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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第60話 神の目の内側

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(五)終焉の理

◆ 縛炎鎖と収容部


「シアは、あの巨体のどこへ固定された?」


 セトの問いに、研究者は地面の図へ小さな印を付けた。


「設計上は、胸部中央より少し上に収容部があります」

「そこへ行けば会えるのか?」

「起動前の位置です。肉体があれほど変形した今、同じ場所に残っている保証はありません」


 セトは赤い巨体を見上げる。

 先ほど胸部から入った時、シアとのつながりは奥へ続いていた。

 研究者の示した位置は、その感覚と大きく外れていない。

 だが、つながりだけで鎖の位置まで確かめられたわけではなかった。


「谷にもあった、火を奪う鎖は?」

「縛炎鎖です。収容部では複数の鎖で手足と胴を固定する設計でした」

「普通に鎖を切るだけでは駄目なのか?」

「拘束のための導路もあります。イフリートが火で抵抗すれば、その火を別の経路へ流し、拘束を強めます」


 ネアが、セトの手元に残る黒い光を見た。


「絶光なら、その作用は弱められます。しかし、力を奪う作用を止めても鎖そのものは残ります」

「一本ずつ切る時間が必要なのか」

「今の再生速度では、時間をかけるほど周囲から塞がれます」


 研究者は図の外周へ、いくつもの線を付け足した。

 鎖の配置を知っていても、起動後の内部でどの部分が露出しているかは分からない。

 セトは収容位置を覚えた。

 確かな手掛かりは増えたが、そこへ到達してから何を断てばよいのかは、まだ現場で見極めるしかなかった。


◆ 光の精霊王の残骸


「肉体は何で作った」


 セトが尋ねた。

 研究者は答えるまでに少し間を置いた。


「光の精霊王だったものの破片です」


 セトは、以前の戦いで巨体から落ちていった白い破片を思い出した。

 あの時、戦いが終われば残骸はただ残るものだと思っていた。

 人間の手で別の肉体へ組み直されるとは考えていなかった。


 ネアの視線が鋭くなる。


「前の戦いで地上へ落ちたものですね」

「はい。回収した破片を、設計図に従って組み直しました」

「なぜ光の精霊王が必要だったのですか?」

「分かりません」


「それもですか」

「設計図では、光の精霊王に由来する肉体構造が指定されていました。私たちは、巨大な出力に耐えられる素材だからだと考えていました」


「再生することは知っていた?」

「小規模な試験では、破損した組織が原光を与えることで元の形へ戻りました」

「どこまで再生できるかは?」

「この規模で試したことはありません」


 ネアは、先ほど絶光で切り開いた胸を見た。


 傷は完全に消えている。

 ただし、元の光の精霊王の人格や意思が戻ったわけではない。

 あの再生の仕組みだけが、別の兵器で使われている。


「あの再生の元になっているのは、光の精霊王だった肉体です」


 セトが確かめる。


「終焉の炎が、新しく再生能力を作ったわけじゃない?」

「少なくとも、再生する構造自体は破片に残っていました」


 研究者が答えた。


「ただし、起動前はあれほど速くありませんでした」

「起動後に、再生も強くなった」

「そう見えます。しかし、原因は分かりません」


◆ 終焉の理


「さっきから、設計図どおりと言っている」


 セトは地面の図を見た。


「まだ話していない部品があるな」


 研究者は中央の核と全身の導路をつなぐ部分へ、四角い枠を描いた。


「終焉の理と記された機構があります」

「何をする?」

「内部の作動原理は読み解けていません。設計図には接続位置と周囲の導路しか、ほとんど記されていなかったのです」

「それで作れたのか?」

「私たちが組んだのは、外側の収容部と接続構造です。中には設計図で指定された発掘部品を置きました」


 現代の研究者が内部の働きまで再現したわけではない。

 分からない部品を、指定された位置へつないだということだった。


「研究者たちは、何のための機構だと考えた?」

「イフリートから得た力を全身へ運び、肉体を動かす動力源だと」

「ですが、原光はすでにシアの四翼を通って流れています」


 ネアが赤い巨体を見上げた。


「再生の構造も光の精霊王の破片に残っている。終焉の理を単なる動力源と考えると、役割が重なります」

「ほかの働きがあるのか?」

「可能性はあります。起動前と比べて変わったものを、分けてください」

「原光の取り込み量と流量、肉体の強度、再生速度です。攻撃出力も上がっています」


 起動後に複数の能力が強くなったことは、確かに観測されている。

 しかし、すべてを終焉の理が直接変えたとは限らない。


「もともとある機能を引き上げている可能性はあります。ただし、ほかの機構が同時に働き始めた可能性もあります」


 ネアの説明に、研究者はうなずいた。

 古代の設計者が何を意図していたかまでは、その図からは読めなかった。



※第60話「終焉の炎」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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