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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第57話 世界一周の一撃

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(四)衝突点

◆ 戻る光


 星の明るい側が、前方へ現れた。

 見慣れた青と白の輪郭が、今は信じられない速さで迫ってくる。

 一周の終わりが近づいていた。

 セトは星の縁から、白い巨体が現れるはずの方向を探した。


『そろそろ捉えられるはずです』

「見えたら教えてくれ」

『はい。進路はまだ維持できます』


 ネアは黒い四翼を小さく動かした。

 ここまで星に沿って曲がり続けた力を、今度は衝突地点へ向かうために使う。

 急に角度を変えれば、八翼の中心にいるセトへ負荷が集中する。

 ほんのわずかな修正を繰り返すしかなかった。


 やがて、星の縁に白い光が現れた。

 光の精霊王だったものだ。

 出発したときよりも輪郭が崩れ、巨大な四翼の形も半分ほど失われている。

 いくつもの白い塊が、互いにぶつかりながら一緒に落ちていた。


『見つけました。ですが、予想より落下が進んでいます』

「今いる場所を追うな。これから通る場所へ出る」

『分かりました。星の近い側へ寄せます』


 セトは残骸から伸びる原光の流れを見た。

 中心が動いたあとを、白い塊が少し遅れて追っている。

 崩れた破片まで含めて、どこへ向かっているかを確かめる。

 今の位置へ飛び込めば、衝突の瞬間には巨体が通り過ぎているかもしれない。


 シアの赤い四翼は、加速を保ったままだった。

 ネアが黒い四翼を傾ける。

 セトの身体が少しだけ星の方へ引かれ、白い光の進路へ近づいていく。


『速度が高すぎます。大きく曲がり直す余裕はありません』

「分かってる。今の線で合わせる」

『火を止めるか?』

「まだだ。衝突するまで勢いは残したい」


 遠くにあった白い光が、急速に大きくなった。

 裂けた四翼の輪郭が見え、内部で白い流れが衝突しているのも分かる。

 その次の瞬間には、視界の大半が白く染まり始めていた。


『この速度では、形が見えたと思った瞬間にはぶつかっています! セトがタイミングを!』

「分かった!」


 セトは、八翼と残骸の流れが交わる位置から目を離さなかった。

 ここでの判断だけは、二人へ任せるわけにはいかなかった。


◆ 衝突点


 白い巨体の表面が、急速に迫ってくる。

 膨らんだ部分もあれば、大きく裂けた部分もある。

 ただ薄いところへ突っ込めば、そこを突き抜けるだけで終わるかもしれない。

 逆に力の集まった場所へ正面からぶつかれば、返ってくる衝撃も大きくなる。


 セトは残骸の中心へ向かう流れを追った。

 人型の原型は、もうそこにない。

 それでも、周囲の塊をまとめて落下させている大きな流れがある。

 その進路を変えるには、表面の一部を壊すのではなく、残った巨体全体へ力を伝えなければならなかった。


「そろそろだ!」

『近づいたら強く押す!』

『まずは衝撃を散らします。シアは押す準備を』

『分かってる!』


 ネアの七つの黒い分霊核が、セトの前方へ半円状に並んだ。

 核から細い黒い線が伸び、衝突する場所の周囲に流れる原光を捉える。

 黒い四翼も前へ傾き、戻ってくる力を左右へ逃がす形を作った。

 分霊核は加速に使っていない。

 これから触れる残骸の流れを分け、反射と分散を補助するために配置していた。


 シアは赤い四翼の向きを確かめた。

 今は最後の加速を保つ。

 ぶつかった直後、残骸へ火を押し込めるよう、四翼の流れを切り替える準備をしていた。

 赤い分霊核はシアの循環につながったままで、砲撃の構えは取っていない。


 セトは絶光を前へ、極炎を後ろへ構える。

 二本の剣を通じて、シアとネアが何をしようとしているかが伝わった。

 水の精霊回路にも負荷が残っている。

 ぶつかる前に、必要以上の力を通すわけにはいかなかった。


 白い巨体は、もう視界いっぱいに広がっていた。

 形が見える頃には、判断が遅い。

 セトは、互いの流れが重なる場所だけを見た。

 まだ衝突していない。

 だが、次の瞬間にはもう間に合わない。


「今だ!」


 黒い四翼が広がる。

 赤い四翼が力を放つ。

 八翼は、白い巨体へ向かって飛び込んだ。



※第57話「世界一周の一撃」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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