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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第12話 枯れ始めた森

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(三)流した情報

◆ 先代から聞いた遺跡


「何の遺跡か分かっていたのか」


 シアが尋ねる。


「正確には知らない」


「では、なぜ気にした」


「あの方から聞いたことがあった」


 先代イフリート。


 グラウスが「あの方」と呼ぶ相手は、今も変わらない。


「古い時代、人間が精霊術とは異なる方法で力を扱っていたと」


「異なる方法?」


 セトが尋ねる。


「地や空にある力を集め、道具へ流し込む。術士が直接扱わなくても、道具だけで同じ動きを繰り返す」


 シアが目を細くする。


「知識にある」


「何がだ」


「古い人間の文明だ」


 シアは頭の中を探るように、少し間を置いた。


「詳しいことは分からない。だが、危険だった。精霊王たちが止めた」


「滅ぼしたのか」


「たぶん」


「人間の記録では、神の怒りに触れて滅びた文明と呼ばれている」


 グラウスが言った。


「精霊王を神と間違えた記録だろう」


「先代は、遺跡の場所まで知っていたのか」


「知らなかった。似たものを見つけたら近づくなと言っていただけだ」


「それで、お前は近づいた」


「ああ」


◆ 流した情報


「ローディアへ場所を教えたのか」


 セトが尋ねる。


「教えた」


「誰に?」


「古い遺跡や魔道具の情報を買っている者がいると聞いた。仲介人へ場所を渡した」


「国の人間か」


「知らない」


「何を伝えた」


「位置と、入口の形だ」


「危険な遺跡だということも?」


「伝えた」


 セトは眉を寄せる。


「危険だと聞いて、それでも掘ったのか」


「危険であることは、価値があることと同じだと考える者もいる」


「お前も同じだろ」


 シアが言った。


「否定はしない」


「なぜ自分で掘らなかった」


「魔剣かどうかも分からないものへ、何年も費やすつもりはなかった」


「ローディアに掘らせれば、中に何があるか分かる」


「そう考えた」


 グラウスはあっさり認めた。


「危険なら、ローディアが対処する。価値があるものなら、いずれ情報が出る」


「何も知らない人間が巻き込まれるとは考えなかったのか」


「考えなかったとは言っていない」


「考えたうえで流した?」


「ああ」


◆ 腹に据えかねたもの


「先代から近づくなと言われていたのに、なぜ場所を流した」


 セトが尋ねる。


 グラウスはすぐには答えなかった。


 隠すためではない。


 言葉を選んでいるように見えた。


「あの方は、人間が触れるべきものではないと言っていた」


「だから?」


「人間には使わせない。自分の力も、人間へ預けるかどうかは自分で決める」


 グラウスの声に、わずかな硬さが混じる。


「すべてを精霊王が決める。それが正しいと考えていた」


「それが腹に据えかねたのか」


「ああ」


 グラウスは否定しなかった。


「人間が作ったものなら、人間が使えるかどうかも人間が確かめればいい」


「使ってよいものか分からなくても?」


「分からないから確かめる」


「世界を枯らしてもか」


「今、何が起きている」


 シアが鉄格子へ近づいた。


「広い範囲から原光が吸われている」


「原光?」


「お前が遺跡を教えた方向へ、世界の力が引かれている」


 グラウスの表情が、わずかに変わった。


「何かを起動したか」


「たぶん」


「そうか」


 驚きはあった。


 だが、後悔は見えなかった。


◆ 選んだ責任


「お前が起動したのか」


 セトが尋ねる。


「違う」


「遺跡を掘らせるきっかけは作った」


「情報を渡しただけだ」


「同じだとは言わない。だが、関係がないとも言わせない」


 グラウスはセトを見る。


「関係がないとは言っていない」


「なら、知っていることを全部話せ」


「今話したことがすべてだ」


「入口までの道は?」


「説明できる」


「地図へ示せるか」


 グラウスが固定された腕を見る。


「口で説明することになる」


「構わない」


 グラウスは抵抗しなかった。


 質問されれば答える。


 だが、自分から何かを付け足すこともない。


 シアが鉄格子越しにグラウスを見る。


「先代を殺した時も同じだ」


「何がだ」


「自分が最後に手を下したわけではないと言う」


「私はそのようなことを言っていない」


「魔剣が吸った。先代が止めようとした。ローディアの人間が掘った」


 シアの声が低くなる。


「お前はいつも、自分が動かしたところだけを小さく言う」


「私一人ですべてが起きたわけではない」


「一人で全部したかどうかの話ではない」


 シアはグラウスから目を離さない。


「場所を流したのは、お前が選んだことだ」


 グラウスは答えなかった。



※第12話「枯れ始めた森」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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