(七)二本の役割
◆ 二本の役割
極炎を横へ振る。正面装甲の一枚が切断される。その奥に二枚目が見えた。古代兵器の脚が、左右からセトへ迫る。
『右を受ける』
シアが言った。
『左は流れを切ります』
ネアの声が重なる。セトは右手の極炎で脚を受け流した。左から来る脚へは絶光を向けない。
脚そのものではなく、その関節へ入る原光を切る。動いていた脚が途中で鈍る。セトはその下を抜けた。
「使い方が違うな」
『わたしは壊す』
『わたしは動かす力を絶ちます』
「分かりやすい」
極炎が二枚目の装甲を切り裂く。絶光が、切断面へ集まる原光を絶つ。兵士たちの攻撃が、開いた場所へ集中する。
投石機の石が骨組みを砕く。火の術が細い管を焼く。風の刃が内部の部品を切り飛ばす。
古代兵器は、さらに多くの原光を集め始めた。暗闇の中へ、新しい光の道が浮かび上がる。
『右後方から四本です』
セトは絶光を連続して振る。一本。二本。三本。
四本。流れが切れるたび、古代兵器の内部で明滅する光が弱くなった。先に切った流れが、ゆっくりと戻り始めている。
「最初の流れがつながる」
『すべてを止め続ける必要はありません』
ネアが言った。
『正面へ入る量を減らしてください』
セトは古代兵器の周囲を回りながら、正面の再生へつながる太い流れだけを切る。絶光で供給を絶つ。極炎で装甲を壊す。
二本の剣は、別々の役割を持っていた。黒月の時のように、どちらか一方を選ぶ必要はない。古代兵器が再び砲口を開く。
『力が集まりきる前に切れ』
シアが言った。セトは砲口へ向かう原光の流れを、絶光で横から断つ。集まりかけた光が散る。
砲撃は放たれなかった。
「止めた!」
隊長の声が聞こえる。
「攻撃を続けろ!」
◆ 核への道
極炎が骨組みを切る。絶光が原光の流れを絶つ。兵士たちが内部の部品を壊す。開いた傷が、少しずつ深くなっていく。
前の戦いとは違った。黒月を傷口へ置き続ける必要がない。一度切った流れが戻る前に、別の流れを切れる。
兵器の攻撃へ対処している間にも、切断された流れはすぐには元へ戻らない。再生よりも破壊が先へ進んでいる。
『中央より下だ』
シアが言った。
『見えています』
ネアが答える。絶光を通じて、セトにも核へ集まる原光が見えていた。複数の流れが、兵器の奥にある一点へ集まっている。
「あそこだ」
セトは極炎を縦へ振り下ろした。最後の骨組みが切断される。球状の核が見えた。
複数の輪に囲まれ、内部で淡い光が脈打っている。
「核だ!」
隊長が叫ぶ。
「術士、中央を狙え!」
「待て!」
セトが止めた。核の周囲には、見えない防御壁がある。外から攻撃しても、前と同じようにそらされる。
『防御壁へ入る流れを切ります』
ネアが言った。核の周囲へ、細い原光が集まっている。装甲の再生とは別の流れ。防御壁を維持するためのものだった。
セトは絶光を振る。一本目を切る。二本目。三本目。
見えなかった壁の輪郭が、淡く浮かび上がった。球状の壁が揺れる。
『まだ残っています』
「どこだ」
『核の下です』
セトは兵器の内部へ踏み込む。極炎で邪魔な部品を切り飛ばす。核の下へ続く細い流れを、絶光で断った。
防御壁の光が一気に弱くなる。
「壁を切る」
セトは絶光の刃を、球状の防御壁へ当てた。黒月の時は、刃の周囲から精霊力を吸い続けた。今度は違う。
絶光を横へ振る。球状の壁へ、一本の切れ目が走った。壁の上下がずれる。開いた隙間は、すぐには閉じない。
『今です』
ネアが言った。
『わたしの番だ』
シアの声。セトは右手の極炎を引いた。
※第15話「二本目の精霊剣」は全九回です。
続きます。
作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。
※ネタバレ範囲にご注意ください。
https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/




