奥で動いていた光まで、一時的に消えている。
「全部、止まった」
隊長が呟いた。
精霊剣・絶光の銀色の縁が薄くなる。
『戻りました』
ネアの声が聞こえた。
弱い。
だが、意識は残っている。
「ネア」
『聞こえています』
「次へ行くぞ」
『ええ』
完全に断たれた原光は、すぐには元へ戻らない。
空にも。
大地にも。
古代兵器の周囲には、流れが一つもなかった。
『今度はわたしだ』
シアが言った。
◆ 極大技・極炎
セトは右手の精霊剣・極炎を上段へ構えた。
古代兵器はまだ動いている。
兵器の内部に残されていた力までは、極大技・絶光でも消していない。
複数の脚が、セトへ向かって振られる。
セトは地面を蹴った。
二人の精霊王から流れ込む力によって、古代兵器の脚を越える。
古代兵器の正面。
核がある位置を見据える。
『中央より少し下だ』
シアが言った。
『前の兵器と同じ位置です』
ネアも答える。
「装甲ごと斬る」
『全部使え』
「ああ」
精霊剣・極炎へ、シアの力が集まり始めた。
刀身を包む炎が、赤から白へ変わる。
炎は長く伸び、古代兵器の全高を越えた。
セトは技の名を呼ぶ。
剣を呼ぶための名ではない。
精霊剣・極炎に集めた全力を、一撃として放つための名。
「極炎!」
極大技・極炎。
赤白い炎が振り下ろされた。
古代兵器の上部へ入る。
一枚目の装甲を切る。
二枚目。
内部の骨組み。
原光を運ぶ管。
すべてを焼き切りながら、炎の刃が下へ進む。
古代兵器の中央へ、一本の線が走った。
通常なら、途中で装甲の再生が始まる。
新しい部品が炎の進路へ入り、極大技・極炎の力を削る。
今は違う。
極大技・絶光によって原光の供給が完全に断たれている。
切られた装甲は戻らない。
破壊された骨組みも作り直されない。
赤白い炎は止まることなく、機体の下部まで斬り抜けた。
古代兵器の巨体が左右へ分かれる。
上部から脚の付け根まで。
機体は完全に真っ二つになった。
「やった!」
兵士の一人が声を上げる。
だが、二つに分かれた機体は倒れなかった。
中央に、球状の核が残っている。
極大技・極炎は、核がある位置まで届いていた。
しかし、核を覆う防御壁が赤白い炎を左右へそらしている。
機体の上と下は斬れている。
核の周囲だけが、防御壁に守られたまま残っていた。
『防御壁が残った』
シアが言った。
『原光の供給を止めても、すでに作られていた壁は消えません』
ネアが答える。
外からの原光は完全に断たれている。
防御壁を新しく作り直すことはできない。
それでも、極大技・絶光を放つ前から存在していた防御壁には、核を守りきるだけの力が残っていた。
「なら、残った壁を壊す」
セトが核へ向かおうとする。
右手の精霊剣・極炎が揺れた。
左手の精霊剣・絶光も、形を保てなくなっている。
『もう剣ではいられない』
シアが言った。
『わたしもです』
二本の精霊剣が光へ変わる。
赤橙色の光がシアの姿を作る。
黒に近い光がネアの姿へ戻る。
二人は地面へ降り立った。
立つことはできている。
だが、すぐにもう一度精霊剣になれる状態ではない。
「ここにいろ」
セトが言った。
「一人で行くのか」
シアが尋ねる。
「核は見えている」
セトは両手を開く。
右手に白い刀身。
左手に黒い刀身。
白刃と黒刃が伸びた。
「これで壊す」
※第16話「二つの極大技」は全六回です。
続きます。
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