(二)絶光という合図
◆ 絶光という合図
「力を出すための合図が必要です」
ネアが言った。
「何と呼べばいい」
「絶光と」
セトが眉を寄せる。
「剣の名前と同じか」
「ええ」
ネアが変じた精霊剣の名は、絶光。
今ネアが求めているのは、精霊剣へ変じるための呼びかけではない。
精霊剣・絶光に秘められた力を、一瞬で解き放つための合図だった。
「精霊剣としての絶光と、今の技は別のものです」
ネアが言った。
「精霊剣・絶光は、わたしが剣となった姿です」
「技の絶光は?」
「精霊剣・絶光が持つ力を、一瞬だけ最大まで解放する極大技です」
「同じ名前なのか」
「シアも同じでしょう」
ネアがシアを見る。
「剣の名は極炎」
シアが答える。
「剣の力を一撃へ集める極大技の名も極炎だ」
精霊剣・極炎。
それはシアが剣となった姿。
極大技・極炎。
それは精霊剣・極炎へ集めた力を、一撃として放つ技。
絶光も同じだった。
精霊剣・絶光はネアが剣となった姿。
極大技・絶光は、精霊剣・絶光の力を一瞬だけ完全に解放する技。
「呼ばれた時に、どちらか分かるのか」
セトが尋ねる。
「剣になっていない時に、技は使えません」
ネアが答える。
「精霊剣になった後、セトが何を求めて呼んだかは分かるはずです」
「はず?」
「初めてですから」
「またか」
「それでも、するしかありません」
「絶光で原光を止める」
セトが言った。
「その間に、極炎で古代兵器を斬る」
「核ごと斬る」
シアが付け加える。
ネアが頷く。
「極大技・絶光によって、装甲の再生へ使われる原光も完全に止まります」
「その間なら、極大技・極炎で一気に核まで斬れる?」
「可能なはずです」
「また、はずか」
「一体目では、再生する装甲に力を奪われました」
ネアは倒れた古代兵器を見る。
「再生が完全に止まっていれば、同じことにはなりません」
「なら、真っ二つにする」
シアが言った。
「装甲も核も全部だ」
「核の防御壁が残る可能性はあります」
「それも炎で壊す」
「できればよいのですが」
◆ 目覚める兵器
一行が発掘現場へ着く頃には、二体目の古代兵器が地上へ姿を現し始めていた。
大きく崩れた発掘坑の中から、金属の脚が伸びている。
一体目と同じ形だった。
分厚い装甲。
複数の脚。
上部に備えられた原光の砲口。
だが、周囲の状況は一体目の時より悪い。
発掘坑の奥では、別の光がいくつも動いている。
地面の亀裂からも、淡い原光が漏れていた。
「本当に、ほかにもいるのか」
隊長が尋ねる。
「ええ」
ネアが答える。
「この下にも。さらに奥にも」
地中から、複数の振動が伝わってくる。
一体の兵器が動く音ではない。
遺跡の各所で、異なる何かが岩や土を押している。
追加部隊の兵士たちは、大砲を発掘坑へ向けていた。
砲弾と火薬を運び、いつでも撃てるよう準備している。
「大砲は古代兵器に通じるのか」
セトが隊長へ尋ねた。
「装甲の表面を壊す程度ならな」
「核には?」
「装甲がある限り届かん」
「今回は、俺たちが開く」
「前も同じことを言っていたな」
「今度は一度で開く」
二体目の古代兵器が、土を押しのけて完全に地上へ出た。
脚が地面へ突き刺さる。
上部の装甲が開き、砲口へ原光が集まり始めた。
「兵を散らせ!」
隊長が叫ぶ。
大砲の周囲にいた兵士たちが左右へ離れる。
ネアがセトへ手を差し出した。
「セト」
セトはその手を取る。
「ネア」
黒に近い光が広がった。
ネアの体がほどけ、セトの左手へ集まる。
周囲の光を絶つ、銀色に縁取られた剣。
精霊剣・絶光。
シアもセトの右手を取る。
「シア」
赤橙色の光が集まり、炎の剣となった。
精霊剣・極炎。
右手には極炎。
左手には絶光。
二人の精霊王の力が、セトの全身へ流れ込む。
『砲撃が来ます』
精霊剣・絶光からネアの声がする。
『先に切るか』
精霊剣・極炎からシアの声が届く。
「いや」
セトは二本の剣を構えた。
「最初から全部止める」
※第16話「二つの極大技」は全六回です。
続きます。
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