(六)壊せないなら
◆ 壊せないなら
『その仮説が正しいとして、どうやって倒すのですか』
ネアが尋ねた。
セトが来た理由は分かったが、裏の核を見つけたわけではない。
攻撃が届かないのなら、今までと同じ結果になりかねなかった。
「裏の核は、表の核を戻し続ける」
『そう考えていますね』
「だったら、表の核が戻っても壊される場所へ入れる」
セトは終焉の炎の向こうを見た。
大きな白い太陽が、暗い宇宙に光を広げている。
地上から記録を重ねていた時、その位置へ目を留めた。
今は、二人の力を一方向へそろえれば届くかもしれない距離にある。
『終焉の炎は、火や熱を取り込む可能性があります』
「ああ。だから確実じゃない」
終焉の炎は火の精霊王を核としている。
熱を力へ変える可能性は否定できない。
むしろ、ただの炎であれば、太陽に近づけること自体が逆効果になるかもしれなかった。
「でも、太陽の中で肉体を維持し続けられるかは別だ」
表の核を作り直しても、作った端から壊される。
身体を再生しても、再生した端から失われる。
裏の核へ直接攻撃を届かせるのではない。
裏が表を戻し続けても、巨体の形を保てない場所へ送る。
『それで終わる保証は?』
「ない」
『正直ですね』
「一年間、確実な方法は見つからなかった」
だから来た。
確実ではなくても、今までとは違う結果を作れる可能性がある。
セトは二本の精霊剣を握り、返事を待った。
『分かった』
シアが短く答えた。
『太陽へ落とす』
『試す価値はあります』
ネアも同意した。
◆ 二人だけでは足りない
シアとネアだけでも、十六門を同時に使うことはできる。
それを証明したのが、つい先ほどの即席の双天・星華だった。
だが、二人は別々の場所に立ち、赤と黒をそれぞれ扱っていた。
発射の瞬間をそろえられても、すべての流れを一つの回路へ通すことはできない。
『まず、また星華を撃つのか?』
「ああ。ただし、今度は俺を中心に使う」
『その後、すぐ星穿へ切り替えるのですね』
「そうだ。間を空ければ、周りの身体が戻る」
第一撃で巨体の肉体と四翼を削る。
第二撃では、剥き出しになった中心へ十六門分の力を一本で通す。
その切り替えの間、セトは八翼を保ち続けなければならない。
以前なら、星華の負荷を受けただけで次の大砲撃が難しくなっていた。
今はヴァルナが直した流路が、負荷を分散させてくれる。
それでも無制限ではない。
どれだけ余裕が残るかは、撃ってみなければ分からなかった。
『二発目まで支えられる?』
「支える。俺がここへ来たのは、そのためだ」
右手のシアが答えるより早く、左手のネアが続けた。
『もし八翼が崩れたら、攻撃を続けるよりセトの保護を優先します』
「分かってる。だからフィオラにも離れて待ってもらう」
フィオラは少し後方で二翼を保ち、二本の剣と十四個の分霊核を見ていた。
今の自分が前へ出ても、砲撃を増やすことにはならない。
だが、セトを回収する者が射線の外にいることには意味がある。
「二人も、撃つ前に無理だと思ったら言ってくれ」
『言われなくても分かる』
『シアは特に、言ってくださいね』
『分かったよ』
セトは小さく息を吐き、残りの距離を確かめた。
やるべきことは決まった。
あとは敵の向きをそろえなければならない。
◆ 戻り始める巨体
終焉の炎の中心から、太い赤い塊が伸びた。
胸部が戻り始めている。
続いて頭部に相当する隆起が生まれ、切断された組織が周囲へ広がった。
まだ腕も翼もない。
それでも、一年前から何度も見てきた巨体の輪郭が作られ始めていた。
外へ散った破片が戻ってくるのではない。
中心へ集まる原光が、新しい肉体へ変わっている。
その量が増えるにつれ、組織の伸びる速さも上がっていった。
赤い塊の表面で、細い線が何本も枝分かれする。
「話している時間は終わりだ」
『いきなり星華を撃つ?』
「いや」
セトは進む方向を示した。
シアとネアが十四個の分霊核を動かし、終焉の炎の左右へ赤と黒を分けて配置する。
今いる位置で大砲撃を放っても、巨体が太陽へ進むとは限らない。
横へ弾けるかもしれないし、反対へ押せば太陽から遠ざかる。
「まず太陽の方向へ向ける」
赤い塊の片側で、組織が膨らんだ。
再生した部分が不規則に動き、まだ定まらない姿勢を変えようとしている。
今なら大きく削るより、わずかな力で進む向きを変えられる。
「削るな。進む向きを変えるだけでいい」
『ずいぶん小さな攻撃ですね』
「大きく撃てば、どちらへ弾けるか細かく制御できない。今は攻撃を避ける動きを利用する」
『じゃあ、つつく』
「そうだ」
シアは赤い分霊核を一つだけ前へ出した。
ネアは反対側の逃げ道を確かめる。
どちらも大砲撃の準備を崩さず、少量の力だけを使った。
※第66話「表の核、裏の核」は全七回です。
続きます。
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