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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第64話 宇宙の膠着

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(四)追い続ける光

◆ 集められた砲口


 シアが背後へ回り、三門の火で終焉の炎の左肩を崩した。

 反対側からネアの絶穿が通り、肩と胸をつなぐ肉体に深い穴が開く。

 巨体はバランスを失い、ゆっくりと回り始めた。

 シアはその動きに合わせ、次の射線を肩口へ向ける。


「押せる!」

「そのまま続けてください」


 二人がさらに撃ち込もうとした時、終焉の炎の胸に開いていた小さな砲口が閉じた。

 続けて腹の砲口が沈み、肩と背中の窪みも肉体の内側へ戻っていく。

 シアは攻撃が止まったように見えて、一瞬だけ手を緩めた。

 しかし、砲口へ向かっていた原光そのものは消えていない。

 別々に流れていた赤い筋が、胸部の同じ位置へ伸びていた。


「砲口を減らしてる?」

「違います。集めています」


 胸の中央が大きく盛り上がった。

 周囲の肉体が左右へ開き、今までの窪みとは比べものにならない大きさの穴ができる。

 その奥へ、四枚の翼からも太い原光の流れが接続した。

 全身に散っていた攻撃のための力を、今度は一か所へ集めている。

 大きな砲口の奥で赤い光が何度も収縮し、細い一点へ押し込められていった。


「一本にしたんだ」

「多方向ではなく、一点を貫くための形です」

「私たちの貫星と絶穿みたいに?」

「効果は近いのでしょう。ただし、分霊核を並べたわけではありません」


 ネアは胸部の巨大な砲口へ視線を据えた。

 肉体の配置を変えて力を集めたなら、最初の一撃を止めてもまた形を直す可能性がある。

 再生する巨体を相手に、砲口を一度壊せば終わりだとは考えられなかった。

 穴の中心が白に近い赤へ変わる。


「ネア、離れて!」

「来ます!」


◆ 追い続ける光


 胸部から赤い光が放たれた。

 広く散る光ではない。

 一点へ収束した太い線が、ネアのいた空間をまっすぐ貫く。

 ネアは黒い四翼を傾け、横へ飛んだ。

 避けたはずの光は消えず、巨体の砲口が動くのに合わせて進む方向を変えた。

 一本の光束が、途切れることなく追いかけてくる。

 横から見ていたシアが声を上げた。


「まだ続いてる!」

「砲口を動かしています。射線を外れ続けないと危険です」


 ネアは残していた分霊核を背後へ回し、身体をもう一段横へ押した。

 赤い線が黒い四翼の端をかすめ、先ほど戻った翼の一枚を大きく削る。

 原光の欠落を相手へ向けて広げようとするが、受け止めている間にも砲口の向きが変わる。

 すべてを吸収し続けるのでは、次の方向へ動く余裕を失ってしまう。

 ネアは防御を一点に固めるのをやめ、射線と直角になる方向へ加速した。

 分霊核の一つが身体を横へ押し、収束光の外側へ抜ける。

 ようやく赤い線が黒い翼の横を通り過ぎた。


「大丈夫?」

「避けられました。ですが、あの光は一度撃てば終わりではありません」

「貫星とは違う」

「ええ。八門の出力を集束させた砲撃とは違います。一つの砲口へ原光を流し続けているのです」


 終焉の炎は巨体を回し、胸部の穴を再び二人へ向けた。

 砲口の奥では次の原光が集まり始めている。

 多方向砲撃は逃げ道を狭める。

 一点集中の砲撃は、避けたあとまで追ってくる。

 それぞれの怖さは違った。


「見て、別の方法で作った?」

「そう考えるべきでしょう。攻撃を真似るというより、必要な結果を選んでいるように見えます」


 内部の仕組みまでは分からない。

 だが、戦い始めた時より、敵の攻撃方法が増えていることは確かだった。



※第64話「宇宙の膠着」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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