(六)三度目の地鳴り
◆ 三度目の地鳴り
採石場の方向から、これまでで最も大きな音が響いた。地面が揺れる。暗闇の向こうへ淡い光が伸びた。
「出るぞ!」
隊長の声が飛ぶ。兵士たちが配置につく。投石機の縄が引かれる。
術士は左右の高台から、採石場の出口へ狙いを定めた。岩の崩れる音が連続する。土煙が夜空へ上がった。
その中から、金属の脚が現れる。一度。二度。地面を踏みしめ、岩を押しのける。
やがて、装甲に覆われた巨体が採石場の外へ出た。傷は一つも残っていない。脚も装甲も元へ戻っている。
核へ入れた亀裂も、外からは見えない。前の二度の戦いが、なかったかのようだった。
「ネア」
セトが手を差し出す。ネアがその手を取った。
「今度は、最後まで離れません」
「ああ」
「ネア」
黒に近い光が広がる。絶光がセトの左手へ生まれた。原光の流れが、暗闇の中へ浮かび上がる。
シアが右手をつかむ。
「シア」
赤橙色の光が集まり、極炎となる。二つの力がセトの体へ流れ込んだ。右手には極炎。左手には絶光。
『右から三本』
ネアの声。
『上から太いものが一つ。地中から二本です』
「見えている」
『砲口が開くぞ』
シアが言った。古代兵器の上部が開く。原光が砲口へ集まり始めた。
「まず、あれを止める」
セトは絶光を構えた。
◆ 光を分ける
原光の砲撃が放たれた。暗闇が白く照らされる。黒月を使った時、セトは砲撃の側面へ刃を当てた。
吸いきれない力を刃に沿わせ、方向を変えた。今度は違う。
『中心です』
ネアの声に合わせ、セトは絶光を振る。迫る原光の中心へ、刀身を入れた。衝撃が左腕へ伝わる。
絶光の刃を境に、光の塊が二つへ分かれた。右と左。分かれた砲撃がセトの両側を通過し、兵士のいない地面へ突き刺さる。
二か所で大地が砕けた。
「切れた」
『次が来る前に、供給を絶ちます』
セトは古代兵器へ走る。ネアとシア。二人の力によって強化された体が、地面を蹴る。
古代兵器へ向かう太い原光の流れが見える。右から来る一本へ絶光を振る。流れが途切れる。
続けて、地面から伸びる一本。二本目。上から落ちる太い流れ。三本目。
古代兵器の装甲の隙間で脈打っていた光が弱くなる。兵器の脚が横から振られた。
『上だ』
シアの声。セトは体を沈める。頭上を金属の脚が通過した。
そのまま兵器の側面へ回り込み、極炎を振る。炎の刃が脚の関節へ入った。装甲が裂ける。
骨組みが焼き切れる。脚の先が地面へ落ちた。切断面へ原光が集まり始める。
『左下から二本来ます』
セトは絶光を振り返す。切断面へ向かっていた二本の流れが途切れた。部品の輪郭が浮かびかけ、崩れる。
「再生しない!」
隊長が叫ぶ。
「今だ! 撃て!」
投石機から岩が放たれる。古代兵器の正面装甲へ直撃した。術士たちの火と風が続く。装甲がへこむ。
継ぎ目が割れる。いつものように、すぐには元へ戻らない。
「正面を開く!」
セトは古代兵器へ踏み込んだ。
※第15話「二本目の精霊剣」は全九回です。
続きます。
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