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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第9話 二刀と精霊剣

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(六)精霊剣なら

◆ 二本目を見るな


 祖父が再び踏み込んだ。


 木剣が右から来る。


 セトは白刃で受ける。


 今度は黒刃を動かさない。


 木剣を外へ流し、白刃で斬り返す。


 祖父は下がらず、空いている手で木片を投げた。


 木片には、わずかな精霊力がまとわせてある。


 左から飛んでくる。


 セトは黒刃を向けた。


 触れた瞬間、木片を包んでいた精霊術が崩れる。


 力を失った木片が地面へ落ちた。


「今のだ」


 祖父が言う。


「見てから動かした」


「最初はそれでいい」


 再び木剣。


 次は木片。


 正面へ白刃。


 横へ黒刃。


 それぞれに意識を向けようとすると、動きが遅れる。


「二本目を見るな」


「見なければ当たらない」


「一本目と同じように見ようとするから遅い」


 左手は、目で追う前に動かす。


 右手で剣を振りながら、左手は相手の術が通る場所へ置く。


「右手と左手を別々に動かすだけだ」


「簡単に言うな」


「子供の頃からやっている」


◆ 剣術の必要


 何度目かの打ち合いで、祖父の木剣がセトの肩へ当たった。


「痛い」


「精霊術ばかり見ているからだ」


「今は精霊術の訓練だろ」


「二刀になれば、足の位置まで二つになると思ったか」


 剣が一本でも二本でも、体は一つしかない。


 右で斬る時に、左肩がどこへ動くか。


 黒刃を差し込む時に、白刃の間合いを失わないか。


 二本を扱うには、精霊術の制御だけでなく、体の動かし方を作り直す必要がある。


「剣状精霊術を覚える者がいない理由が分かったか」


 シアが言う。


「今さらだな」


「術を二つ出せても、剣術がなければ使えない」


「ああ」


 グラウスは、二本を出せるだけではなかった。


 魔剣と白刃。


 魔剣と黒刃。


 役割の異なる二本を、剣技の中へ組み込んでいた。


 経験の差は大きい。


「数日で追いつける相手ではない」


 祖父が言う。


「それでも、何もしないよりはましだ」


◆ 休むシア


 稽古が終わる頃には、日が傾いていた。


 セトは白刃と黒刃を消した。


 両腕が重い。


 特に左手の感覚が鈍くなっている。


「初日としては悪くない」


 祖父が言う。


「何日やるつもりだ」


「使えるまでだ」


「シアの力が戻る方が先かもしれないな」


 軒下を見る。


 シアは壁へ寄りかかったまま、目を閉じていた。


「寝たのか」


「起きている」


「なら返事をしろ」


「疲れた」


「見ていただけだろ」


「火を集めている」


 シアの周囲には、目に見えないほど小さな火の精霊が集まり始めていた。


 失われた力を、少しずつ補っている。


「どれくらい戻った」


 シアが指を上げる。


 小さな赤い光が生まれた。


 一瞬だけ火になり、すぐに消える。


「昨日よりはましだ」


「戦えるか」


「無理だ」


 シアは素直に答えた。


◆ 精霊剣なら


 その夜。


 セトとシアは再び同じ部屋にいた。


 祖父から借りた記録が、二人の間に置かれている。


「精霊剣なら、グラウスの魔剣に勝てるのか」


 セトが尋ねた。


「出力だけなら、対等以上に戦える」


「古い魔剣に、先代とお前の火が入っていても?」


「簡単ではない」


 だが、生きた精霊剣には、魔剣にないものがある。


 精霊王本人が力を制御する。


 使い手の動きに合わせ、必要な場所へ必要な量だけ力を流せる。


 魔剣のように、持ち主が外から無理に力を引き出す必要がない。


「剣が生きているから強い?」


「力の量だけではない」


 白炎では、シアがセトへ火を渡し、セトが白刃の形を保つ。


 精霊剣では、シア自身が剣の形と火を制御できる。


 セトは剣術と体の動きへ集中できる。


「二人の役割が、もっとはっきり分かれる」


「ああ」


「グラウスが待っているのは、それか」


「たぶん」



※第9話「二刀と精霊剣」は全八回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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