(七)できたこと
◆ できたこと
古代兵器を二度目の崩落で足止めした後、兵士たちは村とは反対側の谷へ防衛線を移した。
追加の部隊も到着し始めている。
日が沈み、辺りは暗くなっていた。
採石場の方向からは、岩を砕く音が続いている。
完全に閉じ込められたわけではない。
得られたのは、次の戦いまでの時間だけだった。
「核に亀裂は入った」
セトが言った。
「戻り始めています」
ネアは採石場へ向かう原光の流れを見ていた。
「まだ完全ではありませんが、核へ原光が集まっています」
「核まで直すのか」
「完全に壊せなければ、元へ戻せるのでしょう」
シアが採石場の方を見る。
「次は、もっと早く核まで開く」
「早くなっても、最後に足りなくなる」
セトが言った。
「なぜだ」
「黒月を再生へ使っている間は、核の防御壁が残る」
セトは地面へ二つの円を描いた。外側の大きな円。内側の小さな円。
「外が装甲。中が核だ」
外側の円へ線を当てる。
「黒月をここへ当てれば、装甲の再生を遅らせられる」
次に、内側の円へ線を移す。
「だが、核の防御へ黒月を移したら、装甲の再生が速くなる」
「兵士が壊していた」
「追いつかなかった」
「兵士を増やす」
「古代兵器も、さらに多くの原光を吸った」
シアが黙る。
ネアは、セトが描いた二つの円を見る。
「黒月そのものは通用しています」
「倒せなかったぞ」
「攻撃をそらしました。再生を遅らせました。核の防御にも穴を開けました」
「では、何が足りない」
「黒月が影響を与えられる範囲です」
ネアは、外側の円と内側の円へ同時に指を置いた。
「兵器は、装甲だけでなく全身から原光を取り込んでいます。黒月を一か所へ当てても、別の場所から入ってきます」
「黒月をもっと大きくする」
シアが言った。
「長くすることはできる」
セトが答える。
「だが、長くした分だけ吸収できるとは限らない」
「太くする」
「扱いにくくなる」
「二本出す」
「黒刃を二本同時には維持できない」
「不便だな」
「一族の術へ、古代兵器を倒すための便利さを求めるな」
ネアは採石場から流れてくる淡い光を見る。
「力の性質は間違っていません」
「原光を吸うことか」
「ええ。あの兵器を止めるには、必要な力です」
「だが、今の黒月では足りない」
「足りません」
ネアははっきりと答えた。
◆ 一本では届かない
夜になっても、採石場から低い音が聞こえていた。
古代兵器は、崩れた岩を破り続けている。
兵士たちは交代で見張りにつき、近隣の住民をさらに遠くへ避難させていた。
セトは左手に黒刃を作った。通常の黒い刀身。ネアが力を重ねれば、黒月になる。
古代兵器へ通用する力ではあった。
だが、一本の刃が触れられるのは一か所だけだ。
装甲の再生を止めれば、核の防御が残る。
核の防御へ穴を開ければ、装甲が閉じ始める。
極炎は核を傷つけた。
しかし、核へ届くまでに装甲を破り直し、最後の一撃に必要な力を失った。
「極炎一本では届かなかった」
セトが言った。
「黒月があれば届いた」
シアが答える。
「核へ触れただけだ」
「次は壊す」
「同じ方法では、また装甲が戻る」
「では、戻らないようにする」
「その方法がない」
「今はないだけだ」
シアは迷わずに言った。
セトは黒刃を消す。
ネアは二人の会話を聞きながら、採石場へ集まる原光を見続けていた。
「黒月で止めるべきものは分かりました」
ネアが言う。
「兵器の攻撃。装甲の再生。核を守る防御壁」
「全部、原光で動いている」
「ええ」
「なら、全部止めるしかない」
「そうなります」
「できるか」
ネアはすぐには答えなかった。
採石場へ向かう原光は、一本や二本ではない。
空から。地面から。周囲のあらゆる方向から、古代兵器へ流れ込んでいる。
「方法を考えます」
ネアが言った。
「次に、あれが岩を破るまでに」
遠くで淡い光が瞬いた。
少し遅れて、岩の砕ける音が届く。
時間は多く残されていない。
黒月によって、初めて核へ刃が届いた。
それでも、古代兵器を完全に破壊するには足りなかった。
一本の刃で押さえられる範囲を超えて、原光は兵器へ流れ込み続けていた。
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