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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第15話 二本目の精霊剣

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(四)月の剣

◆ 月の剣


 ネアの体が、黒に近い光へ変わった。黒月を作った時の光に似ている。だが、量が違う。

 人の形がほどけ、夜のような光がセトの左手へ集まった。周囲の原光が一斉に揺れる。古代兵器へ向かっていた流れの一部が、途中で途切れた。

 セトの左手に、一振りの剣が生まれる。黒刃とは違う。白刃とも違う。

 刀身がある場所だけ、周囲の光が失われたように見えた。細身の輪郭を、淡い銀色の光が縁取っている。


「ネア?」

『聞こえています』


 剣からネアの声が届いた。同時に、冷たい力がセトの左腕へ流れ込む。腕だけではない。

 胸。右腕。両脚。体全体へ広がっていく。

 黒月の時にはなかった感覚だった。セトの視界が変わる。暗闇の中に、無数の細い光が浮かんだ。

 空から流れるもの。大地の中を通るもの。木々や水から離れ、採石場へ向かうもの。


「見える」

『わたしが見ている原光の流れです』


 セトが剣を少し動かす。刀身の近くで、原光が左右へ分かれた。吸い込まれているのではない。

 流れそのものが、刃を避けている。


「剣になったな」


 シアが言った。


『そのようですね』

「戻れるか」

『試していません』

「なら、あとで試せ」

『言われなくても試します』


 シアが剣へ近づく。


「名前がいる」

『ネアでよいでしょう』

「それは剣の名前ではない」

『剣にも名前が必要なのですか』

「極炎にはある」

『極炎は、元からそう呼ばれていたのでしょう』

「呼び分けにくい」


 セトは、採石場へ向かう原光を見る。


「原光を絶つ剣か」


 剣の周囲で、細い流れが切れている。


「絶光」


 シアが言った。


「そのままだな」

「分かりやすい」

『黒月の時にも同じことを言いましたね』

「悪くなかっただろ」

『否定はしません』


 銀色の縁が淡く光った。


『絶光。その名でよいでしょう』


◆ 絶たれた流れ


「何ができる」


 セトが尋ねた。


『あの流れを切ってください』


 ネアが示したのは、採石場へ向かう太い原光の流れだった。セトは絶光を振る。何かに当たった感触はない。

 だが、刀身が通った場所で原光が途切れた。切られた先の光が方向を失い、周囲へ散っていく。


「切れた」

『黒月では、刃へ引き寄せて吸収していました』

「絶光では、流れそのものを止められる?」

『少なくとも、今の一本は』


 しばらくすると、途切れた原光が再びつながり始めた。切れた両端が伸び、同じ流れへ戻ろうとしている。


「戻るぞ」

『ええ。永久に消えるわけではありません』

「どれくらい持つ」

『流れの太さによります』


 セトは次の流れを切る。二本目。三本目。

 切られた流れは、絶光を離してもすぐには元へ戻らない。黒月は、刃を離せばその場で原光が流れ始めた。絶光なら、一度切った場所から移動できる。


「複数を順番に止められる」

『ええ』

「全部切れるか」

『数が多すぎます。切っている間に、最初の流れが戻ります』

「太いものだけなら?」

『兵器へ入る量を、大きく減らせるはずです』


 シアが絶光を見る。


「これなら倒せる」

『まだ分かりません』

「黒月より強い」

『原光を絶つことについては』

「核も切れるか」

『破壊する力は強くありません』


 ネアの答えは黒月の時と同じだった。


『絶光は、力を止めるための剣です。装甲や核を壊すなら、極炎の方が向いています』

「なら、二本使えばいい」


 シアが言った。セトとネアが、同時にシアを見る。


「黒月と極炎は一緒に使えた」

「黒月は、セトの黒刃です」


 絶光の中からネアが答える。


『今は、わたしが剣になっています』

「だから何だ」

『二人分の力を、同時にセトへ流せるか分かりません』

「やってみれば分かる」

『それしか言わないのですか』

「必要なことだからな」


 セトは左手に絶光を持ったまま、右手をシアへ差し出した。


「試すぞ」


 シアは迷わず、その手を取った。


「ああ」

「シア」



※第15話「二本目の精霊剣」は全九回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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