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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第60話 神の目の内側

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(六)神の目

◆ 神の目


「終焉の理の内部へ置いたものは何ですか」


 ネアが尋ねた。

 研究者は、すぐには答えなかった。


「名称だけは残っています」

「名称は?」

「神の目です」


 セトが眉を寄せた。


「神の目?」

「そう記されていました」

「どういうものだ」

「具体的な作用は、私たちには知らされていません」


 研究者は、答えられる範囲を慎重に選んでいた。


「終焉の理を成立させるために必要なものだとされています。どこかの遺跡から発掘されたものらしいのですが、どの遺跡なのか、誰が発掘したのかまでは残っていません」

「何のために作られたものかも?」

「本来の用途も効果も不明です。責任者側が試験していたはずですが、私たちには結果が共有されていません」

「実物を調べなかったのか?」

「収容部への配置も試験も、研究責任者たちが行いました。私は見たことがありません」


 研究者は、終焉の理を示す四角い枠から指を離した。

 名前と組み込む位置は知っていても、発掘部品の姿も、試験中に何が起きたかも知らされていない。


「主要な記録はどこにある?」

「先ほど逃げた責任者たちが、設計図の写しと一緒に持ち出しました」


「どこへ逃げた」

「東です。受け入れる者がいると話していました」


 セトは一度、東の空を見た。


「今は追えない」

「はい」

「神の目が、具体的に何をしたかは分からない」


 ネアが確認する。


「そうです。設計図で必要部品と指定されていた。それ以上は説明できません」


 名称以外の情報は、ほとんどなかった。

 目と呼ばれている。

 だが、何を見るのかも分からない。

 そもそも見るためのものなのかさえ分からなかった。


◆ 持ち出された記録


「残された記録はあるのか?」


 セトが尋ねると、研究者は抱えていた紙束を開いた。

 縁が破れた記録用紙に、起動直前からの測定値が並んでいる。

 流入量の変化。最大放出を検出した時刻。その後に上昇した出力。


「現場で取ったものは、これだけです。設計図の写しや主要な試験記録は責任者たちが持ち出しました」

「この数字から止め方は分からない?」

「止めようとして外部導入を遮断しましたが、本体は動き続けました。その結果なら記録しています」


 研究者の声に、先ほどの歓声はもうなかった。

 起動成功の記録は残っている。

 だが、記録が示すのは動いた事実ばかりで、止める手順ではない。


「供給を止めた後、本体の出力は?」

「下がっていません。測定器の上限を越えていて、正確な値も読めない状態です」

「別に止める操作は?」

「私たちが設計図から確認できたのは、外部導入を遮断する操作までです」

「なら、止め方を調べるのも、いつ終わるか分からないな」

「今は、シアまで届く方法を探すべきです」


 ネアが言うと、セトは紙束から視線を上げた。

 赤い巨体は遠くで動きを止めているが、四翼を通る原光は弱まっていない。


「ここで待つわけにはいかない」


 セトは収容部の位置だけをもう一度確かめた。

 研究者たちには、残された記録を捨てず、国の調査へ渡す役目がある。

 それとシアの救出は、同じ場所で続けなければならない仕事ではなかった。


◆ 四翼の中の八翼


 ネアは終焉の炎へ向き直った。

 赤い四翼から、膨大な原光が巨体の各部へ流れ込んでいる。

 翼の枚数は四枚。

 だが、腕を動かすだけで山肌が崩れた時、その腕を通った原光は通常の四翼が一度に扱う量を超えていた。


「大きいから強いだけじゃないんだな」

「ええ。質量だけでは説明できません」

「どのくらいの力がある?」

「一度の攻撃に限れば、シアと私の八翼に近い可能性があります。ただし、正確な比較はできません」


 ネアの答えに、研究者が顔を上げた。


「四翼なのに?」

「四翼が二組あるわけではありません。八翼ほど細かく制御できるかも不明です。単発の出力が近いという推測です」


 巨体には再生能力もある。

 さらに周囲から原光を取り込み続け、動きを止める気配がない。

 セトたちの八翼は強力だが、人間であるセトへの負荷が大きく、長くは保てなかった。

 終焉の炎にも同じ制限があるかは分からない。


「力勝負を始めても、こっちが先に限界になるかもしれない」

「はい。それに、どれほど強く切っても、内部のシアを巻き込む危険があります」

「八翼が使えない今は、なおさらか」


 先ほどの突入でぶつかった問題は消えていない。

 セトは握った手を開き、地面の図へ目を戻した。

 必要なのは、より強い一撃ではなく、内部へ入ってからの仕事を変えることだった。



※第60話「終焉の炎」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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