(四)終わらない記録
◆ 終わらない記録
時間が過ぎても、太陽の内側では同じような現象が繰り返された。
表の核に似た流れが集まる。
形を取りかけ、崩れる。
その後に訪れる静けさは、次の再生によって破られた。
セトは眠る前に確認した現象を、目覚めた後のネアの報告とつなぎ合わせた。
観測者が違えば、細かな見え方も変わる。
だから、自分が見ていなかった時間に何が起きたかを、勝手に補わない。
確認できた再生と、確認できなかった間隔を分けて覚える。
地上で天文記録を作っていた時と、やることは変わらなかった。
「昨日より、静かじゃないか?」
シアが尋ねる。
「静かな時間もある。でも、再生が止まったとは言えない」
「毎回、同じ答えだな」
「同じ現象が起きてるからな」
太陽から離れすぎれば、小さな原光の乱れを捉えにくくなる。
近づきすぎれば、位置を保つための負担が増える。
四人は無理に接近せず、観測できる範囲で距離を調整した。
フィオラがセトの体温と水分を保ち、必要な力を補っている。
それでもセトは眠り、目を覚まし、再び観測へ戻らなければならなかった。
見つけた回数を増やすことより、何を確かめられなかったのかを忘れない方が難しい。
眠っている間に中心が現れても、セト自身がそれを見たことにはならない。
ネアの報告を聞き、二人で確認できた範囲をつなぎ合わせた。
何日も、同じ場所で過ごした。
次に気づいた時には、それが何週間にもなっていた。
セトが知っている地上の暦で、およそ一か月が過ぎようとしている。
シアとネアにとっての一年近い戦闘に、さらに長い待機が重なった。
「まだ戻る」
「ええ。また同じ流れです」
赤い巨体が現れたわけではない。
四人の誰も、再び攻撃を放ってはいなかった。
それでも核に似た乱れが残る限り、セトは帰ると決められなかった。
◆ 不規則な間隔
表の核に似た流れが崩れてから、次の乱れが現れるまでの間隔は一定ではなかった。
ほとんど途切れずに現れる時もあれば、しばらく何も感じられない時もある。
セトはその違いが再生能力の変化を示しているのか確かめようとした。
最初は、長い空白が増えているようにも思えた。
太陽の中で何度も破壊され、再生の力が弱まっているのかもしれない。
だが、長く途切れた直後に、短い間隔で続けて現れることもあった。
ただ時間の長さだけを比べても、一つの規則にはならない。
「長く戻らなかった時もあるんだろ?」
シアが尋ねる。
「ああ。でも、その次はすぐ戻った」
「じゃあ、戻る力が減ってるってことじゃないのか」
「まだ分からない」
ネアが別の方向から原光を確かめた。
太陽内部の大きな流れに、小さな乱れが紛れ込むこともある。
見えなかった時間がそのまま再生していなかった時間とは限らない。
「見つけられなかっただけ、という可能性も残ります」
「それだと、いつ終わったか分からないじゃないか」
「ですから、複数の位置から確認しているのです」
シアは不満そうに太陽を見た。
その間にも、新しい流れの中心が現れた。
セトとネアがほぼ同時に気づき、すぐ後に崩れたことを確かめる。
「今のは、かなり短かったな」
「ええ。ですが、次がいつ現れるかまでは予測できません」
「予測できないなら、何を待つ?」
「戻らないことを確認できるまでだ」
セトは答えながら、自分でもそれが簡単ではないと分かっていた。
今まで何度も戻ってきた敵を、次は戻らないと判断するには、ただ長く待つだけでは足りない。
流れを追い続け、別の場所にも同じ兆候がないことを確かめる必要がある。
長い空白が続けば続くほど、もう終わったのではないかと期待してしまう。
その直後にまた流れが現れると、どこかで落胆する自分がいる。
期待や落胆を理由に、次の一回を見逃すわけにはいかなかった。
それでも、帰還を急いで判断を誤るよりはよかった。
四人があの星へ戻る時、終焉の炎まで連れ戻すわけにはいかなかった。
※第67話「太陽へ落とす」は全七回です。
続きます。
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