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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第59話 終焉の炎

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(一)外から来る力

◆ 外から来る力


 原光が入ってきた。

 シア自身が集めたものではない。

 巨大な器の外側から取り込まれた原光が、内部の導路を通り、身体を固定する縛炎鎖へ押し込まれている。

 それまで鎖は、シアの火を奪って外へ流すばかりだった。

 今は反対向きの力まで流れ込み、腕と脚から身体の内側へ入り込んでくる。


「……何をする気だ」


 暗い空洞から返事はない。

 覆いの向こうで、人間たちが互いに指示を出していた。


「外部導入を開始」

「第一経路、正常」

「流入量、予定範囲内」

「イフリートへの流入を確認」


 シアは右腕の鎖を引いた。

 固定具が軋んだが、身体は動かない。

 あの谷で壊したように一本ずつ焼けば切れる。しかし、両腕と両脚を別々に固定された今は、火を集めるより先に導路へ力を奪われる。

 七つの赤い分霊核も、枠の内側に固定されたまま明滅していた。

 核とのつながりは残っている。


「やめろ! こんなもの、頼んでない!」


 シアは核の一つへ力を移そうとした。

 その途中へ縛炎鎖の流れが割り込み、渡すはずの力の大半を持ち去る。

 だが、外から送り込まれる原光の量は変わらない。

 今度の仕掛けは火を奪うだけではない。

 シアの内側へ、本人が望まない力をため込ませようとしていた。

 導路から伝わる力の向きだけで、それははっきり分かった。


◆ 火にできない


 シアは身体へ入ってくる原光を、すぐには火へ変えなかった。

 火にすれば縛炎鎖へ吸われ、巨大な器のどこかへ運ばれてしまう。

 この仕組みは、谷で捕まったときから分かっている。

 相手の言うとおりに力を渡すつもりはなかった。


「イフリートの出力、上昇せず」

「導入量は予定どおりだな?」

「はい。第一経路は正常です」

「なら継続しろ」


 人間たちは、シアが意図的に火への変換を抑えていることに気づいていないらしい。

 測定器に現れた数字だけを見て、次の手順を選んでいた。

 シアはその間に、原光を身体の外へ逃がせる場所を探した。

 七核へ蓄えることも、四翼から少しずつ散らすことも考える。

 しかし核へ向かう流れは鎖に奪われ、翼を通れば周囲の導路がそれを待ち受けている。


「こんなもの……!」


 流入した原光は、何もせずに消えるわけではない。

 行き場を失った力が身体の中を巡り、火に変わりかけた場所から熱を生む。

 シアはその部分の流れを整え、変換を止めた。

 一か所を抑えると別の場所に圧力が移る。

 それでも、ただ放出するよりは時間を稼げる。


「第二経路を開放」

「まだ上げるのか!」


 人間から返事はなかった。

 縛炎鎖の内側が赤く光り、原光がさらに流れ込む。

 シアの抵抗は、出力不足として扱われていた。

 火に変えずに耐える選択が、外部からの導入を増やす判断へつながっていた。


◆ 押し広げられる四翼


 シアの背後で、赤い四翼が広がり始めた。

 自分の意思で開いたわけではない。

 身体に収まりきらなくなった原光が、翼という放出経路へ押し寄せている。

 半透明の翼は、空洞の壁に重なっても折れなかった。

 物質ではない赤い膜の内側を、行き場のない力が流れていく。


「四翼の展開を確認」

「設計値と一致」

「最大放出まで導入を継続」


 シアは顔を上げた。

 ようやく相手の狙いが分かった。

 鎖を通して火を奪うことだけが目的ではない。

 外から原光を押し込み、シア自身に最大の放出をさせようとしている。


「させるか!」


 翼を閉じる方向へ力を向ける。

 四枚の赤い膜が少し狭まり、流れ出ようとしていた原光が行き場を失った。

 途端に胸の奥へ重い圧力が戻ってきた。

 肩から腕へ力が走り、固定された身体の形が内側から崩れそうになる。

 シアは翼を完全に閉じる前に、その操作をやめた。


 翼を開けば、力は周囲の導路へ奪われる。

 閉じれば、身体の中に原光がたまり続ける。

 どちらを選んでも、鎖につながれた状況が変わるわけではない。

 シアは四翼の形を保ち、流れを細かく調整して放出量を抑えた。

 翼を使って暴れるのではなく、流れを少しでも自分の意思で扱うためだった。


「四翼、展開状態を維持」

「まだ最大値ではありません」

「では、導入を続ける」


 声は淡々としていた。

 シアがどこまで耐えられるかではなく、設計図の条件へいつ届くかだけが問題になっている。

 流入量は増え続けていた。



※第59話「終焉の炎」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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