(五)同じ場所にないもの
◆ 壊したはずの中心
ネアは、直前の星華によって消えた巨体の位置を示した。
確かに、その場所には一時、まとまった肉体が何も残っていなかった。
その後、同じ辺りに赤い塊が現れ、そこから組織が伸び始めた。
『中心を外していた可能性はありませんか』
「一度や二度ならな。でも一年近く、同じように削ってるんだろう?」
『ええ。貫星と絶穿だけではありません。広く削る攻撃も、続けて使っています』
シアの火は肉体を焼き払い、ネアの月は集まる原光を奪う。
同じ部分へ力を重ねる時も、別々の方向から削る時もあった。
それでも、巨体が失った形を取り戻す順序には共通点がある。
『一番最初に、そこへ戻る』
シアは小さな赤い塊を見た。
『身体が全部なくなったみたいに見えた時も、そうだった』
「なら、核が傷つかず残ってたとは考えにくい」
『核ごと壊れて、すぐ戻ったと?』
「その可能性が高い」
セトは、地上で付けた観測記録を思い出した。
天文設備から核は見えていない。
だから、光が弱まった記録だけで核の破壊を証明することはできなかった。
いま二人から聞いたことと、目の前の再生が、その空白を補っている。
ネアは終焉の炎の中心へ視線を戻した。
周囲から取り込まれた原光は、肉体の再生へ流れている。
その流れだけでは、核のような中心が一瞬で元の形へ戻る理由は説明しきれない。
『では、核を戻す働きが、ほかにあるということですね』
「ああ。ただ、どこにあるかが問題だ」
赤い塊の外側で、新しい組織がゆっくりと伸びた。
説明を続けている間にも、再生は止まらない。
◆ 同じ場所にないもの
「仮に、裏の核と呼ぶ」
シアとネアは黙った。
少し離れて待機するフィオラも、セトの説明を聞いている。
「裏の核が表の核を補完している。そう考えれば、これまでの再生と合う」
『表が壊れるたび、裏から作り直されているということですか』
「ああ」
『裏側というのは、身体のさらに奥?』
「違うと思う」
身体の奥にあるなら、貫星や絶穿が届いている。
巨体の中心を何度も貫いた以上、単に肉体の奥へ隠れていたとは考えにくい。
周囲の原光を奪う攻撃も、完全な解決にはならなかった。
「表の核と、同じ位置にあると考えないと合わない」
『同じ場所?』
「同じ場所にあるはずなのに、俺たちがいる空間にはない」
『意味が分からない』
「俺も完全には分からない」
セトは正直に答えた。
直接見えているのは、肉体と同じ側へ戻ってくる赤い中心だけだ。
それを戻している何かは、目を凝らしても見つからない。
「地上では、光が弱まった後、同じ辺りに赤い光が戻るのを見た。今は直接、中心だけが先に戻るのを見てる」
『周囲から集めている原光とは別、ということですね』
「ああ。表の核だけが、何もないところから戻るように見える」
シアも、終焉の炎の中心へ意識を向けた。
『次元の裏みたいなところ?』
「俺も、そういう感じだと思っている」
同じ位置に重なっている。
だが、通常の空間には存在していない。
そう考えれば、同じ一点へ攻撃を重ねても届かなかったことを説明できる。
「この考えが正しければ、表の核を何度壊しても、裏の核が補完する限り戻る」
『じゃあ、裏の核を壊せばいい』
「攻撃を届かせる方法がない」
『何か試した?』
「おまえたちが一年近く試している」
広く削った。一点を貫いた。原光を奪った。
再生する前に、同じ場所へ攻撃を重ねた。
少なくとも、裏側まで届いたと判断できる変化は一度も起きていない。
これはまだ仮説だが、目の前の敵を倒せない理由はそこにあると、セトは考えていた。
※第66話「表の核、裏の核」は全七回です。
続きます。
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