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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第13話 地下から来た兵器

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(五)立ち上がる兵器

◆ 見えない壁


 複数の精霊術が、露出した球状の核へ向かう。

 火の矢。

 圧縮された風。

 石の槍。

 すべてが核へ届く直前で止まった。

 何かに衝突したように形を崩す。

 そこには装甲がない。

 透明な板もない。

 それでも、攻撃は核へ触れなかった。


「防がれた?」


 隊長が呟く。

 セトは極炎を突き出す。

 炎の切っ先が、核の手前で止まる。

 手応えはある。

 硬い壁へ当てた感覚ではない。

 剣を進めるための力だけが、別の方向へ流されていく。


『見えない』


 シアが言う。


「だが、ある」

『精霊力だ』


 極炎の炎が、壁の表面に沿って左右へ流れた。

 その一瞬だけ、核の周囲に球状の輪郭が浮かぶ。

 精霊力によって作られた防御壁。

 装甲の内側へ、さらにもう一枚の守りがある。


「切れないか」

『押す』


 シアが出力を上げる。

 セトも柄を両手で握った。

 極炎の先端が防御壁へ食い込む。

 わずかに進む。

 だが、核までは遠い。

 兵器の周囲へ、再び原光が集まり始めた。


「セト!」


 ネアの声が届く。


「装甲が戻ります!」


◆ 閉じる装甲


 左右へ落ちていた装甲の代わりに、新しい板が生成される。

 最初は薄い骨組み。

 次に、その外側を覆う板。

 セトの左右から、兵器の正面が閉じ始める。


「まだ届かない!」

『分かってる!』


 シアがさらに力を集める。

 防御壁がわずかにへこむ。

 だが、壊れない。

 核は光を脈打たせ続けている。

 それ自体が兵器全体へ原光を送り、部品を作らせているように見えた。

 ここを壊せば止まる。

 届けば倒せる。

 だが、装甲を破った後にも、もう一つ破らなければならないものがあった。


「下がってください!」


 ネアが黒い線を伸ばす。

 閉じかけた装甲板の一枚を横へ引く。

 完全には止まらない。

 それでも、セトが抜ける隙間を残した。


『セト、離れる』

「もう少しだ」

『次が撃てない』


 極炎の刀身が揺れる。

 シアの力が尽きかけている。

 セトの腕も動かなくなってきた。


「くそっ」


 セトは極炎を引いた。

 閉じる装甲の隙間から外へ飛び出す。

 直後、兵器の正面が閉じた。

 核は再び装甲の奥へ隠れた。


◆ 立ち上がる兵器


 兵器が大きく震えた。

 破壊された内部の部品が、次々と生成される。

 先ほどより広い範囲を壊したため、完全に戻るまでには少し時間がかかっている。

 だが、止まってはいない。

 原光を吸い上げる量が増える。

 谷の草が茶色く変わった。

 近くの木々から葉が落ちる。

 投石機を動かしていた術士たちが膝をつく。


「術が出ない!」

「周りに何も残っていない!」


 ネアが周囲へ黒い線を広げた。

 兵器へ集まる原光の一部を押し戻す。

 だが、顔色が悪い。


『ネア』

「分かっています」

『何がだ』

「これ以上は止められません」


 シアが人の姿へ戻った。

 セトの右手から炎の剣がほどけ、隣へ立つ。

 精霊剣でなくなった後も、ネアはシアへ答え続ける。


「範囲が広すぎます。それに、吸う力が強くなっています」


 兵器の脚が一本ずつ動きを取り戻す。

 切断された装甲も、外から見ればほとんど元へ戻っていた。

 二度の極炎。兵士と術士たちの集中攻撃。

 それでも、兵器は立ち上がった。


「一体も倒せないのか」


 隊長が呟いた。

 シアが兵器を見る。


「今はな」

「まだ戦うのか」


 セトが尋ねる。


「戦える」

「俺が無理だ」


 シアがセトを見る。


「そうか」

「少しは否定しろ」

「無理なものは無理だ」

「退くぞ」


 セトは隊長へ向き直った。


「あれを倒す方法がない」

「村へ向かわせるわけにはいかない」

「倒せないまま戦えば、兵士だけが死ぬ」

「では、どうする」


 セトは地図を思い出す。


「進路を変える。人のいない場所へ誘導する」



※第13話「地下から来た兵器」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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