(三)一撃目
◆ 極炎の刃
シアの力で強化された体が、谷を駆ける。
兵器が脚を動かす。
前後を変えず、横へ滑るように移動した。
脚の一本がセトへ振られる。
『下』
セトは体を沈める。
頭上を金属の脚が通過した。
そのまま懐へ入る。
厚い装甲板の継ぎ目が見えた。
セトは極炎を振り上げる。
炎の刃が装甲を切る。
表面の一枚。
その下の二枚目。
さらに内側の骨組み。
切断された部品が赤く焼け、地面へ落ちる。
兵器の内部に、複数の細い管と歯車に似た構造が見えた。
『浅い』
「分かってる」
兵器の体が回転する。
別の脚が迫る。
セトは切り開いた場所から離れた。
着地と同時に、上部の砲口がセトへ向く。
「右へ!」
ネアの声。
セトは右へ跳ぶ。
原光の攻撃が地面を砕いた。
吹き上がった石が背中へ当たる。
倒れずに着地する。
『装甲は切れる』
「ああ」
『中まで一度に壊す』
「極炎を使う」
シアが剣の中で力を集める。
セトは正面から兵器へ走った。
◆ 一撃目
兵器が原光を放つ。
セトは横へ避ける。
脚が地面を薙ぐ。
極炎で受け流す。
衝撃で腕がしびれた。
それでも足を止めない。
先ほど切った側面へ回る。
すでに光が集まり始めている。
装甲が再生成される前に、セトは剣を構えた。
『合わせる』
「ああ」
セトが踏み込む。
「極炎!」
炎の剣へ、シアの力が一瞬で集中する。
赤白い刃が大きく伸びた。
横薙ぎの一撃が、兵器の側面へ入る。
装甲板がまとめて切断された。
内側の骨組み。
原光を運んでいた管。
小さな部品の集まり。
それらが炎に飲まれ、兵器の内部から外へ吹き飛ぶ。
兵器の巨体が傾いた。
脚の二本が動きを止める。
上部の砲口から集まっていた光も消えた。
兵士たちから声が上がる。
「止まった!」
「今だ! 撃て!」
投石機と術士の攻撃が、開いた側面へ集中する。
炎。岩。風の刃。
露出した内部がさらに砕かれる。
兵器が地面へ沈んだ。
セトは大きく息を吐いた。
極炎の刀身が少し揺れる。
『まだだ』
シアが言う。
開いた側面へ、周囲の原光が集まり始めていた。
◆ 壊れた場所の形
最初に生成されたのは、細い管だった。
光の中で筒状の部品が生まれる。
次に、複数の小さな輪。歯の付いた円盤。
それらが空中から兵器の内部へ収まり、互いにつながる。
壊れた場所を確認しながら作っているような迷いはない。
最初から、どの部品をどこへ置くか決まっている。
「攻撃を続けろ!」
隊長が叫ぶ。
術士たちが炎を放つ。
新しく作られた管が砕ける。
だが、その後ろから次の管が作られる。
投石機の石が内部へ当たり、複数の部品を押し潰す。
潰れた部品が内側へ落ちる。
代わりに新しい部品が生まれる。
「止まらない」
セトが言った。
『作る速さが上がっている』
兵器へ流れ込む原光も増えている。
周囲の草が急速に色を失った。
谷を流れていた細い水の表面から、淡い光が抜けていく。
ネアが両手を広げた。
兵器へ向かう原光の一部が、横へ曲がる。
黒い線に沿って、地面へ流された。
部品の生成がわずかに遅くなる。
「全部は止められないのか」
セトが尋ねる。
「範囲が広すぎます」
ネアの額に、うっすら汗が浮かぶ。
「わたし一人の周囲だけなら止められます。ですが、あれは地中からも空からも集めています」
『もっと近づけばどうだ』
「近づけば、流れを強く曲げられます」
「危険だ」
「今さらでしょう」
ネアは兵器へ歩き始めた。
※第13話「地下から来た兵器」は全六回です。
続きます。
作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。
※ネタバレ範囲にご注意ください。
https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/




