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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第61話 二翼のフィオラ

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(四)言葉では開かない

◆ 言葉では開かない


 フィオラは目を閉じた。

 黒い四翼を見た後では、先ほどまで何もないように感じていた場所が、はっきりと分かった。


 風の精霊王として受け継いだ知識。風の流し方。原光へ方向を与える方法。異なる流れを束ねる方法。世界の中で果たす役割。


 その奥に、一か所だけ触れられない場所がある。

 知識がないのではない。

 そこにあると分かっている。

 だが、触れようとすると、意識が横へ滑る。


「見つけました」

「すぐに開こうとしないでください」


 ネアが言った。


「まず、境界の状態を確認します」

「はい」


 フィオラは、閉じた場所の周囲へ意識を向けた。

 押す。反応はない。引く。動かない。


 風の流れを作るように、周囲から回り込む。

 境界へ近づく前に、流れそのものがほどけた。


「力では動きません」

「私たちの時も同じでした」

「四翼の流れを真似たらどうでしょう」

「試すだけなら」


 フィオラはネアの四翼を観察した。

 周囲から取り込む。身体の外へ流す。背後で四つへ分け、再び身体へ戻す。


 フィオラは、自分の原光を背後へ流した。

 淡緑色の線が二つへ分かれる。

 さらに二つへ分けようとする。

 流れは形を保てず、空気中へほどけた。


「もう一度」


 今度は量を減らす。

 四方向へ広げようとせず、ネアの四翼が作る循環の一部だけをなぞる。

 淡緑色の薄い膜が、一瞬だけ現れた。

 だが、すぐに消える。

 閉じた知識にも変化はなかった。


「形を真似るだけでは駄目ですね」

「知識が開いた結果として四翼が現れます。外側の形から開くものではないのでしょう」


 フィオラは原光を身体へ戻した。


「では、欲望です」

「フィオラ」

「危険なことはしません。思うだけです」


 閉じた知識へ触れながら、フィオラは考えた。

 消えたくない。

 何も起きなかった。


 もう一度、強く思う。

 消えたくない。

 境界は動かない。


「開きません」

「今のあなたは、消えようとしていません」

「分かっています」

「言葉だけでは意味がありません」

「では、シアさんを助けたい」


 フィオラは、終焉の炎の中にいるシアを思い浮かべた。

 縛られ、力を奪われ、巨大な兵器の核として使われている。


 助けたい。

 自分の力が必要なら、助けに行きたい。

 閉じた場所へ意識を押し当てる。

 何も変わらない。


「これも違います」

「目的だけでは、鍵にならなかったのでしょう」

「力が欲しい」


 フィオラは試した。

 今より強い力が欲しい。道を維持できる力が欲しい。四翼が欲しい。

 境界は閉じたままだった。


「違いますね」


 フィオラが目を開いた。


「無理に続ける必要はない」


 セトが言った。


「同じことを繰り返しても開かないと思います」

「だったら、一度やめる」

「いいえ」


 フィオラは首を横へ振った。


「試し方を間違えています」



※第61話「二翼のフィオラ」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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