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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第64話 宇宙の膠着

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(七)消えない炎

◆ 即席


 シアは巨体の右へ、ネアは左へ分かれた。

 それぞれの七つの分霊核が、二人の周囲へ広がる。

 終焉の炎の胸部では、大型砲口が次の原光を集め始めていた。

 今なら、再び撃たれる前にこちらの十六門を向けられる。

 ただし、八翼ではない。

 セトが二本の精霊剣を握り、赤と黒の流れを一つにそろえることもできない。

 シアが八門の火を、ネアが八門の月を、それぞれ独立して動かすだけだ。


「即席!」

「双天」


 ネアが続けた。

 シアは笑った。

 別々の射点を一つの場所へ集める必要はない。

 十六門の攻撃が届く時機だけを合わせればいい。

 二人は互いの翼の向きと、巨体の残った部位を確かめた。

 シアの火は胸と肩、四翼を削る位置へ向かう。

 ネアの月はその切断面へ重なり、原光の流れを断つように広がる。

 シアは、ネアが何を狙っているかをもう尋ねなかった。

 ネアも、シアへ細かな指示を出さなかった。

 先ほどシアを横へ飛ばした時と同じように、相手が動く瞬間を信じている。

 二人が同時に叫んだ。


「星華!」


 赤い八本と黒い八本、十六の線が同時に走る。

 赤い火が巨体の胸と腕を引き裂き、四翼の付け根を焼き飛ばす。

 黒い月が損傷した組織へ重なり、戻ろうとする原光を奪って形を崩した。

 砲口へ集まっていた赤い光も、支える肉体とともに散る。

 終焉の炎は次の収束砲を放つ前に、全身を大きく削られた。

 セトを中心とする八翼の一撃ではない。

 それでも、二人が互いを信じて時機をそろえた十六門は、確かに成立していた。


◆ 消えない炎


 終焉の炎の巨体が崩れた。

 両腕は失われ、胸の大型砲口も周囲の肉体ごと消し飛ぶ。

 赤い四翼がちぎれ、残った胴も黒い欠落の中で細かく分かれていった。

 二人は砲撃を終えたところで動きを止めなかった。

 シアが残った赤い組織へ火を通し、ネアが切り離された場所から原光を奪う。

 戻る前にさらに削り、小さな欠片すらまとめて再接続させないようにした。

 やがて、大きな手足も、四翼も、砲口も見えなくなった。

 暗い宇宙に、わずかな赤い光の塊だけが残る。


「これなら……」


 シアが前へ出る。

 ネアは答えず、赤い塊の周囲を確かめた。

 完全に動きを止めたようにも見える。

 だが、黒い欠落の隙間で、細い原光がまだ流れている。

 外から新しい原光が集まり始めた。

 ネアはその小さな変化を見逃さなかった。


「まだです」

「まだ?」


 塊から、一本の細い組織が伸びた。

 続いて二本目が生まれる。

 先ほど原光を奪った場所を避け、赤い流れが別の方向へ組み替えられていく。

 新しい肉体が膨らみ、失われた四翼の一枚が形を取り始めた。

 その横で、次の翼も生まれようとしている。

 即席の星華は確かに成功した。

 これまでより小さく削ることもできた。

 しかし、その結果さえ終焉の炎の再生を終わらせなかった。


「また戻る」

「ええ。即席でも、十分に大きく削れました。足りないのは、再生を終わらせる方法です」

「なら、見つかるまで削る」

「そのつもりです」


 シアの七つの分霊核が再び広がった。

 ネアも黒い四翼の位置を整え、次の射線へ目を向ける。

 何を壊せば止まるのかは分からない。

 それでも、星の外へ運んだ終焉の炎を地上へ戻すつもりはなかった。

 赤い四翼と黒い四翼が、再生する巨体の左右へ分かれる。

 どちらも退かなかった。

 戦いは、終わらなかった。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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