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エレメンタルクロス ~精霊の剣~  作者: KEI
第56話 双天・星華

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(六)六つの分霊核

◆ 巨体の内側


 足元を通る太い原光の流れが、額の内側へ続いている。

 セトはそれを追った。


「流れは何度も確認した」


 白刃を振り下ろす。

 額の表面が裂け、奥へ向かう細い道ができた。

 黒刃を差し込み、戻ろうとする原光を外へ散らす。


「お前は、この先にいる」


 光の精霊王が気づくより先に、セトは裂け目へ身体を滑り込ませた。

 八翼の循環はない。

 真空の中で、一人で動ける時間も限られている。

 背後で白い組織がつながり、入ってきた道はすぐ閉じた。

 頭部の内側には、巨大な白い組織が何重にも重なっていた。

 距離を測るより、原光が集まる方向を見失わないことが大切だった。

 セトは送り出す流れと戻る流れの交差する先へ進んだ。


 その組織の間を流れる原光は複雑に枝分かれし、前後も上下も分かりにくい。

 細い線が腕へ巻きつこうとした。

 セトは黒刃を傾け、線の流れを横へ逃がす。

 続いて前方の層を白刃で開いた。

 同じ切断を繰り返すつもりはない。

 流れの戻る方向を変えたことで、道の先にある中心が少しずつ近づく。


 外側から、シアの火が巨体へぶつかる衝撃が伝わった。

 別の方向でネアが原光を奪い、セトの周囲へ押し寄せていた力がわずかに弱まる。

 二人は離れた位置で戦いながら、敵の注意を引きつけてくれている。

 セトは最後の白い層へ近づいた。

 そこでは外へ向かう太い流れと、内側へ戻る流れが交差していた。

 白刃を突き立てると、層の向こうに小さな人影が見えた。

 額の広さと比べれば小さな領域だったが、外側から読み取った流れはすべてそこへ集まっている。

 セトが追っていたのは、最初からこの一点だった。


◆ 人型の原型


 太い流れの中心には、人の形があった。

 肥大化した巨体と比べれば、あまりに小さい。

 手足と顔を持ち、白い組織へ縫い止められるように固定されている。

 その身体から伸びる無数の筋が、外側の巨大な肉体へつながっていた。

 ここから光の精霊王の全身へ、原光が送り出されている。


「見つけた……」


 人型の目は閉じ、口も動かない。

 それでも全身から広がる原光は、ゆっくり脈打っていた。

 セトは白刃と黒刃を構え、一歩踏み込む。

 その瞬間、人型の目が開いた。

 足元から細い白光が伸び、避ける前に両脚へ絡みつく。

 腰と胸にも次々と巻きつき、身体を固定した。


「しまった!」


 セトは白刃を振ろうとした。

 しかし、右腕が動かない。

 黒刃を当てた部分は消せても、別の場所から次の帯が伸びてくる。

 拘束を解くより早く首元へ白い線が迫った。

 人型の背後に光が集まり、細い刃となってセトへ向く。

 その光の流れを黒刃でずらしたくても、腕ごと止められていた。


 胸を締める力が強まった。

 水の精霊回路が圧迫され、外から受け取れる原光の流れも細くなる。

 このままでは、剣を握る力まで奪われる。

 セトは拘束を受ける場所を確かめた。

 一本なら断てる。

 しかし一つの動作に使える時間がない。

 外で戦う二人へ異常が伝わるよう、残るつながりに意識を集中させた。

 八翼だった時ほど明瞭ではない。

 それでも、互いの力を預け合った二人との感覚が完全に途切れたわけではなかった。

 自分一人では動けない状況を、その細いつながりに託した。


◆ 六つの分霊核


 シアとネアへ、セトの異常が伝わった。

 二人は巨体の離れた位置で攻撃を続けながら、内部へ意識を向ける。

 原光のつながりを通じて、セトが拘束されている感覚が届いた。

 シアが叫び、ネアもすぐに状況を察した。


「セト!」

「捕らえられました!」


 二人はすぐに内側へ向かおうとした。

 しかし、光の精霊王の四翼が動き、左右から収束光が進路を塞ぐ。

 ここで二人とも攻撃を止めれば、敵の注意が再びセトへ集まる。

 シアとネアは、その場でそれぞれ三つの分霊核を選んだ。

 シアが叫び、ネアも核へ同じ指示を与えた。


「分霊核、行って!」


 赤い三核と黒い三核が、離れた二人のもとから巨体へ飛び込んだ。

 通常の戦闘なら、核は所有者の近くで精密に動かす。

 だが、今は指定した相手へ送り届けるだけでいい。

 二人は大まかな進路を与え、あとはセトに任せた。

 六核が白い組織の隙間を走り、拘束されたセトの周囲へ集まる。

 セトは到着した核を水の精霊回路で捉え、細かな位置と力の操作を引き受けた。

 所有者は変わらない。

 ただ、この一瞬の制御をセトに預けたのだった。


 外ではシアとネアが、残る四核ずつで攻撃を続ける。

 本人を含めて五つずつの射点。

 八門より少ないが、広く動きながら光の精霊王の反応を引きつけるには十分だった。

 敵の四翼は二人を追い続け、内部のセトへ注意を戻せない。


 セトは、六核から届く力を感じた。

 どちらも何度も受け入れてきた精霊力だ。

 八翼として戦った間、精霊翼へ力が巡る様子も見続けている。

 人間の回路で同じ循環を完全に再現することはできない。

 それでも、核の位置も力の流れも自分で調整できる今なら、一瞬の形は作れるかもしれない。


「一瞬だけだ!」



※第56話「双天・星華」は全七回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/elemental-cross-top/

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