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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第58話 捕らわれたシア

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(三)八翼の記録

◆ 四翼と八翼


 その後も、聞き取りは続いた。

 残る分霊核を探したこと。シアとネアが四翼を得たこと。そして、二人が互いを消そうとして約一か月も戦い続けたこと。

 ハルヴェンは何度か筆を止めた。

 聞き間違いではないと確かめるたび、書きかけの文章へ言葉を足していく。


「一か月もの間、二人だけで戦っていたのですか?」

「そうだ。途中から、相手を倒すこと以外は考えられなくなっていた」

「戦う理由そのものが、今の私たちの理由ではなくなっていたのです」

「それで、どうやって止まったんです?」

「ネアが、わたしの名前を呼んだ」


 シアは短く答えた。

 ネアも、その声を聞いて今の自分を思い出したことを説明する。

 名前を呼んだから四翼が消えたわけではない。

 大きな力を持つ二人が、個人として判断できる状態へ戻ったのだった。


「では、その後は四翼を保ったまま戦えたと」

「ああ。セトが来て、助けてくれた」

「次は、四翼のイフリートとセレーネが、それぞれ精霊剣となった」

「極炎と絶光だ」

「その二本を、セトが同時に使用した」

「ああ」

「結果として、赤い四翼と黒い四翼を合わせた八翼が成立した」


 ハルヴェンは自分で書いた文章を読み返した。


「これだけでも、十分に意味が分かりませんね」

「わたしたちは分かる」

「当事者ですからね」


 セトの左右には二本の精霊剣。

 シアとネアは四翼を保ち、それぞれ七つの分霊核を扱った。

 火と月は一つに混ざるのではなく、別々の力として同じ相手へ向けられた。


「双天・星華」


 シアが言った。


「技名も記載するのですか?」

「あとで同じものを使った時、何のことか分かる」

「また使う前提なのですね」

「使えるものは使う」

「識別名としては、記載してもよいでしょう」


 ネアまで賛成したため、ハルヴェンはその名を記した。

 十六門の砲撃で巨体を大きく崩し、その隙にセトが内部へ侵入したことも書き加える。


「内部で一時的に四翼に似たものを作った件は?」

「書くのか?」

「俺も説明できるほど理解していません。省きます」


 核となる人型を倒したところまで書き終えると、ハルヴェンはようやく次の紙へ移った。

 そこから先にも、まだ信じがたい出来事が残っていた。


◆ 世界一周


「核を倒した後も、光の精霊王だったものには力と質量が残っていた」


 ハルヴェンが確認しながら書く。


「そのままでは地上へ落下した」

「ああ」

「双天・星華をもう一度使う余力はなかった」

「無理だった」

「そこで、八翼で星を一周した」


 また筆が止まった。


「約十分で?」

「八翼でも、十分くらいかかりました」

「一周する間、加速を続けた」


 セトが答える。

 ハルヴェンは丸く書きかけた文字を見つめ、それから三人の顔を順に確かめた。


「一周する必要があった理由も、書いておきたいのですが」

「その場から押すだけじゃ、重すぎた。離れて加速して戻れば、もっと大きな勢いをぶつけられる」

「ただし、真っすぐ遠ざかって引き返すのではありません。星に沿って進路を曲げ続けたのです」

「加速したのは、わたしだ!」


 シアが赤い翼を一枚だけ小さく見せた。


「赤い四翼から火を放って加速した。ネアは黒い四翼で進路を曲げた」

「分霊核を使って加速したのですか?」

「いいや。飛ぶのは翼だ。分霊核は砲撃や制御のために使う」


 ハルヴェンは、四翼による加速と方向制御を別々に記した。

 さらに、衝突した後を尋ねる。


「戻った後、そのまま光の精霊王だったものへ衝突した」

「返ってくる衝撃は、私が反射しながら散らしました」

「残った分ごと、わたしが押した」


 ハルヴェンは再び三人を見た。


「文章にすると、書き間違いにしか見えませんね」

「間違っていない」

「分かっています」


 八翼は星を一周し、衝突で残骸の進路を変えた。

 地上へ向かう落下軌道から外れたことを確認して離脱し、最後にシアが八門砲撃を放った。


「最後の八本は、地上からも見えています」

「なら、その部分は信じるだろ」

「そこから世界一周まで信じてもらえるかは別です」


 シアは、自分たちが本当に飛んだのだからそれでいいと答えた。

 ハルヴェンは筆を動かしたまま、しばらく何も言わなかった。



※第57話「捕らわれたシア」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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