(三)次の一撃まで
◆ 次の一撃まで
ローディアの隊長を加え、攻撃の順番を決めた。
古代兵器が出てきたら、最初の砲撃を黒月でそらす。
セトが接近し、極炎で装甲を切り開く。
黒月で再生を遅らせ、その間に兵士たちが露出した内部を攻撃する。
核が見えたら、黒月を防御壁へ当てる。
最後に、極炎の大きな一撃で核を破壊する。
「最初から大きな極炎を撃たないのか」
隊長が尋ねた。
「それでは前と同じだ」
セトが答える。
「装甲は大きく壊せる。だが、次の一撃を出せるようになる前に戻される」
「通常の極炎で少しずつ開く?」
「ああ。大きな一撃は、核まで残す」
「その間、兵器の攻撃は黒月で防ぐのですね」
ネアが頷く。
「すべてを止められるとは限りません。兵士も一か所に集まりすぎないでください」
隊長は地図に配置を書き込む。
「極炎が開いた場所へ、投石機と術士の攻撃を集中させる」
「別の場所を攻撃しても、すぐに戻る」
シアが言った。
「分かっている。正面だけを狙わせる」
「兵士も役に立つのだな」
「シア」
セトが呼ぶ。
「何だ」
「余計な言葉を足すな」
「役に立つと言った」
「今まで役に立たないと思っていたように聞こえる」
「古代兵器を倒す役には立たなかった」
隊長が額を押さえた。
「作戦の話を続けていいか」
「ああ」
「兵器の砲口がこちらを向いた場合は?」
「避ける」
シアが答える。
「避けられない場合を聞いている」
「黒月でそらす」
「それも失敗したら?」
「死ぬ」
「シア」
「何だ。間違っていない」
「隊長」
セトが言った。
「黒月で全部を防げる保証はない。兵器が砲口を向けたら、攻撃を止めてでも散らせ」
「分かった」
隊長は兵士たちへ指示を出し始めた。
◆ 二本を持つ
黒月は、セトが消さない限り形を保っていた。
銀色の線も薄れない。
セトは左手に黒月を残したまま、シアへ手を伸ばした。
「試すぞ」
「ああ」
シアがその手を取る。
「シア」
名前を呼ぶ。
シアの体が赤橙色の光へほどけた。
光がセトの右手へ集まり、炎の剣となる。
極炎。
シアの力がセトへ流れ込む。
両腕。両脚。体全体が強化される。
右手には極炎。左手には黒月。
『動けるか』
「ああ」
セトは二本を構えた。
極炎を振る。
続けて黒月を振る。
二本の軌道を交差させ、触れる直前で止めた。
極炎の火が黒月へ引かれ、わずかに揺れる。
「近づけすぎない方がいいな」
「黒月が極炎の力まで吸う可能性があります」
ネアが言った。
『わたしを吸うなよ』
「気をつける」
『絶対に気をつけろ』
セトは二本の間隔を広げる。
「黒月で流れを曲げる時は、どちらへ動かせばいい」
「わたしが伝えます」
ネアが答える。
『ネアの声はわたしにも聞こえる。セトだけに言わなくていい』
「分かりました」
セトは二本を下ろした。
同時に扱うことはできる。
極炎で破壊する。黒月で原光を遮る。
役割も分かれていた。
あとは、実際に古代兵器へ通じるかどうかだった。
◆ 崩れる岩
日が山の向こうへ沈み始めた頃。
崩落の中央へ亀裂が走った。
内側から淡い光が漏れる。
「来るぞ!」
隊長の声が採石場へ響く。
兵士たちが持ち場につく。
投石機の縄が引かれる。
術士たちは、残っている精霊力を集めた。
亀裂の奥で、光が強くなる。
次の瞬間、積み上がった岩が吹き飛んだ。
砕けた石が採石場へ降り注ぐ。
土煙の中から、金属の脚が現れた。
古代兵器が岩を押しのけ、外へ出てくる。
その装甲には、傷一つ残っていなかった。
極炎が切断した場所も。兵士たちが破壊した内部も。すべて新しい部品へ置き換わっている。
『戻っているな』
「ああ」
『もう一度壊す』
古代兵器の上部が開く。
砲口へ原光が集まった。
「左から右へ流れています」
ネアが言った。
「黒月を左下から当ててください」
セトは左手の黒月を斜めに構える。
古代兵器が原光を放った。
※第14話「一本では届かない」は全七回です。
続きます。
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