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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第11話 名を呼ぶ剣

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(八)砕ける魔剣

◆ 最後の力


 グラウスが魔剣を両手で構えた。


「話は終わりだ」


 刀身の亀裂へ、さらに炎が集まる。


 傷を塞ぐのではない。


 壊れることを承知で、残る力をすべて引き出そうとしている。


『器が持たない』


「魔剣の方も、もう持たない」


「壊れる前に、私が勝つ」


 グラウスの周囲から火が消えていく。


 魔剣へ吸い込まれている。


 修行場の熱が、一度下がった。


 次の瞬間、刀身から赤黒い炎が噴き上がる。


 岩壁の上まで届く。


 倒れていた一族の者たちが、祖父に支えられながらさらに距離を取る。


「セト!」


 祖父が叫ぶ。


「その剣を受けるな!」


「分かってる!」


 だが、背後には負傷者がいる。


 完全に避ければ、炎は彼らへ届く。


『斬るしかない』


「ああ」


◆ 二人で決める


『亀裂へ当てる』


 シアが言う。


「一度で壊せるか」


『分からない』


「失敗したら?」


『もう一度やる』


「力は残るか」


『残す』


「なら頼む」


『セトも外すな』


「外さない」


 グラウスの魔剣が振り上げられる。


 セトは炎の剣を下段へ構えた。


 狙うのは、根元近くに入った亀裂。


 巨大な炎に隠れ、今は見えない。


 だが、位置は覚えている。


「合図は極炎だったな」


『ああ』


 グラウスが踏み込む。


 魔剣が振り下ろされる。


 炎が落ちる。


 セトは前へ出た。


「極炎!」


◆ 交差する火


 シアが、剣の一点へ力を集める。


 セトの体へ流していた力も、一瞬だけ刃へ移す。


 足が重くなる。


 それでも、踏み込んだ勢いは残っている。


 セトは精霊剣を振り上げた。


 赤黒い魔剣と、白に近い炎の剣が交差する。


 衝撃が修行場全体へ走る。


 地面が割れる。


 岩壁から石が落ちる。


 グラウスの魔剣が、精霊剣の力を吸おうとする。


『渡さない』


 シアが炎を引き戻す。


 吸われるより先に、亀裂へ力を集中させる。


 セトは剣を押し込まない。


 亀裂へ当てた切っ先を横へ滑らせる。


 器そのものを切り開く。


 赤黒い刀身から、乾いた音が響いた。


 一つ。


 二つ。


 亀裂が広がる。


「壊れるものか!」


 グラウスが魔剣へさらに力を流す。


 刀身の内側から、炎が亀裂を押し広げた。


◆ 砕ける魔剣


 魔剣が砕けた。


 刀身の中央から折れたのではない。


 細い亀裂が全体へ走り、赤黒い剣が無数の破片へ分かれた。


 その内側に蓄えられていた炎が、行き場を失う。


 一瞬だけ、すべての火が止まった。


 次に、修行場を覆う光が生まれた。


『セト、下がれ!』


 シアが精霊剣の火を広げる。


 セトの前へ炎を集める。


 魔剣から噴き出した火がぶつかる。


 先代の火。


 シアから奪われた火。


 人間や魔獣、一族の者たちから吸い取った力。


 長い年月の中で集められ、誰のものだったのかも分からなくなった精霊力。


 それらが一斉に解放された。


◆ 逆流


 火の多くは、魔剣を握っていたグラウスへ向かった。


 壊れる直前まで、グラウスは魔剣へ自分の精霊力を流し込んでいた。


 使い手と剣をつないでいた道を、行き場のない力が逆に流れる。


「ぐああっ!」


 グラウスの両腕を炎が包んだ。


 手から肩へ。


 服が燃える。


 皮膚が焼ける。


 グラウスは倒れながら、腕を地面へ押しつけた。


 それでも火は消えない。


「シア、止められるか」


『あれは、わたしの火だけではない』


「このままでは死ぬ」


『外へ逃がす』


 精霊剣から炎が伸びる。


 グラウスの腕を包む火へ触れる。


 すべてを消すことはできない。


 だが、集中していた熱を周囲へ散らす。


 炎の一部が空へ上がる。


 赤い光となり、薄く広がっていく。



※第11話「名を呼ぶ剣」は全十回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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