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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第61話 二翼のフィオラ

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(一)風の精霊殿

◆ 風の精霊殿


 黒い四翼が、風の精霊殿の前へ降りた。

 セトの足が地面へ着く。

 その直後、四枚の翼が縮まり、黒い精霊剣が人の姿へ戻った。

 ネアの長い黒髪と羽衣が、遅れて地面へ降りる。


 セトは、終焉の炎がいる方角を振り返った。

 山々に遮られ、ここから赤い巨体は見えない。

 それでも、空気中に漂う原光が、遠くの一点へ引かれているのは分かった。

 終焉の炎は、今も周囲から原光を取り込み続けている。


「セトさん。ネアさん」


 精霊殿の中から、フィオラが出てきた。

 白と淡い緑を基調とした衣装の裾が、風もないのにわずかに揺れている。

 二人を見た直後、銀緑色の瞳が周囲へ向いた。


「シアさんは?」

「捕まってる」


 セトが答えた。

 フィオラの視線が止まる。


「捕まっている?」

「終焉の炎という生体兵器の中だ」

「生体兵器……」

「シアを核にして動いてる」


 フィオラは口を挟まず、続く説明を待った。

 セトは、終焉の炎へたどり着いてから見たものを話した。


 山を崩して現れた赤い巨体。四枚の赤い翼。光の精霊王の残骸から作られた肉体。絶光で切断しても、すぐに塞がる傷。そして、その巨体の内側にシアがいること。


「一度、中へ入った」

「シアさんのいる場所まで届いたのですか?」

「届かなかった」


 セトはしゃがみ、地面へ指で一本の線を引いた。


「俺が前を切った。ネアが再生を抑えた。でも、進んだ後ろから閉じた」


 線の先を指でなぞり、その後ろを手のひらで消す。


「前へ進むだけなら、もう少し行けた」

「ですが、戻れなくなる」


 フィオラが言った。


「ああ」

「シアさんへ到達できたとしても、外へ連れ出せません」

「そうだ」


 ネアも地面へしゃがむ。


「切断した肉体だけではありません。原光の流れも、切った場所へ集まっていました」


 線の両側から、中央へ向かう複数の線を描く。


「絶光で一つの流れを断っても、別の経路が作られます。私がすべてを抑えようとすれば、セトが進むための攻撃へ力を回せません」

「原光を、切断した場所から遠ざける必要があるのですね」

「はい」

「切り離した肉体も、外へ流す」

「はい」

「ネアさんが再生を抑え、セトさんが進む。その間、私が道を閉じさせない」


 フィオラは、地面へ描かれた線を見つめた。


「そのために、私のところへ来たのですね」

「頼みたい」


 セトが言った。

 フィオラは、すぐには答えなかった。


「今の私で、足りますか?」


 セトとネアの間に、短い沈黙が生まれた。



※第61話「二翼のフィオラ」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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