表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第3話 白刃と黒刃

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/25

(二)黒刃

◆ 何もない黒


 シアが今度は慎重に近づいた。


「黒い精霊を集めているわけではないな」


「ああ」


「何もない」


「正確には、精霊を外へ押し出している」


 シアは黒刃の周囲を歩く。


 見る位置を変えても、黒さは変わらない。


 光を遮って影を作っているのではない。剣の形をした部分だけ、世界を満たしている精霊力が欠けている。


「黒い力ではなく、空いている場所か」


「一族では闇の剣と教わる。だが、俺も似たような認識だ」


「触っていいか」


「駄目だ」


「またか」


「白刃より危ない」


 黒刃は物を切ることもできる。


 だが、得意なのは精霊術へ触れることだった。


 術を形作っている精霊力を奪い、崩す。


「わたしの火も消せるのか」


「弱いものならな」


 シアの目が輝いた。


「試す」


「待て。ここへ直接撃つな」


◆ 火を消す


 セトは岩壁の前へ立った。


 黒刃を斜めに構える。


「小さくしろ」


「どのくらいだ」


「指先に出していた程度だ」


「分かった」


 シアが片手を上げた。


 指先に、赤い炎が灯る。


 昨日、大型魔獣を倒した炎とは比べものにならないほど小さい。


 それでも、普通の焚き火より熱かった。


「投げるぞ」


「ゆっくりだ」


 シアが指を振る。


 火の玉が黒刃へ向かって飛んだ。


 セトは刃の腹で受け止める。


 炎は黒刃へ触れた瞬間、小さく歪んだ。


 赤い光が黒の中へ吸い込まれる。


 火の玉は岩壁まで届かず、その場で消えた。


「消えた」


「黒刃が、火を作っていた精霊力を奪った」


「奪った力はどこへ行く」


「俺が使えるわけじゃない。形を失って、周りへ散るだけだ」


「もったいない」


「何でも自分の力にできると思うな」


 シアはもう一度炎を作った。


 先ほどより明らかに大きい。


「待て」


「どこまで消せるか見る」


「俺の話を聞け」


◆ 吸収の限界


 シアが炎を投げた。


 今度は、人の頭ほどの大きさがある。


 黒刃へ触れた炎が大きく揺らぐ。


 セトは両足を開き、刃を押し返した。


 炎の表面から赤い光が削られ、黒刃の周囲へ白い粒となって散っていく。


 だが、一度では消えない。


 炎が黒刃を押し込んでくる。


「さっきより重いな」


「精霊術に重さはない」


「受ける側からすれば同じだ」


 セトは刃を振り上げた。


 黒い剣筋が炎を縦に裂く。


 二つに分かれた火は急速に小さくなり、岩壁へ届く前に消えた。


 同時に、黒刃の形も崩れる。


 黒い刀身が途中から欠け、周囲の光が空白を埋めていった。


「剣も消えた」


「吸収できる量には限界がある」


「もっと強く作ればいい」


「できるならやってる」


 昨日と同じ返事になった。


 右腕に、重い痺れが残っている。


 怪我の影響もあるが、黒刃で強い術を受ければ、固定している側にも負担がかかる。


「次はもう少し小さくしろ」


「まだやるのか」


「お前が始めたんだろ」


◆ 使い分け


 林の奥から枝の折れる音がした。


 セトとシアが同時に振り返る。


 低い茂みを押し分け、三体の魔物が姿を現した。


 細長い胴と灰色の毛。口元から伸びた牙の間に、淡い光が集まっている。


「炎の臭いに寄ってきたか」


「倒すか」


 シアが前へ出る。


「待て。俺がやる」


「怪我をしている」


「白刃と黒刃を見るんだろ」


 セトは白刃を作った。


 一体目が地面を蹴る。


 まっすぐ飛びかかってきた魔物を、横へ踏みながら斬る。


 白刃は牙を避け、前脚の付け根へ入った。


 見えている刀身より先まで届いた斬撃が、魔物の体を深く裂く。


 二体目の口から、圧縮された風が放たれた。


 セトは白刃を消す。


 代わりに黒刃を作り、正面へ構えた。


 風の塊が黒へぶつかる。


 形を保っていた精霊力が奪われ、ただの空気へ戻った。


 弱くなった風が、セトの髪と上着を揺らす。


「白で斬って、黒で消す」


 シアが後ろから言った。


「そういう使い分けだ」


◆ 一本ずつ


 三体目が横から回り込む。


 セトは黒刃を消し、再び白刃を作った。


 切り替わるまでの一瞬を狙い、魔物が飛び込んでくる。


 だが、セトはすでに半歩下がっていた。


 牙が旅装の前を通過する。


 短く作った白刃を、下から突き上げる。


 刃が魔物の腹へ入った。


 残る一体が再び風を放とうとする。


 セトは白刃を引き抜きながら、左へ投げた。


 短剣状に変わった白い刃が魔物の肩へ刺さる。


 風の術が乱れた。


 セトは距離を詰め、新たに作った白刃で首元を斬る。


 三体目が地面へ倒れた。


 静かになると、右脇の痛みが戻ってきた。


「怪我をしている動きではないな」


「治療師には言うな」


「昨日、判断を相手任せにするなと言っていた」


「今の話と関係あるか?」


「たぶんある」


「ない」



※第3話「白刃と黒刃」は全三回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ