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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第64話 宇宙の膠着

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(五)側面の火

◆ 削って戻る


 シアの星雨が、終焉の炎の右半身を崩した。

 ネアは散華をその切断面へ重ね、再接続しようとする組織から原光を奪う。

 さらに貫星が胸を抜いた時、巨体の輪郭は一度大きく縮んだ。

 だが、四翼に集まった原光が残る肉体へ回ると、失った場所がまた膨らみ始めた。

 攻撃が通らないわけではない。

 通っても、それだけでは終わらないのだ。


「減ったと思ったら戻る」

「私たちも削られた翼を戻しています。相手だけの話ではありません」

「でも、あっちは戻る量が多すぎる」

「巨大な身体ですから。しかも、何度も組み直せます」


 二人は攻撃へ回す門数を減らし、砲口が向くたびに移動のための分霊核を残した。

 終焉の炎が小型砲口を開けば、射線の薄い側へ抜ける。

 大型砲口を作れば、集中が終わる前に側面へ移る。

 その隙に星雨や絶穿を通すと、巨体は再び大きく欠けた。

 反撃の仕方を変えても、シアとネアは対応できる。

 けれど、倒し切れるわけではなかった。


「砲撃なら、こっちの方が上手いのに」

「技術で上回ることと、相手を消せることは別です」

「じゃあ、もっと上手く撃つしかない」

「撃つ場所は考え続けましょう。ただ、他にも条件があるのかもしれません」


 ネアは、自分たちが深く貫いた箇所を思い返した。

 そこに何があったのか、外から確かめる手段はない。

 壊したはずの部分が戻った、という結果だけは見えている。

 敵の砲撃が進歩しても、こちらの射点操作はまだ精密だった。

 それでも、戦況は大きく傾かない。

 互いに削り、削られ、戻る。

 その繰り返しが長引くことだけが、はっきりしてきた。


◆ 側面の火


 終焉の炎の全身から、小さな砲口が沈んでいった。

 胸部に残った大きな穴だけが赤く光り、四翼からの原光を集めている。

 その向きは、巨体の正面へ出ていたネアを捉えていた。

 ネアは四翼を広げ、射線を外すために横へ動く。

 シアは反対側から胸部を見た。

 大型砲口の横には、厚い肉体が盛り上がっている。

 あそこを削れば、砲口の向きを保つ部分まで崩せるかもしれない。


「私を狙っています」

「分かった。横から壊す!」

「攻撃したら、すぐに位置を変えてください」

「任せて!」


 シアは終焉の炎の脇腹へ回った。

 自分と三つの分霊核、合わせて四門を前へ出す。

 残る四つは身体の周囲へ分け、移動と迎撃に備えさせた。

 四門の火が、胸部へ続く厚い肉体を同じ側から削っていく。

 大型砲口の奥では赤い光が膨らんだが、その向きはまだネアを追っていた。

 ネアが逃げるたび、巨大な胸部が少しずつ回転する。

 シアは巨体の回転に合わせて外側へ移り、同じ傷を広げた。

 少しずつ動いていても、巨体から見ればほぼ同じ角度に留まっていた。


「こっちは見てない!」

「見ていないとは限りません。同じ場所に留まりすぎです」

「もう少しで砲口が落ちる!」

「シア、いったん離れなさい!」


 シアの火が脇腹の奥まで通った。

 赤い肉体が大きく裂け、大型砲口を支える部分にも亀裂が走る。

 攻撃は効いている。

 だから、あと一撃で決まるように見えた。

 シアは四門の向きを変えず、次の火を集める。

 その間にネアはさらに距離を取り、巨体の正面から外れようとしていた。

 終焉の炎の四翼が一度だけ強く光る。

 ネアは、胸部へ向かう原光の向きが変わったことに気づいた。



※第64話「宇宙の膠着」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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