(三)今度は吸わせない
◆ 二本を隠さない
「シア」
セトが呼ぶ。
「ああ」
シアが炎を放った。
火はグラウスではなく、白刃へ向かう。
赤い火が白い刀身へ触れた。
白炎が生まれる。
右手に白炎。
左手に黒刃。
セトは二本を構えた。
「白炎で前から行く」
「黒刃で魔剣を崩す」
「前と同じだ」
「前は一本ずつだった」
「今度は違う」
セトが踏み込む。
グラウスも赤黒い魔剣を構えた。
白炎と魔剣が正面からぶつかる。
前回と同じように、魔剣が白炎の力を吸い始めた。
セトは押し合わない。
左の黒刃を、二本の剣が触れている場所へ差し込む。
黒刃が魔剣を包む火へ触れた。
赤い光が崩れる。
吸い込まれていた白炎の流れが途切れた。
セトは右手を返した。
白炎が魔剣の横を滑り、グラウスの肩へ向かう。
◆ 吸わせない
グラウスが後ろへ下がった。
白炎の切っ先が上着を浅く裂く。
「今度は吸わせない」
セトが言う。
「一本を増やしただけで勝ったつもりか」
グラウスの左手に白刃が現れた。
魔剣と白刃。
二本を左右から振る。
セトは右の白炎で白刃を受けた。
左の黒刃を魔剣へ向ける。
二本が同時にぶつかった。
白い火が散る。
魔剣の赤い光が揺れる。
前回のように、片方へ対処している間にもう一方を受ける必要はない。
セトは白炎で相手の白刃を押し返す。
黒刃は魔剣の力だけを崩す。
「右で戦い、左で崩す」
祖父に何度も言われた動き。
両方で勝とうとしない。
白炎でグラウス本人へ届く道を作る。
黒刃は、その道を魔剣に塞がせない。
◆ シアの援護
グラウスが魔剣を大きく振った。
赤い炎が放たれる。
セトは黒刃を向けた。
炎が触れた場所から崩れる。
すべては消せない。
残った火が左右から回り込む。
シアが小さな炎をいくつも放った。
赤い炎同士がぶつかる。
グラウスの火の流れがわずかに変わり、セトの両側を通り過ぎた。
「今だ」
シアが言うより前に、セトは進んでいた。
グラウスの火が薄くなった場所へ踏み込む。
白炎がグラウスの胸へ迫る。
グラウスは左の白刃で受けた。
右の魔剣が、セトの黒刃を狙う。
セトは黒刃を引いた。
魔剣を避け、そのままグラウスの白刃へ触れさせる。
相手の白刃が根元から崩れた。
支えを失ったグラウスの左手が外へ流れる。
セトは白炎を振り抜いた。
◆ 前回との違い
グラウスの胸元が斜めに裂けた。
深くはない。
だが、血が上着へにじんだ。
「届いたな」
シアが言う。
「ああ」
セトは距離を取らない。
白炎を続けて振る。
グラウスが魔剣で受けようとする。
黒刃を先に当てる。
魔剣の周囲にある火が乱れる。
吸収が始まる前に、白炎を引く。
再び別の角度から斬り込む。
シアの火が、グラウスの足元へ置かれる。
避けた先へセトが白炎を振る。
グラウスは黒刃を作った。
白炎の側面へ触れさせる。
刀身の一部が崩れる。
セトは崩れた場所だけを短く作り直した。
白炎がすぐに戻る。
「前より速い」
グラウスが言う。
「同じやり方で負けるか」
◆ グラウスの二刀
グラウスの黒刃が消える。
代わりに白刃が現れた。
白刃でセトの白炎を受ける。
魔剣から火を放つ。
セトは黒刃で崩す。
グラウスが白刃を消す。
左手に黒刃を作り、セトの白炎へ差し込む。
セトは白炎を引く。
黒刃で魔剣へ触れる。
互いの二本が、何度も入れ替わる。
グラウスは魔剣を消せない。
左手の白刃と黒刃だけを切り替えている。
セトは白炎と黒刃を保ったまま戦う。
「切り替える時に隙がある」
セトが言う。
「私の真似をして、そこまで見えるようになったか」
グラウスが白刃を作る途中。
セトは黒刃を左手へ向けた。
形になる前の白い光が崩れる。
白刃は完成しなかった。
そのまま白炎で斬り込む。
グラウスは魔剣一本で受けた。
黒刃が横から魔剣へ触れる。
吸収が止まる。
白炎が魔剣を押し下げた。
※第10話「再戦」は全六回です。
続きます。
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