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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第10話 再戦

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(一)残された紙

◆ 戻らない祖父


 朝の稽古場に、祖父の姿がなかった。


 セトは右手に白刃、左手に黒刃を作ったまま、家の方を見る。


 いつもなら、セトが二本を作る前から木剣を持って待っている。


 遅れているだけかと思ったが、家の中にも気配がない。


「いないな」


 シアが縁側に座ったまま言った。


 体を動かせる程度には回復している。


 昨日からは、一人で家と稽古場の間を歩けるようにもなった。


 だが、炎はまだ以前ほど強くない。


「村の誰かに呼ばれたのかもしれない」


「朝食も食べていない」


 祖父の分だけ、食事がそのまま残っていた。


「先に出ただけだろ」


「剣もない」


 壁に掛けてあった木剣が消えている。


 祖父が普段使う外套もなかった。


 セトは白刃と黒刃を消した。


「少し見てくる」


「わたしも行く」


「休んでろ」


「歩ける」


「まだ戦えるほどじゃない」


「歩くだけなら問題ない」


 止めても付いてくるだろう。


 セトは諦め、シアとともに村の中央へ向かった。


◆ 消えた一族の者たち


 村には人がいた。


 畑へ向かう者。


 家の前で道具を整える者。


 普段と変わらない朝に見える。


 だが、稽古場に集まることの多い一族の者だけが見当たらなかった。


「じいさんを見なかったか」


 セトが近くにいた若い男へ尋ねる。


 男は一瞬、答えに迷った。


「山へ行った」


「何をしに?」


「俺は知らない」


「誰と行った」


「年長の者たちだ」


「何人だ」


「七人くらいだったと思う」


 祖父一人ではない。


 白刃や黒刃を実戦で使える者たちが、まとめて村を出ている。


「どの山だ」


「修行場の方だ」


 村の裏手から続く山道。


 かつて一族の者が、長期間の稽古に使っていた場所がある。


 村から歩けば半日近くかかる。


「いつ出た」


「夜明け前だ」


 セトは家へ戻ろうとした。


「山へ行かないのか」


 シアが尋ねる。


「先に確かめるものがある」


◆ 残された紙


 祖父の部屋は、普段と大きく変わっていなかった。


 古い記録を収めた木箱も残っている。


 だが、机の上に一枚だけ、見慣れない紙が置かれていた。


 祖父の字ではない。


 書き写したものらしく、文章は短かった。


> グラウスへ。

> 封印の記録と、今代のイフリートを山の修行場へ移す。

> 欲しければ来い。


「わたしはここにいる」


 シアが言った。


「嘘を書いたんだ」


「グラウスを呼ぶために?」


「ああ」


 紙の下には、祖父の字で一言だけ残されていた。


> これは一族の問題だ。


 セトは紙を握った。


「勝手なことを」


「わたしたちを巻き込みたくなかったのかもしれない」


「もう巻き込まれてる」


「わたしを使って呼んだ」


「本人を連れていかなければいいと思ったんだろ」


「わたしが行かなければ、グラウスは怒るかもしれない」


「怒らせるために呼んだようなものだ」


 祖父たちは、グラウスがシアを狙っていると知っている。


 新しい魔剣を得るため、シアが精霊剣になるのを待っている可能性も話した。


 そのシアを餌にすれば、グラウスは来る。


「今から行くぞ」


「ああ」


◆ 山道


 セトとシアは村の裏から山へ入った。


 道は細い。


 木の根が地面を横切り、ところどころ岩が露出している。


 シアは自分で歩いていた。


 以前より遅いが、足取りは安定している。


「背負わなくていいのか」


 セトが尋ねた。


「走るなら必要だ」


「今は?」


「まだ歩ける」


「無理になったら言え」


「ああ」


 しばらく進むと、道の脇に白い傷が残っていた。


 木の幹が浅く斬られている。


 さらに先には、黒く変色した草。


「白刃と黒刃の跡か」


「戦いながら進んだ?」


「いや」


 傷はどれも小さい。


 攻撃ではなく、目印として残したものだった。


 祖父たちは、後から誰かが来る可能性を考えていた。


「来るなと言いながら、道は残すのか」


「勝てなかった時のためだろう」


「最初から負けるかもしれないと思っていた?」


「グラウスの強さは話したからな」


「それでも行った」


「ああ」


 セトは歩く速度を上げた。



※第10話「再戦」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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