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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第63話 八翼再戦

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(四)双天・星華

◆ 双天・星華


 八翼が終焉の炎の正面へ出た。

 赤と黒、十四個の分霊核がセトの周囲へ広がり、二本の精霊剣とともに巨体の異なる場所を狙う。

 終焉の炎の四翼が強く発光した。

 周囲から吸い上げた原光が、失った胸と肩へ流れ込もうとしている。

 セトはその流れを見て、剣を持つ両手の高さをそろえた。


「一度、大きく削る。次はすぐには撃てない」

『分かってる。これで小さくする』

『発射後の隙は、私が見ます』


 赤い射点が胸と四肢へ向く。

 黒い射点はその間に入って、切り離した後の組織を維持する原光へ狙いをつけた。

 十六門を一か所へ集めたわけではない。

 別々の場所へ、同じ瞬間に力を通す。

 セトは右手の極炎から伝わる熱と、左手の絶光へ集まる欠落の気配を感じた。

 どちらも一人ではない。

 自分を中心に、それぞれの意思が同じ時機を待っている。


「双天!」


 巨体が腕を持ち上げる。

 振り下ろされるより速く、セトは二本の剣を振り抜いた。


「星華!」


 赤い火と黒い月の線が、十六の射点から同時に走る。

 赤い線は腕と肩を突き抜け、胸部と腹部を大きくえぐった。

 黒い線は破壊された部分へ重なり、残った原光を奪って再接続を遅らせる。

 巨大な腕が崩れ、肩から赤い肉体が落ちる。

 胸と腹を結んでいた組織が裂け、脚を支える部分も砕けた。

 頭部を通った赤と黒の線が、背後の空へ抜ける。

 巨体が山の斜面へ沈み込んだ。


 赤い四翼だけは、なお広がっている。

 残った肉体の中を新しい原光が巡り、失った部分へ向かい始めた。

 セトは二本の剣を戻し、足場になるほど大きく残った部位を探した。

 星華は通った。

 だが、終焉の炎は消えなかった。


◆ 戻る前に


「まだ再生する!」

『分かってる!』


 シアの声に、セトは八翼を急降下させた。

 双天・星華の直後、十六門を同じ規模で撃ち直す余裕はない。

 それでも、今なら切り離しやすい場所がある。

 肩から垂れ下がった肉体の縁へ、極炎を振るった。

 絶光は切断面に重なり、組織を支える原光を減らす。

 赤い七核と黒い七核は、その場で必要なものだけが小さく動いた。

 大きな一撃のあとに残った隙間を、近接攻撃で広げていく。


『右の肩、まだつながってる』

「見えてる。次はそこだ」


 セトが身体を横へ向ける。

 崩れた肩の下から、新しい腕が生まれようとしていた。

 極炎が伸びかけた部分を断ち、絶光が根元の流れを崩す。

 腕は形を取り戻す前に、山肌へ落ちた。

 落下した肉体が岩を巻き込み、斜面の途中で止まる。

 再生はなお本体の内部で続いているが、元の巨体へ戻るには時間が必要だった。


『どこまで削ればいい?』

「二人で動かせるところまで」

『もういけると思う』


 シアが即答する。


『まだ重いです。ただ、さっきよりはずっと小さくなりました』

「なら、あと少しだ。立つために残してる部分を落とそう」


 セトは足元を見た。

 もともと山に埋まるように立っていた巨体は、今や大きく姿を崩している。

 だが、残った脚と腕で斜面に触れれば、まだ踏ん張れる。

 全身を同じように削るより、次はそこを狙った方がいい。


◆ 切り離す場所


 終焉の炎の脚は半ば崩れ、片側だけが山肌へ深く食い込んでいた。

 胴体を失っても、その脚が残っている限り、巨体は地面へ戻ろうとする。

 セトは極炎を下へ向けた。


「あの脚だ。地面にかかってる部分から切る」

『了解!』

『切れ目へ流れが集まっています。先にそこを抑えます』


 ネアが絶光の刃先を脚の付け根へ向ける。

 黒い線が原光を奪い、赤い肉体の動きが鈍くなる。

 セトはそのわずかな間へ踏み込み、極炎で厚い脚を斜めに断った。

 支えを失った胴が傾く。

 終焉の炎は残る腕を伸ばし、山の斜面をつかもうとした。


「次、腕!」

『先に私が切る!』


 シアの火が腕の中央を走る。

 完全に切れるより早く、ネアがその付け根へ欠落を通した。

 組織が支えを失って崩れ、巨体の重さが山肌の別の場所へ移る。

 セトはその動きを見て、八翼を少し後方へ引いた。

 残った肉体がまた地面へ伸びようとするが、足場になるほどの大きさは残っていない。


『今なら押せます』


 ネアが言った。


『ほら、言っただろ』

「まだ早かった。でも、今ならいける」


 セトが答えると、シアは短く笑った。

 終焉の炎は巨体の形を失っていた。

 それでも内部には赤い流れが走り、欠けた手足を取り戻そうとしている。

 切り離した部位が戻る前に、二人で持ち上げなければならない。

 セトはもう一度赤と黒の流れをそろえた。

 その時、合わせるまでにかかる時間が、先ほどより長くなっていることに気づいた。



※第63話「救出」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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