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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第2話 イフリートとシア

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(二)先代を探して

◆ 一年前の誕生


「お前はいつ生まれた」


「一年ほど前だ」


 見た目は十六歳ほどに見える。


 セトは聞き間違いかと思った。


「一歳なのか」


「そうなる」


「その姿で?」


「精霊王は人間の赤子として生まれるわけではない」


「それは見れば分かる」


 少女は自分の体を見下ろした。


「生まれた時から、今とあまり変わらない」


「では、一年前までどこにいた」


「いない」


「いない?」


「わたしは一年前に形になった。それより前のわたしはいない」


 精霊王が死ぬと、残された力と役目から次代の精霊王が形になる。


「普通は、先代が死んでから一月ほどで次が生まれる」


「お前も、そのくらいだったのか」


「違う。わたしが生まれるまでには一年ほどかかった」


「普通より、かなり長いな」


「ああ」


「なぜ分かる」


「生まれた時に受け継いだものから分かった。先代が消えてから、わたしが形になるまで一年ほど空いている」


「なぜ、そんなにかかった」


「生まれた時に残っていた力が、ひどく薄かった。普通に死んだだけなら、あそこまで減らない」


 少女は、自分が生まれた場所については詳しく話さなかった。


 隠しているというより、説明する必要を感じていないようだった。


◆ 先代の死


「先代は、力を奪われたのか」


「その可能性が高い」


 少女は岩場の端へ移動し、森の向こうを見た。


「役目を引き継いだ時、残っていた力が少なすぎた。傷ついて消えただけでは、ああはならない。何かに持っていかれた」


「殺されたと断定できるのか」


「精霊王は、自分で役目を捨てて次を生むものではない。先代の役目は途中で切れている。力を奪われ、死んだと考えるのが一番合う」


「誰に?」


「知らない」


「どこで?」


「知らない」


「何をされた?」


「詳しくは知らない」


「何も分からないじゃないか」


 少女が振り返る。


「だから探している」


 語気は強くなかった。


 怒りを押し殺しているようにも見えない。


 ただ、分からないものを分かるようにするため、動いている。


「先代が死んだのは、およそ二年前だと思う」


「生まれるまで一年。お前が生まれてから一年か」


「ああ。正確な日までは分からない」


 二年前に火の精霊王を殺し、その力を奪った何者かがいる。


 そして、今の火の精霊王は、その存在を探している。


◆ 復讐ではない


「先代の仇を討ちたいのか」


 セトが尋ねると、少女はすぐには答えなかった。


 考えた末に、首を横へ振る。


「先代のことを覚えていない」


「だから仇ではない?」


「悲しいかと聞かれても、よく分からない。会ったことがないからな」


 冷たい言葉にも聞こえる。


 だが、少女は取り繕っていないだけだった。


「なら、なぜ探す」


「先代を殺せたものが、まだある」


 少女が自分の胸へ手を当てる。


「先代の力を奪ったなら、今のわたしからも奪えるかもしれない。放っておく理由がない」


「自分を守るためか」


「それもある」


「他にも?」


「火の精霊王を殺せるものを、人間が持っているかもしれない」


 人間が持っているとは限らない。


 それでも少女は、人間の関与を疑っていた。


 力を奪うという行為には、自然な死とは違う意図がある。


「また使われる可能性がある。なら、見つけて壊す」


「簡単に言うな」


「見つけてから考える」


「先に考えておけ」


◆ 剣への興味


 少女の視線が、再びセトの右手へ落ちる。


「そのためにも、剣を見せろ」


「どうつながる」


「珍しい力は調べる」


「俺を疑っているのか」


「先代を殺したのは二年ほど前だ。お前ではないと思う」


「年齢で除外されたのは初めてだ」


「だが、お前の術は珍しい」


 少女は倒した大型魔獣よりも、白刃の方へ強い興味を示していた。


「精霊を剣にしているように見えた」


「剣にしているわけじゃない。剣の形に集めている」


 少女の目がわずかに細くなる。


「違いが分かっているのか」


「当然だ。意思のない精霊を集めて、形を固定しているだけだ」


「だけ、と言うには難しい」


 意外なところで評価された。


「普通の精霊術は、力を起こしたら終わりだ。火を出す。風を動かす。形を作っても、長く固定する必要はない」


「剣は残さないと使えない」


「ああ。振っても、受けても、同じ形で残す必要がある」


 少女は納得したようにうなずいた。


「やはり見たい」


「だから近い」


◆ 白い剣


 セトはため息をつき、右手を前へ出した。


 周囲の白い光が集まる。


 怪我をしているため、戦った時より短い刃にした。


 白刃が形を得ると、少女はすぐ目の前まで寄ってきた。


「触るなよ」


「分かっている」


 返事と同時に手が伸びる。


 セトは白刃を引いた。


「分かってないだろ」


「触ればもっと分かる」


「斬れる」


「わたしは硬い」


「そういう問題じゃない」


 少女は刃の側面、切っ先、セトの手元を順番に見る。


「柄まで同じものか」


「全部、同じ精霊で作っている」


「手の中で形を保っているのか」


「腕だけじゃない。全体を固定してる」


「さっきは折れた」


「形を保つ力より、受けた力の方が大きかった」


「なら、もっと強く固定すればいい」


「できるならやってる」


 少女は白刃を見つめたまま、しばらく動かなかった。


 見ているのは形ではないらしい。


「お前の中から出している力だけではない」


「周りの精霊も使っている」


「器用だな」


「お前に言われると、褒められている気がしない」



※第2話「イフリートとシア.」は全三回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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