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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第64話 宇宙の膠着

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(二)炎天・貫星

◆ 炎天・貫星


 ネアが開けた黒い穴の縁に、赤い組織が伸び始めた。

 だが、中央にはまだ空間が残っている。

 シアはそこを見逃さなかった。

 七つの分霊核を呼び戻し、ネアと同じように一直線へ並べる。

 散らばっていた射点が一つの方向を向くまで、わずかな間があった。

 終焉の炎の腕が動いたが、ネアが黒い流れを当て、付け根の動きを鈍らせた。


「通りました。シア!」

「そこへ同じのを撃つ!」

「炎天・星雨とは使い方が違いますよ」

「分かってる。星雨は広く降らせる方」


 シアは八つの射点へ火を集めた。

 狙う場所は一つ。

 ネアが開けた黒い穴の奥だ。

 星雨は八門の火力を広い範囲へ分散させる。

 今度は、それを一本へ集める。

 八門分の火力が一点へ集中すれば、その威力と貫通力は大きく変わる。


「こっちは一本で、星まで貫く」

「貫星ですか」

「うん。炎天・貫星!」

「そのままですね」

「分かりやすいだろ!」


 八つの射点へ集まった火が、一本の赤い閃光となった。

 分散するはずの八門の火力が、細い射線へ集束している。

 赤い光はネアが開けた穴へ突き刺さり、奥に残る肉体を強烈な熱で焼き抜いた。

 巨体の内部を突き抜けた閃光が、背後の宇宙へ長く伸びる。

 集束した火が通った場所から肉体が崩れ、胸部には前後へ貫通する大きな空洞が開いた。


「貫いた!」

「ええ。絶穿で流れを欠かせた場所へ、貫星で火を通せました」

「今度こそ止まる?」


 その答えを待つ前に、穴の縁が赤く動いた。

 残った肉体から細い組織が伸び、空いた場所へ寄り集まってくる。

 ネアは次の攻撃へ備えながら、目を細めた。


「まだです。でも、違う削り方ができるようになりました」


◆ 二人だけの射線


 シアは胸部の穴へ、続けて火を通そうとした。

 ネアは少し離れた場所から、巨体の背面を見ている。

 胸部が貫かれても、背中の組織は残っていた。

 そこから伸びた原光が、穴の周囲へ回り込もうとしている。

 シアの次の火だけでは、正面からの再生を遅らせることしかできない。


「もう一発、正面からいく!」

「少し待ってください。背後からも流れています」

「じゃあ、そっちへ回る?」

「私が後ろへ行きます。シアは正面から注意を引いてください」

「分かった!」


 ネアは黒い四翼を開き、巨体の下を回って背面へ出た。

 シアは真正面に留まらず、腕の届かない斜め上から火を撃つ。

 終焉の炎がその火へ反応し、胸部の組織が厚くなる。

 そこへ原光が集まった分、背面の流れが細くなった。

 ネアは黒い一門を背中の導路へ通す。

 赤い線が途切れ、胸部へ戻ろうとしていた組織の動きが遅れた。


「そっち、効いた?」

「効いています。ただ、次は下から流れます」

「じゃあ、今度は私が下へ回る!」

「その間、私はここを抑えます」


 セトの八翼では、二本の精霊剣を持つ一人の身体が位置取りの中心だった。

 今は、離れた二人がそれぞれの射点を持っている。

 一人が正面を狙っている間に、もう一人は背後へ回れる。

 ただし互いを見失えば、どちらの攻撃がいつ届くかも分からなくなる。

 シアは撃つ前にネアの位置を確かめた。

 ネアも射線を変えるたび、シアの進む方向を見た。

 攻撃は二人分に分かれている。

 それでも、相手を信じて待つ一瞬が、次の一撃を強くしていた。


◆ 残す射点


 終焉の炎の右腕が持ち上がった。

 集まった原光が拳へ流れ、巨体の周囲に赤い光の筋が走る。

 シアは、七つの分霊核をすべて砲撃へ向けかけて手を止めた。

 ここで八門を撃てば、腕は削れるだろう。

 だが、その間に自分の移動を支える射点がなくなる。


「大きいのが来る!」

「全部を撃つ必要はありません。残してください」

「分かってる。三門でいく!」


 シア自身と二つの分霊核が胸部を狙う。

 残る五つは背後と左右に分かれた。

 三門から火が走り、巨体の上側を削った。

 直後、残していた分霊核が順番に原光を放出する。

 シアの進路が折れ曲がり、巨腕が通り過ぎる場所から身体が外れた。

 攻撃に使わない分霊核は、余っていたわけではない。

 次の移動を作るために必要だった。

 反対側ではネアが四門の黒い射点を開いていた。

 自分自身と三つの分霊核で腕の付け根を崩す。

 残る四つのうち二つは飛び散る原光を吸収し、ほかの二つは自分の周囲へ防御を広げた。

 シアが避けた巨腕がネアの側へ迫っても、黒い四翼の向きを変える余裕がある。


「全部撃たない方が動きやすいね」

「以降は、この配分を基本にしましょう」

「最初は大きく削りたかったんだよ」

「その判断が間違っていたとは言っていません」


 二人は距離を取り直した。

 八門を重ねる攻撃は、ここぞという時に使える。

 だが、巨体が何度でも手を伸ばす以上、すべての射点を攻撃へ回して戦い続けるわけにはいかない。

 火力を減らすのではない。

 攻撃に使う門数を、状況に応じて変えるのだ。

 その判断が、二人だけの長い戦いを支えていく。



※第64話「宇宙の膠着」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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