(八)最後の極炎
◆ 最後の極炎
古代兵器へ向かう原光の流れが戻り始めている。切られた一本がつながる。続けて二本目。
正面装甲の端にも、淡い光が集まり始めた。それでも、前の戦いとは違う。核までの道は開いている。
防御壁も切れている。極炎の前を塞ぐものはない。
「一撃で壊す」
『ああ』
シアの力が極炎へ集まる。赤白い炎が刀身を覆う。兵器の内部が、炎の光に照らされた。
核の表面が脈打つ。切られた防御壁を戻そうと、周囲から精霊力が集まり始める。
『右側から戻ります』
ネアが言った。セトは絶光を振る。防御壁へ向かっていた流れを再び切る。壁の切れ目は閉じない。
「行くぞ!」
セトは極炎を突き出した。赤白い炎が、開いた道を一直線に進む。装甲へ力を奪われない。
骨組みに阻まれない。防御壁にそらされない。極炎の切っ先が、核へ突き刺さった。球状の表面に、大きな亀裂が走る。
『押す!』
シアが力を集める。炎が核の内部へ入る。亀裂が広がった。古代兵器の全身が大きく震える。
核を修復しようと、周囲の原光が一斉に集まり始めた。
『来ます!』
セトは左手の絶光を振った。核へ向かう流れを切る。一本。二本。
三本。切っても、さらに別の流れが来る。絶光を連続して振る。核へ集まる原光が途切れる。
極炎がさらに深く入った。
「壊れろ!」
核の亀裂が全体へ広がる。表面が一つ。二つ。複数の破片へ分かれた。
内部からあふれた光を、絶光が左右へ切り分ける。淡い光が兵器の内部へ散った。核の中心にあった輝きが消える。
古代兵器の音が止まった。
『離れろ!』
シアの声。セトは二本の剣を引き抜き、開いた装甲から外へ飛び出した。直後、古代兵器の巨体が傾く。
脚から力が抜ける。地面へ倒れ、大きな音を響かせた。
◆ 戻らないもの
誰も動かなかった。兵士たちは武器を構えたまま、倒れた古代兵器を見ている。正面の装甲は失われている。
内部の部品も露出している。だが、原光は集まらない。新しい部品も作られない。切断された脚も動かなかった。
セトの右手で、極炎が赤橙色の光へほどける。シアが人の姿へ戻った。左手の絶光も黒に近い光へ変わる。
ネアがセトの隣へ降り立つ。
「止まったのか」
隊長が呟く。
「核はありません」
ネアが答えた。今度は剣の中からではない。隊長にも声が聞こえる。
「原光も集まっていません」
「本当に倒したのか」
「もう戻らない」
シアが言った。
「核を壊したからな」
兵士の一人が、古代兵器の装甲へ石を投げた。硬い音が響く。反応はない。
少しずつ、兵士たちが武器を下ろしていく。誰かが息を吐いた。別の誰かが、その場へ座り込んだ。
声を上げる者はいなかった。喜ぶには、全員が疲れすぎていた。
「一体を倒すのに、これだけ必要なのか」
隊長が言った。極炎。絶光。兵士と術士。
投石機。どれか一つでも欠けていれば、核へ届かなかった。
「俺たちだけでも倒せた」
シアが言った。
「兵士たちが装甲を壊さなければ、もっと時間がかかっていました」
ネアが答える。
「その分、切った原光が戻ったでしょう」
「では、全員で倒した」
シアが言い直す。隊長がわずかに笑った。
「ずいぶん素直だな」
「事実だからな」
セトは倒れた古代兵器を見る。前の戦いでは、何度壊しても戻された。今度は戻らない。
「一本では届かなかった」
セトが言った。
「二本なら届いた」
シアが答える。
「二本だけではありません」
ネアが付け加える。
「分かっている」
「ならよいです」
※第15話「二本目の精霊剣」は全九回です。
続きます。
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