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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第13話 地下から来た兵器

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(一)発掘された兵器

◆ 東から逃げる者


 ローディア王国へ入ってから、街道の人の流れは二つに分かれていた。

 東へ向かうのは兵士と、荷車へ物資を積んだ者たち。

 西へ向かうのは、家財を抱えた住民だった。

 子供を背負う者。家畜を連れて歩く者。荷物を積めるだけ積み、車輪の壊れた荷車を引く者。

 誰もが何度も東を振り返っていた。


「何があった」


 セトが、荷車を押していた男へ声をかけた。


「分からん」


 男は足を止めずに答える。


「山の方で地面が割れた。そこから何か出たらしい」

「何か?」

「兵器だとか、魔物だとか言っている。見たやつの話が全部違う」


 男の隣を歩いていた女が口を挟む。


「魔物じゃない。金属でできていたって聞いた」

「金属の魔物かもしれないだろ」

「金属でできた魔物なんているものか」

「いないとは限らん」


 二人とも、自分で見たわけではないらしい。

 ただ、逃げろと言われて逃げてきた。

 それだけは同じだった。


「村は?」

「兵士が残っている。近づくなと言われた」


 男は街道の先を指した。


「あんたたちも行かない方がいい」

「行く必要がある」


 シアが言った。

 男はシアの服装を見て、次にネアを見た。

 人間ではないとまでは分からなくても、普通の旅人ではないことは伝わったらしい。


「好きにすればいい。だが、死んでも助けには戻らんぞ」

「ああ。それでいい」


 シアが答える。

 男は首を振り、再び荷車を押し始めた。


「止めないのですね」


 ネアが言った。


「何をだ」

「逃げる人間へ、心配するなとは言わないのですか」

「止められるか分からない」


 シアは東を見た。


「分からないことを、大丈夫とは言えない」


 ネアは少しだけシアを見る。


「そういうところは、簡単に考えないのですね」

「何の話だ」

「別に」


◆ ローディアの兵士


 街道を進むと、木を組んだ柵が道を塞いでいた。

 その前に、二十人ほどの兵士が並んでいる。

 武装してはいるが、全員が東を気にしていた。

 隊列の後ろには、負傷者が寝かされている。

 鎧がへこんだ者。肩から血を流す者。火傷を負った者。

 魔物との戦いとは違う。

 傷の付き方に統一性がなかった。


「止まれ!」


 兵士の一人が槍を向ける。


「この先は封鎖されている!」


 セトは国境でもらった書状を見せた。

 兵士は受け取り、何度かセトたちと書状を見比べる。


「エルディナからの調査?」

「ああ」

「話は聞いていない」

「出したばかりの書状だ。俺たちが先に来た」

「勝手なことを」


 兵士が顔をしかめる。

 その後ろから、別の男が歩いてきた。

 鎧の形は同じだが、肩に付いている印が違う。


「見せろ」


 男は書状を受け取る。

 最後まで読むと、シアとネアへ目を向けた。


「火と月の精霊王とある」

「わたしが火だ」

「わたしが月です」


 二人は隠さなかった。

 周囲の兵士たちがざわめく。


「本物なのか」

「確認しますか」


 ネアが尋ねる。


「いや」


 隊長らしい男は、すぐに首を振った。


「確認のために何かされても困る」

「賢明です」

「何が起きている」


 セトが尋ねる。

 男は東を見た。


「発掘物が動き出した」

「古代の遺跡から見つけたものか」


 男の視線が戻る。


「なぜ知っている」

「遺跡の場所をローディアへ伝えた人間から聞いた」

「誰だ」

「グラウス」


 男には覚えがないようだった。


「情報は仲介人を通したらしい。直接会ってはいないはずだ」

「それなら、上の者しか知らない」

「発掘したのは国か」


 男はすぐには答えなかった。


「ここで話していいことではない」

「この先で人が逃げている」


 シアが言う。


「話さない方が大事か」

「言い方を選べ」

「選んでいる間にも、原光が吸われている」

「原光?」

「世界にある力だ。あれが吸っている」


 隊長は意味を理解できていない。

 だが、シアの顔を見て、冗談ではないことは理解したらしい。


「中で話す」


◆ 発掘された兵器


 柵の内側には、仮設の指揮所が作られていた。

 天幕の中央に地図が広げられている。

 山地の一角に大きな印があり、そこから西へ向かう道へ複数の線が引かれていた。


「遺跡を掘っていたのは、王都から派遣された調査隊だ」


 隊長が言った。


「正式な名目は、古代の動力装置の調査だった」

「兵器だとは知らなかった?」


 セトが尋ねる。


「少なくとも、現場の兵士は聞かされていない」

「調査隊は?」

「知っていた者もいるだろう」


 隊長は地図上の印を指した。


「地中から、同じような構造物が複数見つかった。そのうち、遺跡の入口に近い一体を試験に使った」

「地上へ運び出したのか」

「いや。大きすぎた」


 隊長は首を振った。


「周囲の土を取り除き、地下の広間で全体を露出させた。固定具と操作用の装置を取り付け、そこで動かそうとした」

「動いたのか」

「一部はな」


 最初は脚の一本。次に、上部の砲口らしき部分。

 調査隊が道具を操作すると、それに応じて動いた。

 少なくとも、現場の者たちにはそう見えた。


「三日前から、周囲の精霊術が急に使いにくくなった。調査隊は、発掘した兵器が力を集めているからだと説明した」

「知っていたのか」


 シアの声が低くなる。


「原光を吸っていることを」

「原光という言葉は聞いていない。周囲の精霊力を燃料として蓄えている、とだけだ」

「止めなかった?」

「止める必要はないと言われた」


 隊長は苦い顔をする。


「試験を終えれば停止できる。使った分も、時間が経てば自然に戻る。そう説明された」

「戻っていない」


 ネアが言った。


「この国だけでなく、かなり広い範囲から吸い上げています」

「広い範囲とは?」

「国境の向こうからもです」


 隊長が黙る。


「今朝、調査隊が本格的に起動させた」


 少しして、男は続けた。


「最初は命令どおりに脚を動かした。だが、途中から操作を受け付けなくなった」

「それで地面が割れたのか」

「ああ」


 兵器は、自分を固定していた器具を壊した。

 地下の広間の天井を砲撃で崩し、地盤を破りながら地上へ這い出した。

 国境で聞いた低い音は、その時のものだったらしい。


「最初から制御できていなかったのでは?」


 ネアが言った。


「動かせたことを、制御できたと思い込んでいた」


 隊長は否定しなかった。


「おそらくな」



※第13話「地下から来た兵器」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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