(三)消えては戻る核
◆ 同じ場所の乱れ
小さな乱れは、少しずつ周囲の原光を集めた。
以前なら、その中心から赤い筋が伸び、胸部や四翼へと肉体が作られていった。
だが、太陽の内側では形が定まらない。
集まった流れが一つへまとまる前に、外側から崩される。
「戻った」
「見えるのか?」
シアが尋ねた。
「形は見えない。でも、同じような中心ができてる」
「また、こっちへ飛び出してきたりしない?」
「今はその兆候がない。肉体を作る前に、流れが崩れてる」
ネアも原光の変化を確認していた。
中心に集まる動きが途切れた直後、同じ辺りに似た流れが生まれる。
そして、もう一度崩れた。
観測できるのは原光の変化までで、核の輪郭そのものではない。
それでも、繰り返す順序は終焉の炎の再生に似ている。
「予想どおりです」
ネアが言った。
「表の核を戻しても、維持できていません」
「じゃあ、もう一発撃てば終わる?」
「いや。いま撃つ必要はない」
セトは首を振った。
追加の砲撃が届くまでに核が別の場所へ移る可能性もある。
それより、何もしなくても中心が崩れている事実の方が重要だった。
太陽の中では、再生すること自体が肉体を保つ結果につながらない。
シアはまだ納得しきれない様子だった。
攻撃を止めれば、相手は必ず元へ戻る。
それを何度も見てきたからこそ、今も動かずに待つことの方が落ち着かなかった。
それでも、セトの言葉を聞いて分霊核を動かすことはしなかった。
「何回くらい続けば終わる?」
「分からない。一度で戻すのをやめるなら、もう終わってる」
「なら、待つしかないな」
シアは太陽を見た。
中心が現れては崩れ、また現れる。
四翼も砲口も腕も作られない。
終焉の炎は、再び巨体へ戻ろうとするたび、同じ壁にぶつかっていた。
核の再生を止めているのが何なのか、セトにはまだ分からなかった。
ただ、壊し続けなければならなかった戦いが、観測し続ける時間へ変わったことだけは確かだった。
◆ 交代の観測
どれほど待っても、乱れが完全に止まる様子はなかった。
太陽の内側で中心が現れ、崩れ、また現れる。
セトはそのたびに時刻と変化を覚えようとしたが、地上のように報告用紙を広げられる環境ではない。
数を追うだけでも集中力が必要で、やがて目の奥が重くなってきた。
『セトさん、休んでください』
「もう少しだけ見ていたい」
『先ほどから、同じ位置を何度も確認しています』
「分かった。少し眠る」
フィオラの二翼は生命維持のための循環を続けられる。
だが、頭の疲れまで消してくれるわけではない。
セトは翔嵐を握ったまま姿勢を安定させ、意識を休めた。
「観測は私が引き継ぎます」
ネアが太陽へ向き直る。
「シアは周囲を見ていてください。何かが近づいたら、まず知らせてくださいね」
「分かった。でも、核が戻ってきたら?」
「その時は私も気づきます。フィオラ、セトをお願いします」
『はい。変化があれば起こします』
シアの赤い四翼が、セトたちの少し前へ移った。
見える範囲に終焉の炎の巨体はない。
それでも、また現れる可能性を無視することはできなかった。
シアは攻撃する相手もいない方向をじっと見張った。
敵の動きを読むより退屈な時間だったが、セトが眠る間だけでも何も起こさせたくなかった。
ネアの方も、時折短く原光の変化を伝える以外は観測に集中していた。
しばらくして、フィオラがセトへ呼びかけた。
『セトさん、起きられますか』
「ああ。何かあった?」
『核に似た流れが、また現れました』
セトが太陽の方へ意識を向けると、乱れはすでに崩れ始めていた。
ネアが、その間に見た変化を手短に伝える。
セトの知らないところでも、観測は途切れていなかった。
「ありがとう。今度は俺が見る」
「では、私たちも少し力を抑えます」
ネアとシアが位置を入れ替える。
四人は役割を交代しながら、同じ場所を見守り続けた。
※第67話「太陽へ落とす」は全七回です。
続きます。
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