(六)狭くなる道
◆ 狭くなる道
左右から、新しい装甲が伸びていた。
兵士たちが攻撃する。
投石機の岩が、生成された板を砕く。
術士の炎が骨組みを焼く。
一枚を壊す。その隣で、次の一枚が作られる。
原光の供給は止まっていない。
「装甲が閉じるぞ!」
隊長が叫ぶ。
「まだか!」
「もう少しです!」
ネアが防御壁を見る。
黒月の周囲では、球状の壁が薄くなっている。
だが、極炎の刃を通すにはまだ足りない。
セトは黒月を同じ場所へ押し当てる。
銀色の線が強く輝く。
防御壁の一部が消えた。
「開きました!」
『行くぞ』
極炎へ集められた力が、赤白い炎となる。
セトは右腕を引いた。
核までの道は見えている。
だが、その道は狭まり続けていた。
生成された骨組みが左右から伸びる。
新しい装甲板が、開いた場所へ滑り込もうとしている。
「極炎!」
セトは核へ向けて、炎の剣を突き出した。
◆ 届いた刃
赤白い炎が、古代兵器の内部を進む。
途中に残っていた骨組みを焼き切る。
生成途中の部品が進路へ滑り込む。
極炎がそれを貫いた。
さらに、新しい装甲板が横から入る。
『邪魔だ!』
極炎が装甲板を焼き切る。
だが、何かを破壊するたびに炎の勢いが削られる。
黒月が作った防御壁の穴へ、極炎の切っ先が入った。
炎が核へ届く。
球状の表面に、細い亀裂が走った。
「届いた!」
隊長の声が聞こえる。
セトは極炎をさらに押し込む。
亀裂が広がった。
核の内部で、淡い光が乱れる。
古代兵器の脚が大きく震えた。
『このまま壊す!』
シアが残った力を極炎へ集める。
炎が核の表面を焼く。
だが、核は砕けない。
極炎は核へ届くまでに、生成された部品を何枚も破壊していた。
最後の一撃に残したはずの力が、途中で削られている。
「防御壁が戻ります!」
ネアが叫んだ。
黒月は、開けた穴へ当て続けている。
それでも、球状の防御壁の周囲から、新しい精霊力が回り込んでくる。
黒月が吸収する。
別の方向から、さらに流れ込む。
穴が少しずつ狭くなる。
極炎の側面へ、防御壁が触れた。
炎が横へ流された。
『押し返される』
セトは極炎を前へ進めようとする。
核の亀裂は、それ以上広がらない。
左右から閉じる装甲も、目前まで迫っていた。
「退いてください!」
「あと少しだ!」
「その少しが届いていません!」
極炎の刀身が揺れる。
シアが集めた力も、もう多くは残っていない。
『セト、退くぞ』
「核は割れている」
『砕けていない』
「もう一度押せば」
『その前に閉じ込められる』
装甲板が、セトの左右から迫った。
セトは歯を食いしばる。
極炎を引き抜いた。
黒月も防御壁から離す。
閉じる装甲の隙間へ体を滑り込ませる。
外へ飛び出した直後、古代兵器の正面が閉じた。
◆ 返された光
セトが地面へ着地する。
右手の極炎がほどけた。
シアが人の姿へ戻り、セトの隣へ立つ。
「倒せなかった」
「ああ」
古代兵器の脚が動く。
戦いの間に破壊した関節も、すでに新しい部品へ置き換わっていた。
正面装甲の内側へ、原光が集まっている。
核の亀裂も直し始めているらしい。
「兵を下げろ!」
隊長が叫んだ。
投石機を動かしていた兵士たちが、順番に後退する。
術士たちは、残った力で古代兵器を攻撃した。
兵器の上部が開く。
砲口へ原光が集まり始めた。
「セト、左の崖です」
ネアが言った。
採石場の側面には、先ほど黒月でそらした砲撃によって、大きな亀裂が入っている。
「もう一度、あそこへ向けてください」
「崩すのか」
「ええ」
古代兵器が原光を放った。
セトは黒月を構える。
迫る攻撃の側面へ、斜めに刃を当てた。
原光の一部が吸収される。
残りが刀身に沿って曲がる。
「もう少し左です!」
セトは踏み込み、黒月を振り抜いた。
光の塊が大きく向きを変える。
古代兵器へ返すのではない。
亀裂の入った崖へ向ける。
原光が岩壁へ直撃した。
亀裂が一気に広がる。
「下がれ!」
隊長の声。崖が崩れた。
大量の岩が、古代兵器の上へ降り注ぐ。
兵器の姿が土煙の中へ消える。
完全に倒したわけではない。
それでも、すぐに追ってくることはできなくなった。
「退くぞ!」
セトたちは兵士とともに採石場を離れた。
※第14話「一本では届かない」は全七回です。
続きます。




