(五)世界規模
◆ 精霊剣のつながり
ネアの視線が、シアとセトの間を行き来した。
「あなたたちの間には、強い力のつながりが残っています」
「分かるのか」
シアが尋ねる。
「普通に一緒に行動しているだけでは、ここまで深くはつながりません」
ネアは少し考える。
「精霊剣になったのですか」
「ああ」
シアは隠さず答えた。
「セトに剣として身を預けた」
ネアの視線がセトへ移る。
「戻れたようで何よりです」
「戻れないこともあるのか」
セトが尋ねる。
「初めてだったのでしょう」
「ああ」
「なら、何が起きるかは分からなかったはずです」
「分からなかった」
シアが答える。
「それでもなった」
「なぜですか」
「セトが死にそうだったからだ」
ネアは少し黙った。
「それだけですか」
「それで十分だった」
「そうですか」
否定はしなかった。
納得した様子もない。
「精霊剣そのものを否定するつもりはありません」
ネアが言った。
「ですが、本人が望んだのであれば、それだけで何も問題がないとも思いません」
「面倒な考え方だな」
「あなたが簡単に考えすぎるのです」
「初めて会ったのに、それは分かるのか」
「今の話だけでも、ある程度は分かります」
シアは不満そうにネアを見る。
セトは口を挟まなかった。
◆ 世界規模
「原光は、どこから引かれている」
セトが尋ねる。
ネアは周囲へ細い線を広げた。
北から。
南から。
西から。
別々の方向から来た線が、すべて東へ曲がっている。
「この森だけではありません」
ネアが言う。
「わたしが確認した範囲では、かなり離れた土地からも同じ方向へ流れています」
「世界全部?」
「そこまでは確認できていません」
「だが、一つの国だけの異変ではない」
「ええ」
ネアは銀色の線を消した。
「自然に起こる規模ではありません。精霊王が力を集めたとしても、自分の周囲が中心になります」
「広すぎる?」
「広すぎます。それに、引き方が一定です」
「誰かがやっている」
シアが言った。
「または、誰かが動かした何かがやっています」
セトはグラウスから聞いた遺跡の話を説明した。
魔剣を探す途中で見つけたこと。
先代イフリートから、古い危険な文明の話を聞いていたこと。
グラウスがその場所をローディアへ流したこと。
その後、調査隊が山へ入ったこと。
ネアは最後まで黙って聞いた。
「わたしの知識にもあります」
「古い文明のことか」
「ええ。ただし、詳しい構造は分かりません」
「シアと同じだ」
「精霊王たちが危険と判断し、止めた。それだけです」
「滅ぼした」
シアが言った。
「その可能性は高いでしょう」
「なぜ、遺跡が残っている」
「すべてを壊せなかった。あるいは、壊さずに封じた方が安全だった」
「今の段階では分かりません」
◆ 原光の川
三人は東へ進んだ。
ネアが原光の流れを探り、シアが周囲の薄さを確認する。
セトには、二人ほど細かな違いは分からない。
それでも、白刃を短く作れば、場所によって刀身の安定が変わった。
「ここでは少し長く保てる」
セトが白刃を消す。
「流れが残っているからです」
ネアが答えた。
「だが、東へ向かっている」
「ええ」
「原光にも道があるのか」
「川ほど明確なものではありません。ですが、通りやすい地形や、集まりやすい場所はあります」
「全部の道が、途中から同じ方向へ曲がっている」
シアが地面を見る。
「何かが引いているからでしょう」
ネアが手をかざす。
地面の上へ、黒い細線が何本も現れた。
それぞれ異なる方向から伸びてきた線が、東へ向かう一本へ合流している。
「この先はローディア王国です」
「国境を越える必要がある」
セトが言った。
「人間の許可が必要ですか」
ネアが尋ねる。
「何も言わずに入れば問題になる」
シアが首を傾げる。
「世界の力を吸われているのに?」
「それでもだ」
「人間は面倒だな」
「今回ばかりは同意します」
ネアが答えた。
※第12話「枯れ始めた森」は全六回です。
続きます。
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