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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第66話 表の核、裏の核

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(七)太陽へ向ける

◆ 逃げ道を残す


 終焉の炎の左側へ、シアの赤い分霊核が移動した。

 一筋の火が放たれる。

 再生途中の肉体を消し飛ばすほどの力はない。

 表面を弾き、終焉の炎の向きをわずかに右へ変える。


 右側では、ネアの黒い分霊核が原光の流れを薄くした。

 終焉の炎は進もうとしていた方向を変え、反対側へ逃れた。

 その先には、あえて何も置いていない。

 太陽へ向かう方向だった。


 一年近く戦ってきたシアとネアは、終焉の炎が複雑な作戦を読んで動いたところを見ていない。

 セトが地上から観測した位置の変化だけでは、回避の細かな理由まで分からなかった。

 だが、二人が今まで見てきた反応と照らし合わせれば、攻撃を受けた側から離れ、流れを乱された場所を避けるという動きは一貫している。


「左からもう一度だ。正面は空けておけ」

『分かった』


 シアが火を当てる。

 ネアが右側の逃げ道を狭める。

 少し下へ動けば黒い分霊核が先へ回り、上へ逃げようとすれば赤い分霊核が小さな攻撃を当てた。

 正面だけは空いている。


 終焉の炎は、残された方向へ進んだ。

 敵が太陽を認識している様子はない。

 目の前の不快な流れから離れているだけに見えた。


『ハエとか、こういう飛び方するよな』

『ハエはハエなりに頑張って逃げていると思いますよ』

「集中しろ」

『してる』


 終焉の炎の背中に、四枚の翼が戻り始めた。

 まだ薄く、輪郭も不安定だ。

 それでも推進力が生まれ、空けられた方向へ速度を上げる。

 進行方向の先で、太陽が大きくなった。


◆ 進路の修正


 再生した四翼が力を増すにつれ、終焉の炎の移動が速くなった。

 同じ側から火を当てても、先ほどより大きく向きが変わる。

 セトは星の位置と敵の進路を見比べ、次に空ける方向を調整した。


「少し右へ寄った。黒の位置を変えてくれ」

『こちらですか』

「ああ。赤は追い込まずに待ってくれ」

『分かった』


 ネアの分霊核が先へ回り、原光を薄くした。

 敵はその領域から離れ、再び空いている側へ進む。

 シアは小さな火を当てるだけに抑え、無理に押し戻そうとはしなかった。

 力を込め過ぎれば、せっかくそろえた進路が大きく乱れる。


 セトは八翼を維持したまま、二人の射点と敵の動きを同時に見た。

 赤と黒の流れは増減を繰り返している。

 それでも精霊回路は流れに合わせて形を変え、以前のような詰まりが起こらない。

 十四の水球を繰り返し動かした時間が、ようやく実戦につながっていた。


『こっちの方が、派手に撃つより簡単だな』

「当てる力は小さくていい。難しいのは、逃げる先を残す方だ」

『なら、その先を私が見ます』


 ネアが黒い分霊核をわずかに引いた。

 敵は空いた方向へ進み、速度を保ったまま太陽へ向かう。

 予想より大きく曲がることはあっても、反応の仕方は変わらない。

 複雑な策略を見破ったのではなく、避けられる場所へ逃げ続けているだけだった。


 終焉の炎の頭部が持ち上がった。

 胸部の組織も厚みを増し、奥へ原光が集まり始めている。

 あの大型砲口が戻る前に、最終位置を確保しなければならない。


◆ 太陽へ向ける


 セトは終焉の炎を追った。

 八枚の翼が、赤と黒の流れを別々に循環させている。

 以前の八翼なら、移動しながら十四個の分霊核による誘導を続けるだけでも、負荷が積み重なっていた。

 今はまだ余裕がある。


 シアとネアの流れを維持しながら、核の配置を変えられる。

 大砲撃へ使う力も残っている。


『まだいける?』

「ああ」

『無理なら早めに言ってください』

「今は問題ない」


 終焉の炎の身体は半分近く戻っている。

 胸部の大型砲口はまだ完成していないが、その奥に原光が集まり始めた。

 これ以上の誘導を続ければ、反撃できる状態へ戻ってしまう。


「フィオラ」

「はい」


 射線から外れた位置で追っていたフィオラが答えた。


「このまま少し離れてついてきてくれ。八翼が崩れたら、俺を頼む」

「分かりました」


 フィオラは二翼を広げ、最終攻撃の射線へ入らない距離を保った。

 セトが八翼を解いた後に、また支えられる位置でもある。

 ここから先は八翼の仕事だった。


 セトは終焉の炎の進行方向を見た。

 その先に太陽がある。

 八翼が速度を上げ、終焉の炎の後方へ回り込む。


 シアとネアの分霊核もセトの周囲へ戻った。

 七つの赤。七つの黒。

 十四個が、次の二撃へ備えて位置を変える。


「ここからなら、全部の力を太陽の方向へ通せる」

『星華で削る』

『続けて、星穿で押し込む』

「ああ」


 終焉の炎の四翼が形を取り戻した。

 頭部が持ち上がる。

 胸部では、原光が一か所へ集まり始めている。

 再生が終わろうとしていた。


 セトは右手の極炎と、左手の絶光を握り直した。

 背後では八枚の翼が大きく開く。


 終焉の炎。

 その向こうに、太陽。

 二つは、一本の射線上へ並んでいた。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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