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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第14話 一本では届かない

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(二)黒い方

◆ 黒い方


 ネアが黒刃へ近づく。


「何をする」


 セトが尋ねた。


「そこへ、わたしの力を重ねます」

「黒刃に?」

「乗るだけ乗せます」

「何ができるようになる」

「原光を吸う力が強くなるはずです」


 ネアは黒刃の周囲を流れる力を見ている。


「それに加えて、反射と偏向もある程度使えるでしょう」

「反射と偏向?」

「原光の攻撃をすべて吸いきれなくても、流れを曲げられます。うまく向きを変えれば、相手の方へ返すこともできるかもしれません」


 シアが白刃を見る。


「白い方には乗せないのか」

「乗りません」

「なぜだ」

「放出と吸収では、働きが反対です」


 ネアは白刃を指した。


「白い方は、集めた力を外へ放つのでしょう」

「ああ」

「わたしが重ねようとしているのは、原光を吸い、流れを内側へ引く力です。無理に重ねても、どちらかの働きを邪魔するだけです」

「本当に乗らないかは、やってみないと分からない」

「シア」


 セトが止める。


「何だ」

「今は壊れるかもしれない方を試す時ではない」

「黒い方も初めてだぞ」

「働きが同じ方向だ」


 シアは少し考える。


「それなら分かった」


 ネアが黒刃へ指先を伸ばした。


「触れます」

「ああ」


 指先が、黒い刀身の側面へ触れる。


◆ 黒月


 黒刃が細かく震えた。

 ネアの指先から、黒に近い光が流れ出す。

 黒刃そのものの色とは違う。

 周囲の明るさを弱め、色を薄くするような光だった。

 光が黒刃の表面へ広がる。

 その中に、細い銀色の線が生まれた。

 根元から先端へ。

 何本もの線が、黒い刀身の上をゆっくりと巡る。

 周囲を流れる原光が、先ほどより強く刃へ引かれ始めた。

 刃へ触れていない流れまで、近くを通るとわずかに曲がる。


「まだ入るのか」


 セトが尋ねる。


「もう少しです」


 ネアは指を離さない。

 銀色の線が増える。

 黒刃の輪郭が強くなり、刀身もわずかに伸びた。

 やがて、表面が大きく揺れた。

 ネアが指を離す。


「ここまでです」

「これ以上は?」

「黒刃の形が保てません」


 セトは変化した黒刃を振った。

 刃が通った場所へ、周囲の原光が引かれる。

 これまでの黒刃より、明らかに吸う範囲が広い。

 変わったのは剣だけだった。

 セトの腕や体には、何も起きていない。


「兵器の攻撃も、これで吸えるのか」

「全部は無理です」

「どれくらいなら?」

「分かりません。あの兵器が放つ量を、この剣で受けたことはありませんから」

「では、試すしかないな」

「正面から受け止めないでください」


 ネアが言った。


「刃を斜めに当てます。吸いきれない分は、刃に沿って流してください」

「どちらへ流す」

「人がいない方へ。角度が合えば、兵器へ戻しても構いません」


 シアが黒い刀身を見た。


「名前がいる」

「黒刃でいいだろ」

「今までと違う」

「ネアの黒刃」

「セトの術です」


 ネアが答える。


「では、黒い月」


 シアは銀色の線を見る。


「黒月」

「そのままですね」

「分かりやすい」


 セトも黒い刀身を見る。


「黒月か」

「ただし、とどめには向きません」


 ネアが言った。


「相手を大きく壊す力ではないからです」

「何に使う」

「こちらの防御を助けます。兵器の攻撃を吸収し、そらす」


 ネアは崩落の向こうへ目を向ける。


「壊れた場所へ流れ込む原光を奪えば、再生も遅らせられます。核を守る壁が精霊力で作られているなら、そこにも使えるはずです」

「黒月で、相手の防御と再生を防ぐ」


 シアが言う。


「ええ」

「とどめは極炎」

「そうなります」

「なら倒せる」

「届くかどうかは分かりません」

「またそれか」

「初めて使う力ですから」


 採石場の奥から、大きな音が響いた。

 崩落を塞いでいた岩が、外側へ押し出される。



※第14話「一本では届かない」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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