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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第12話 枯れ始めた森

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(二)グラウスの足取り

◆ 東から来る報告


 セトとシアは、その日のうちに街道沿いの町へ向かった。


 町の役所には、周辺の村から異変の報告が集まっていた。


 森が枯れた。


 畑の作物が弱った。


 井戸の水を引き上げる術が使えなくなった。


 風を利用して走る荷車が動かなくなった。


 町の術士たちは、精霊力の流れが乱れていると考えていた。


「乱れているわけではない」


 シアが言った。


「少ないだけだ」


「違いがあるのか」


 役人が尋ねる。


「乱れているなら、どこかには集まる。今は、この辺り全体が薄い」


 役人は机の上へ地図を広げた。


 異常が報告された場所に印が付いている。


 北にも南にも印はあった。


 だが、東へ行くほど数が多い。


 異常が始まった時期も、東の方が早い。


「国境の向こうでは、さらにひどいらしい」


 役人が言った。


「ローディア王国から来る商人の話では、精霊術がほとんど使えない土地も出始めている」


「何か調べているのか」


「書状は送った。返答はまだない」


 セトは地図を見る。


 山の森。


 東の村。


 街道沿いの林。


 異変は一つの方向から広がっているように見えた。


◆ グラウスの足取り


 役人が別の書類を取り出した。


「東といえば、気になる記録がある」


「何だ」


「グラウスの移動記録だ」


 魔剣を使った連続襲撃事件。


 その被害範囲を確かめるため、グラウスが立ち寄った町や、通過した関所が調べられていた。


「グラウスは数か月前、東の国境近くへ入っている」


 役人が地図上の山地を指した。


 異変が強くなっている方向と重なる。


「その後、ローディア側の調査隊が同じ山地へ入ったという記録もある」


「何を調べていた」


「分からん。だが、持ち込んだ道具と人員の数を見る限り、普通の地形調査ではない」


「グラウスが情報を渡した証拠は?」


「まだない」


 役人は書類を見下ろす。


「だが、調査隊が動き始めたのは、グラウスが国境を越えた直後だ」


 場所と時期が重なっている。


 偶然と決めるには近すぎた。


「本人に聞く」


 セトが言った。


◆ 牢の中


 グラウスは、王国の拘置牢へ収監されていた。


 大会の準優勝者を殺したこと。


 街道で人や魔物を襲ったこと。


 魔剣によって精霊力を奪ったこと。


 複数の罪について取り調べを受け、裁判を待っている。


 石造りの通路を進む。


 鉄格子の向こうで、グラウスは壁へ背を預けて座っていた。


 黒い長衣は取り上げられ、簡素な囚人服を着ている。


 両腕は厚い布と固定具で覆われていた。


 魔剣から逆流した力によって焼かれた腕は、指すらまともに動かせない。


 グラウスはセトとシアを見る。


 自分からは何も言わなかった。


「東の国境近くへ行ったな」


 セトが尋ねる。


「行った」


「山の中へ入ったか」


「入った」


「そこで何をした」


 グラウスは短く答えた。


「魔剣を探していた」


◆ 別の魔剣


「持っていたものとは別の?」


「ああ」


 グラウスは隠す様子もなく答える。


「精霊剣が剣の姿のまま残ることがあるなら、魔剣が一つだけとは限らない」


「実際に複数あるかもしれない」


 シアが言った。


「だから探した」


「見つけたのか」


「魔剣は見つからなかった」


「では、何を見つけた」


「古い遺跡だ」


 セトとシアは顔を見合わせた。


「どのような遺跡だ」


「地中に埋まっていた。入口の一部だけが地表に出ていた」


「中へ入ったのか」


「入っていない」


「なぜだ」


「扉を開けられなかった」


 グラウスは淡々と続ける。


「石とも金属ともつかない素材だった。白刃でも傷が付かなかった」


「黒刃は?」


「試した」


「それでも開かなかった?」


「ああ」


 グラウスは焼けた腕へ視線を落とす。


「魔剣の気配もなかった。そこで時間を使う理由はなかった」



※第12話「枯れ始めた森」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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