(一)星華と星穿
◆ 星華
終焉の炎。
その向こうに、太陽。
二つは、一本の射線上へ並んでいた。
終焉の炎の再生は、ほとんど終わっている。
四枚の赤い翼が広がり、胸部の砲口へ原光が集まっていく。
先に撃たれれば、苦労して整えた射線が崩れる。
セトは右手の極炎と左手の絶光を握り直した。
シアが七つの赤い分霊核を広げる。
ネアの七つの黒い分霊核も、別々の位置へ動いた。
右手の精霊剣を含む八つの赤。
左手の精霊剣を含む八つの黒。
十六の射点が、終焉の炎を捉えた。
『準備できた』
シアの声が右手から伝わる。
『こちらも問題ありません』
左手のネアも続いた。
終焉の炎の胸部で、赤い光がさらに強まる。
セトは十四個の分霊核の位置を確認した。
赤と黒を同じ力へ変えるのではない。
二つの異なる流れを、それぞれ保ったまま、同じ瞬間へ合わせる。
分霊核の位置。
二本の精霊剣の向き。
終焉の炎までの距離と、その向こうにある太陽。
どれも、誘導を終えて射線をそろえた時からずれていない。
精霊回路は増大する負荷に合わせて流路を変え、赤と黒を滞らせずに通していた。
胸部に集まる赤い原光は、さらに勢いを増している。
シアとネアが射点の向きを微修正すると、セトも最後尾から軸を合わせた。
十六門の一つでも向きが外れれば、削るべき範囲へ力が届かなくなる。
終焉の炎の砲口で、赤い光が弾けた。
「星華!」
八本の赤い線と八本の黒い線が、同時に宇宙を走った。
赤い火が肉体を貫き、黒い月が原光の流れを分断する。
胸部の砲口は撃ち返す前に消え、四枚の翼が切り離された。
頭部、腕、胴体も、赤と黒の光の中で失われていく。
十六本の線が異なる位置を通り、巨体の中心までも削り取った。
赤い巨体が消えた。
中心へ集まっていた原光も、一度は途切れる。
だが次の瞬間、何も残っていないはずの位置へ小さな赤い光が現れた。
周囲から原光が届くより早く、表の核と呼んだ中心が戻っている。
「やはりほぼ一瞬で修復するのか。ただ、核の周りの質量は大幅に削れた」
『次』
シアが短く促した。
「ああ」
星華の目的は果たした。
表の核を守る肉体がない今なら、次の一撃を直接通せる。
再生が広がる前に、もう一つの大砲撃へ移る。
◆ 星穿
セトが、表の核から太陽へ続く射線を示した。
シアとネアが、それぞれ七つの分霊核を動かす。
今度は終焉の炎を囲まない。
赤と黒の核が、セトと表の核を結ぶ一本の線へ移動していく。
最もセトに近い位置へ一つ。
その前へ、次の一つ。
十四個の分霊核が、互いの力を通せる間隔を保ちながら一直線に重なった。
セト自身も最後尾へ移動し、右手の極炎と左手の絶光を同じ方向へ向ける。
二本の精霊剣。
十四個の分霊核。
十六門すべてが、一本の射線に並んだ。
星華の負荷がまだ回路に残っている。
赤い流れが増えれば、空いた部分へ道が広がる。
黒い流れが続けば、別の経路がそれを受け止める。
ヴァルナに再調整された回路は、二本の精霊剣から届く力を止めなかった。
ただし、負荷が消えるわけではない。
セトは八翼の安定を確かめながら、最後の射点まで意識を通した。
赤い核も黒い核も、動かしているのは二人だ。
セトは二つの流れが同じ線から外れないよう、全体の位置と負荷に意識を向けた。
別々の砲撃を同じ場所へ繰り返すのではない。
一つの砲撃を十六門へ通し、それぞれの門が力を加える。
広げず、散らさず、一本へ集める。
双天・星穿のためにそろえた配置だった。
表の核から赤い筋が伸びる。
失われた肉体が作り直されようとしていた。
セトは二本の剣へ力を流した。
「双天!」
『星穿!』
シアとネアの声が重なった。
二本の精霊剣から放たれた赤と黒の力が、一つの砲撃となって射線へ入る。
最初の分霊核を通過する瞬間、その核の出力が加わった。
続く核も同じ流れへ力を重ねる。
次の核。
その次の核。
十四個を抜けるたび、光は細さを保ったまま密度と速度を増した。
十六門分の力が一本へ集約され、双天・星穿が終焉の炎を貫いた。
再生しかけた肉体が消し飛ぶ。
表の核も中心を貫かれた。
だが、核は同じ位置へ戻る。
その瞬間、維持された射線が再び核を貫いた。
壊れる。
戻る。
戻った直後に、また貫かれる。
ほとんど一瞬のうちに破壊と修復が繰り返され、そのたびに核へ太陽方向の速度が加わった。
赤い光が激しく明滅しながら加速する。
そして、太陽の白い輝きへ突入した。
赤い光は白の中へ飲み込まれ、見分けられなくなる。
射線が途切れても、核へ与えた速度は残った。
表の核はそのまま、太陽の内側へ落ちていった。
※第67話「太陽へ落とす」は全七回です。
続きます。
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